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●コンシューマ分野育ちの技術を業務アプリに採用
●顧客の要件変更に即応できるアーキテクチャを追求
●受託開発の現場で細かい操作感を磨いた

金子雅●エンタープライズビジネス第3本部エンタープライズ開発第3部長補佐兼システム開発第3課長
金子雅●エンタープライズビジネス第3本部エンタープライズ開発第3部長補佐兼システム開発第3課長

 「試作品を見せた顧客からは、いつも意外なほど好感触。SIビジネスを拡大するという当社の経営方針にもかなう。外販しない手はありません」。伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の金子雅エンタープライズビジネス第3本部エンタープライズ開発第3部長補佐兼システム開発第3課長は、社内の会議で「EIMANAGER/Web」の製品化を主張する言葉に自然と熱がこもった。部下がゼロから作り上げた文書管理システムの商品価値に、確信があったからだ。

 EIMANAGER/Webは一見、普通のWebベースの文書管理システムのようだが、実はそうではない。コンシューマ向けのイメージが強い「Flash」を使ってクライアントソフトを開発した珍しい製品だ()。「顧客ニーズに合わせ細かい操作感を磨くことこそ、文書管理システムの生命線になる。そんな思いにFlashがぴたりとはまった」。開発を主導したシステム開発第3課の今野俊二氏は、Flash採用の狙いをこう語る。

図●CTCの文書管理システム「EIMANAGER/Web」
図●CTCの文書管理システム「EIMANAGER/Web」
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Ajaxよりも軽くて動作が速い

今野俊二●エンタープライズ開発第3部システム開発第3課
今野俊二●エンタープライズ開発第3部システム開発第3課

 今野氏がEIMANAGER/Webを開発したきっかけは2004年末。担当する製造業の顧客から「ブラウザをそのまま使うだけのシステムはこりごり。もっと使いやすくしてほしい」と依頼を受けたのだ。

 この顧客はそれまでパッケージソフトを使って、製品の設計変更指示書やクレーム通知書など生産部門で使う文書を管理していた。だがブラウザを使ったクライアントは操作手順が複雑で、視覚効果も乏しい。雑な使用感がものづくりの現場にいる社員に不評で、利用がなかなか進んでいなかった。

 今野氏はその時、米アドビシステムズが開発したFlashベースのリッチクライアント技術「Flex」を独自に調査していた。当時は米グーグルが注目を集め、Ajaxがリッチクライアントの本命として浮上した時期。だが今野氏は「画面を高速かつ表現力豊かに表示できる点で優れる。クライアントの開発技術としては、コンシューマ分野で鍛えられたFlexに軍配が上がる」と判断した。Flexを知らなかった顧客も、今野氏らが試作したクライアント画面のスムーズな動きを目にして採用を決意した。

 開発段階で今野氏らCTCの担当チームが労力を割いたのは、ブラウザを使っていると極力意識させず、直感的に「今、何をしているか」が分かる画面にすること。例えば画面中のあるキーをクリックすると、あたかもそのキーを指で押したかのように自然に沈みこむ。キーワード検索画面を、どのウィンドウを開いても常に手前の定位置に浮かべておく。現場社員にヒアリングし、彼らの感性に訴えるよう煮詰めていった。

基盤ソフトを“手組み”で開発

 このシステムでこだわったポイントはもう一つある。要件変更に即応できるシステムにすることだ。この顧客は生産工程を含めた全社的な業務改革の最中で、システム要件がどんどん変わる状態だった。そこでデータ処理のロジックやファイル管理、データベース連携などの機能を、ソフトウエア部品として用意。急な要件変更があっても、部品を組み替えるか、一部を変更すれば済むようにした。

 紆余曲折もあった。途中で要件が膨らんだのは想定内だが、肝心のFlexによる開発が追い付かず、工数が見積もりを大幅に超えてしまった。というのも当時日本ではFlexの技術情報が不足しており、開発ツールも貧弱。独力で開発するしかなかったのだ。今野氏らを支えてきた金子部長補佐は当時の様子を、「暗礁に乗り上げた船のようだった」と苦笑いして振り返る。その後は開発リソースを強化できたこともあり、2005年11月には完成にこぎ着けた。

 受託開発の現場たたき上げのシステムだからこそ、現行製品に不満を感じる他のユーザー企業にも響く――。金子部長補佐と今野氏の熱意は、CTC社内の開発者魂に火を付けた。2006年春に製品化のためのチームが発足。11月に最初の製品版を発売した直後から製造業の顧客を中心に引き合いが強く、2007年初めには早くも初受注。2008年1月に処理速度を高めた新製品を発売するなど、進化を続けている。