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ビジネスにおけるITへの依存度が高まる中で、そのITの品質に疑問符が付けられるケースは少なくない。住宅やエンジニアリング・プラスチックなどのメーカーである積水化学工業は、ITのユーザー企業として、システムをITベンダーに依頼する中で想起されたよりよいITプロジェクトのあり方を考察した。Win-Winの関係作り、ITアーキテクトの役割の重要性など、講演では、ストレートな論理展開に、受講者の共感が広がっていた。

積水化学工業 コーポレート 情報システムグループ長 寺嶋 一郎 氏
積水化学工業
コーポレート 情報システムグループ長
寺嶋 一郎 氏

 IT業界の課題は、品質や人材の面などさまざまな角度から指摘されている。積水化学工業のコーポレート 情報システムグループ長の寺嶋一郎氏は、ユーザー企業の立場でそうした課題に日々向き合ってきた。

 「システム構築を依頼したITベンダー側の担当者が何度も変わり、その都度、業務の説明をしている。あるいは、スケジュールが大幅に遅れて予算もオーバーした。ほかにもシステムは出来てもバグが多かったり、実際の業務との乖離があったりして使いものにならない。そんなユーザーの不満の声をよく耳にします」。

 このような事態がしばしば起きるのは、どこかに本質的な問題があるからではないか。そんな意識から寺嶋氏は3つの視点を提示する。

(1)なぜ、システム化の真のニーズが捉えられないのか。(2)なぜ、最適なアーキテクチャの設計がなされないのか。(3)なぜ、ソフトウエアの品質が悪いのか。

 まず(1)の「真のニーズ」について寺嶋氏は次のように指摘する。

 「現場の要求が真のニーズとは限りません。現場の言うことをそのまま鵜呑みにすれば、多くの場合、個別最適のシステムが出来上がります。何が幹で何が枝葉なのか、経営の視点で見なくては全体最適を実現することはできません。コンサルタントやSIerに頼り過ぎているユーザーも多くいます。本質的なニーズをつかむのは、あくまでも自分たちの役割と考えるべきでしょう」(寺嶋氏)。

 ユーザーとベンダーが互いにもたれ合うのではなく、信頼関係を維持しつつ緊張関係を持って、それぞれの役割を果たすことが重要である。「一方が得をすれば、他方が損をする」という関係ではなく、Win-Winの関係作りが求められている。

業務がわかりプログラムを書ける優秀なITアーキテクトの養成を

 次に、(2)の「最適設計」に関する課題について寺嶋氏はこう考えている。

 「手段と目的を混同していないかと疑いたくなるケースが多いですね。パッケージやツールはあくまでも手段。しかし、『これさえ導入すればよくなる』といったセールストークをよく聞きます。また、個別最適、短期的な発想で設計が行われているケースも多いです。そして、最終的には人の問題。優秀なITアーキテクトに全体最適を目指した設計をしてほしいと、ユーザーは願っています」(寺嶋氏)。

 寺嶋氏の経験では、ITのアーキテクチャを工夫するだけでコスト・パフォーマンスがケタ違いによくなったこともあるという。

 最後に(3)の「品質」について。寺嶋氏は「実装経験の乏しいSEがシステムを設計しており、業務のわからないプログラマがプログラムを書いている」と指摘する。こうした分業体制がコミュニケーションロスを生んでいるというわけだ。

 (2)も(3)も、全員がSEでありプログラマであればこのロスは最小化できる。そして「要件定義、設計から実装までを一貫生産を目指すべきです」と寺嶋氏は提言する。現実的には難しいが、その努力の中から両者のギャップを埋める人材が育つ。それがITアーキテクトだろう。業務とITに通じたITアーキテクトの養成は、ベンダーにとって大きな課題である。