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 地上デジタル放送の番組を視聴するために最低限の機能を備えた「簡易チューナー」の登場が現実味を帯びてきた。2007年12月25日に,総務省とデジタル放送推進協会(Dpa)は地上デジタル放送用簡易チューナーの仕様ガイドラインを公表した。同ガイドラインでは,簡易チューナーに必要な機能として,映像デコード機能をはじめとする九つの機能が挙げられている。

 今回の仕様の検討に当たってポイントとなったのは,コスト削減である。例えば,必須とする映像出力端子はコンポジットビデオ端子の1本のみで,一般的な外付けチューナーよりも少ない。さらに,データ放送受信機能と電子番組表(EPG)対応機能も除外した。逆に,ダウンロードサービス(エンジニアリング・ストリーム・サービス)対応機能を備えるべきとした。一部に反対意見もあったが,簡易チューナーのソフトウエアを修正する手段がないと同チューナーの出荷後に大きなコストが必要になる恐れがあるため,仕様ガイドラインの項目に入れることにしたという。

 Dpaは今回の仕様について,「受信機メーカーの商品企画を拘束しない」としている。簡易チューナーを実際に開発するかどうかは,メーカー各社の判断に委ねるというわけだ。また簡易チューナーがDpaの仕様ガイドラインの項目を満たしていることをアピールするため,専用のシールを張るなどの計画もないという。メーカーは営利団体である以上,採算を度外視して開発に乗り出すわけにはいかない。簡易チューナーの販売台数を予測し,利益を確保できると判断したメーカーだけが開発作業を開始することになる。簡易チューナーは地上デジタル放送しか受信できないため,このチューナーを必要とする世帯は限定される。既に地上デジタル放送だけを受信する外付けチューナーは一部のメーカーが発売しているが,単価が高いデジタルテレビなどに比べて,家電量販店は販売に力を入れていないのが現状だ。

 とはいえ一部の日本の受信機メーカーは,「簡易チューナーの開発に関心を示している」(Dpaの関係者)という。これらのメーカーは日本だけでなく,海外への出荷を検討しているようだ。日本市場だけで採算が合いにくいのであれば,海外市場を含めて事業計画を立て,トータルで利益を確保しようというわけである。ただし海外の地上デジタル放送を受信し,現地で流通しているアナログテレビに出力するためには,状況に応じて日本の簡易チューナーに変更を加える必要がある。例えばブラジルに出荷する場合は,同国は地上デジタル放送の動画圧縮方式に「H.264」を採用しているため,この方式に対応するように変更を加える必要がある。多少の手間をかけてでも,簡易チューナーに変更を加えて,海外にも売り込む──。このような戦略を持つ受信機メーカーがどの程度存在するかによって,簡易チューナーの開発に乗り出すメーカーの数が決まりそうだ。