PR

人、モノ、金、そして情報。企業にとって“人財”と“知財”が貴重な資産であることは疑う余地はない。しかし、人財を定量化して評価しながら育成し、暗黙知の部分が多い知財を形式知にして流通させる仕組み作りは、困難を極める。日立システムアンドサービスでは、人財と知財を生かすための独自の経営戦略に取り組んでいる。ここでは、会社が求める高い付加価値を持った人財を育成し、企業力に結び付ける同社の2つの支援システムの取り組みが報告された。

日立システムアンドサービス 執行役常務 眞木 正喜 氏
日立システムアンドサービス
執行役常務
眞木 正喜 氏

 講演は、イノベーションをめぐる世界のトレンドから始まった。

 2004年のパルミザーノ・レポートではイノベーションの必要性を指摘し、「タレント創造のための教育投資が必要で、次世代イノベータの育成が重要」と人財育成の重要性で唱えている。日本でも「イノベーション25」において、人財育成がこの政策の基盤に位置付けられ、「多様性を受け入れ、創造性に富んだ、この国の形を作っていける」人財の育成に向けた施策が示された。

 一方、世界のIT人財の状況に目を向けると、中国、インドなどの市場が急拡大する中で、日本市場の占める位置は相対的に低下している。IT産業の就業者数の予測では、2015年に中国、インドがそれぞれ300万人を超えるのに対して、日本はわずか70万人弱に過ぎない。「この量の差によって何が起こるのか、恐怖さえ覚えます」と日立システムアンドサービス 執行役常務の眞木正喜氏。「こういう状況の中では、付加価値のない人を育成しても意味がないのです」と強調する。

 同社は2002年から付加価値の高い人財の育成に取り組み、徐々に成果を上げつつあるという。「人財」と「知財」を生かす同社の経営戦略の大きな柱は、「人財開発支援システム」と「知財創成支援システム」の2つだ。コーポレートで求められる人財を明確化し、「人財開発支援システム」によって育成・評価する。さらに、「知財創成支援システム」によって人財の生み出す「情報・知」を収集して「体系化された知識」にまとめ、経営に最大限に生かそうという取り組みだ。

 2002年後半、同社はまず人財開発戦略の構築から着手した。ITSSに則った技術の分類を取り入れ、個人のスキルをデータベース化し、人財スキルの“見える化”を図った。同時に、個人のキャリア形成のためのPDCAサイクルを確立した。2004年からは、これに組織としての視点を加え、個人のスキルを組織ごとにプロットして、組織単位の分析と組織力の見える化を実現。組織パフォーマンスを測定し、マネジメント施策を展 開してきた。

知財と人財を結び付けてパフォーマンスの向上を目指す

 そして2005年下期から新たに加えられたのが「知財創成支援システム」である。「会社の資産は広い意味での知財です。これと人財を結び付けてパフォーマンスを上げることが目的です」と眞木氏は語る。

「人財」と「知財」を活かす経営戦略
「人財」と「知財」を活かす経営戦略

 「知財創成支援システム」を構築する前に、同社では、まずハイパフォーマ人財像の洗い出しと分析を行った。ハイパフォーマ人財とはコーポレートで求められる人財で、事業部単位で選出。選出されたハイパフォーマ人財は、全社の1割に当たる約400人だった。さらに、選出された人財の思考や行動特性を分析し、ハイパフォーマ人財を4つのTier(階層)に分類した。最も高いレベルのTier1は約60人。次のレベルのTier2は約90人。そしてTier1とTier2は、ハイパフォーマを育成できる人財として、「ハイパフォーマ・ジェネレータ」と位置付けた。

 「会社全体はハイパフォーマ・ジェネレータをキーに動き、約60人のTier1のハイパフォーマ人財で構成される15本のチェーンが存在することがわかりました」と眞木氏は指摘する。Tier1のハイパフォーマ人財は、部下の育成・指導ができる特性を持ち、同様のコンピテンシーを共有したチェーンを、同社の組織上で構成していたのである。

 全社としての組織力を上げることは、このチェーンを拡大すること。そのための方法は2つある。チェーンに適切な人財を継ぎ足して枝葉を広げるか、チェーンの中の人財を中心に新たなチェーンを作成するかだ。それを実現する仕組みとして考えられたのが「知財創成支援システム」である。

 「知財創成支援システム」は、社内外の「知」を収集して編集し、人、モノ、情報といった経営資源のつながりを分類して可視化することで、体系化された知識としてまとめるものだ。暗黙知からキーワードを拾い、体系化することで知識とし、見える形にすることが試みられた。中心となるのが、分類軸を設定して定量化し、キーワードを抽出して関連付ける“知のコンシェルジュ”。「まだプリミティブなものですが、一部動き出しました」と眞木氏は語る。

人的ネットワークの構築を支える全社共通コラボレーション基盤

 「経営戦略の推進には、ハイパフォーマ人財の存在だけでなく、彼らの公式・非公式の人的ネットワークの構築を支え、体系化された知を活用することが必要です」と眞木氏。そのためには、ネットワークの構築を支援するインフラが必須であり、同社では、SNSやBlogなどを活用した「全社共通コラボレーション基盤」による「知」の循環を構想している。

 眞木氏は、「ハイパフォーマ人財はビジネスに有益ないくつかのコンピテンシーをバランスよく併せ持っています。これらを経営陣がどう評価するかが大事になってきます」と課題を示しながら、評価を数値化し、バランスシートに反映したいと語る。「暗黙知を形式知にすると、会社の大事な資産である知財が流通してしまいますから、まず社内でクローズドした状態で展開して、うまくいったらオープン・イノベーションにチャレンジしたい」と、眞木氏は今後の展開を語る。

 独自の人財戦略を展開する同社のノウハウの一部は、技術レベルの目標を定め、進ちょくを上長と共有できる人財戦略ソリューション「リシテアCareer」として製品化されているが、今後も同社の取り組みの成果を製品として提供していく予定だ。