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業績好調の大塚商会だが、1990年代前半には低迷期があった。それを打破するためにスタートしたのが、「大戦略プロジェクト」である。まず徹底的に「あるべき姿」を議論し、時間をかけて2つの情報システムに落とし込んだ。その後、ITの強力なサポートを得たことで、経営指標は急速に改善していく。代表取締役社長の大塚裕司氏が、その取り組みの始まりから現在の成功にいたる過程を静かな口調で語ると、会場は次第に熱に包まれていった。「IT戦略は経営戦略そのもの」という言葉が実感を持って語られた。

大塚商会 代表取締役社長 大塚 裕司 氏
大塚商会
代表取締役社長
大塚 裕司 氏

 1961年創業の大塚商会 は、長い変遷の歴史を経て、現在のユニークなポジションを獲得している。大手企業から中堅・中小企業まで71万社の顧客と取引を持ち、コンピュータやネットワーク、複写機などの幅広い商品およびサービスをワンストップで提供。都市圏に集中的に展開する拠点をベースに、クイックサポート体制を確立している。

 「自動車に例えれば、自動車そのものと付属品、車検、ガソリン、保険などすべてを1社で扱っているようなもの。機器と消耗品、メンテナンスという領域をカバーし、機器のトラブルがあればすぐに対応する。それが当社の大きな特徴でしょう」と語るのは、同社代表取締役社長の大塚裕司氏である。

 この強みを生かして業績も好調だ。2006年度は単体で売上高4029億円、経常利益249億円。そんな大塚商会にも、「バブル崩壊後、非常に苦しい時期があった」と大塚氏はいう。大塚商会はその苦境をいかに脱し、今日の好業績を導いたのか、そこにはITが深くかかわっている。

 大塚商会の業績が低迷したのは1990年代前半のこと。1992年には売上高2003億円に対して、有利子負債は887億円(ともに単体)に達していた。そして、1993年にこの状況を変革するための「大戦略プロジェクト」をスタート。同じ年に同社取締役となった大塚氏は、このプロジェクトの推進役を担った。

財務体質の向上と売上高の推移(単体)
財務体質の向上と売上高の推移(単体)
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機能分散からセンター化へ売上計上基準も変更

 その後の成果は図を見れば一目瞭然だ。財務体質は劇的に向上し、売上高も14年間で約2倍に増えている。一方、期末商品在庫はピーク時の1997年に比べて42.7%減。スリムな体質に生まれ変わった理由はどこにあるのか。

 「当たり前のことを、当たり前にやっただけ」と大塚氏はいう。そしてこう続ける。「なぜ会社が倒産するのかというと、結局はバランスシートが汚れるからです。つまり、載せてはいけない在庫を載せる、あるいは回収できない売掛金を計上する。そういうことをやめて、企業会計原則通りにすれば、バランスシートは汚れません。会社が倒産することもありません。こうした思いが、大戦略プロジェクトのバックグラウンドにありました」。

 大戦略プロジェクトの開始当時、情報システムは「部分は見えても全体が見えない」ものだった。拠点ごとにオフコンが設置され、拠点ごとに売り上げを計上し、在庫を持ち、仕入れを行う。いわば、「ミニ大塚商会」が280カ所あったようなものだった。

 どこに在庫が余っていて、どこで足りないのかを把握することもできない。売上計上の基準も拠点ごとに微妙に違っていた。計上してはいけない売り上げが計上されても、それをチェックすることは難しかった。データの精度は低く、最大顧客がどの企業なのかも分からない状態だった。大塚氏は「足にトゲが刺さって血が流れていても気づかない恐竜。それが当時の姿でした」と語る。

 そこで、大戦略プロジェクトでは徹底的な議論が行われ、ビジネスを支えるITの「あるべき姿」を示した。当時、議論に使用したホワイト・ボードの書き込みは、何年も消されずに残されたという。

 「最初にあるべき姿を明確化したこと、そして経営者の『会社をつぶさない』という思い。この2つがプロジェクト成功の大きな要因だったと思います」と大塚氏は述懐する。こうして1998年、自社開発の新会計システムが稼働を始めた。

 ここで目指したのは、売上計上基準の変更とセンター化である。拠点は提案や見積もり、契約・受注などの営業活動に特化し、それ以外の機能はセンターに集約した。売り上げはセンター側で自動計上されるようになり、架空計上やフライングができない仕組みができた。売り掛けは請求・回収センター、在庫は物流センターや配送センターなどが担当することとなり、仕入は購買センターに統合した。拠点に在庫を置かなくなったので、現在の在庫回転率は1992年の2倍以上になっている。

CRMとSFAを合体させた「SPR」で1人当たりの営業効率は大幅に向上

 大戦略プロジェクトを推進する一方で、社内のリテラシー向上にも取り組んだ。例えば、取締役や全従業員にパソコンの実機テストを実施。合格しないと名前を公表したという。また、社内連絡はグループウエアに一本化した。「グループウエアを見ていない役員が、役員会に遅刻するということもありました」と大塚氏。

 さて、新会計システムの後、2001年にはCRMとSFAの機能を持つ独自開発のシステム「SPR」がスタートした。顧客のプロフィールや取引履歴、顧客への提案状況、顧客のニーズを正確に知ることで、顧客満足度(CS)と営業効率の向上を狙う。それを支えるのが、取引企業71万社と未取引企業50万社、合計121万社に上る登録社数を誇るデータベースである。

 SPRが稼働して以降、営業活動のレベルは一気に高まる。1998年と比べると、1人当たり売上高は約34%増、1人当たり営業利益は約12倍に増えた。

 「大戦略プロジェクトを始めたときのイメージがようやく実現しつつあります。理想を描いて目指せば、それは必ず現実になるとの思いを強くしています」という大塚氏。そして最後に「IT戦略は経営戦略そのものです。ITを経営に生かしてきた経験を踏まえ、お客様に対しても最適なITの活用方法を提供していきたいと考えています」。

 2つの情報システムをテコに大きな飛躍を遂げた大塚商会。その経験に裏打ちされているから、自信を持って顧客に提案できるのだろう。