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 携帯電話では,端末と基地局のアクセス部分に無線が使われていることは一般常識--。しかし,その背後にあるネットワークでも無線が活躍していることはあまり知られていない。そうした分野で使われる小型の固定無線伝送装置でトップ・シェアを誇るのが,NECの「パソリンク」である。海外市場で弱いとされる国内ベンダーだが,このパソリンク事業はひとり気を吐いている格好だ。

 パソリンクの開発・製造を受け持つのは,NECの子会社で福島に本社兼工場を構えるNECワイヤレスネットワークスである(写真1)。2008年1月17日,NECとNECワイヤレスネットワークスは,パソリンクの工場見学会を開催した。

写真1●NECワイヤレスネットワークス
写真1●NECワイヤレスネットワークス
福島市の郊外にある。JR福島駅から車で20分ぐらい。
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 工場見学に先立ち,NECの執行役員兼モバイルネットワーク事業本部長の遠藤信博氏がパソリンク事業について説明した(写真2)。

写真2●NEC執行役員兼モバイルネットワーク事業本部長の遠藤信博氏

 初めに,遠藤氏のモバイルネットワーク事業本部のカバー範囲を説明した。大きく分けると「移動系」と「固定系」の二つがあるという。移動系は,携帯電話システムを構成する基地局や制御局,コア・ネットワークのノードなど。もう一つの固定系は,そうした基地局などを無線でつなぐためのワイヤレス伝送装置である。

 NECのマイクロ波伝送装置の歴史は50年にわたり,その技術が現在の製品にも生きているという。とくに,1970年代に全盛を迎えた衛星用マイクロ波通信で無線技術を蓄積していき,1980年代のVSAT(超小型衛星通信地球局)で小型化・低価格化のノウハウを得た。それを1990年代にデジタル化が進んだ携帯電話システムの固定回線に応用したという。

携帯電話の基地局間の接続に利用

 パソリンクは,電波を送受信するアンテナと屋外用装置(ODU),受信した電波をデジタル信号に変換する屋内用装置(IDU)で構成する。有線による固定回線に比べ,導入にかかる時間とコストを圧倒的に低減できるという(図1)。

図1●パソリンクの概要
図1●パソリンクの概要
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 パソリンクが最も使われている分野は,携帯電話の基地局の通信用である。携帯電話端末を無線でつなぐのが基地局の役目だが,その基地局と上位にある制御局をつなぐのに,パソリンクが使われている。このほか,企業用の専用回線や通信事業者の固定回線用にも利用されているという(図2)。

図2●パソリンクが使われる携帯電話システム
図2●パソリンクが使われる携帯電話システム
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 現在,パソリンクは世界131カ国に輸出されている。とくに売れている地域は,東南アジア,中東,アフリカ,東欧,南米といった,携帯電話が今後普及していく地域である。遠藤氏は,携帯電話事業のカギは契約者数をどれだけたくさんとるかであり,事業者はライバルに比べていかにカバー・エリアを広げるか競争が激しくなっているとした。例えば,インドには主要な携帯電話事業者が5社あり,それらの競争で急速に基地局導入が進んでおり,それに合わせてパソリンクの納入台数も急増した(図3)。

図3●世界中で納入実績のあるパソリンク
図3●世界中で納入実績のあるパソリンク
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 パソリンクの販売台数は,2006年度の20万台から2007年度は30万台に達する見込みだという。調査会社によると,2007年7~9月期についにトップ・シェアに躍り出た。来年は需要が一段落し,30万台から10~20%の上乗せで推移するのではないかと遠藤氏は述べた(図4)。

図4●トップ・シェアを取ったパソリンク
図4●トップ・シェアを取ったパソリンク
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 このようにトップ・シェアを取るに到ったパソリンクの強さについて,遠藤氏はNECの分析を披露した。具体的には,(1)製品自体の強さ,(2)サプライ・チェーン・マネージメント,(3)販売力とブランド力--の3点を挙げた。

市場規模は4000億~5000億円

 工場見学の後,遠藤氏は質疑応答に応え,パソリンク事業に関して補足説明した。

 この分野の市場規模はこの2~3年で4000億~6000億円で推移しており,NECを含む上位3社でほとんどを占めている状況だという。残り2社は北欧のベンダー(注:スウェーデンのエリクソンとフィンランドのノキアだと思われる)である。

 これら2社はGSM向けの基地局市場でのメイン・プレーヤーであり,基地局と制御局をつなぐ固定伝送装置もセットで販売しているという。NECが販売台数を上げてトップシェアになれたのは,2社が基地局を納めていない地域での販売が伸びたからだと,遠藤氏は分析する。そうした地域が,現在携帯電話が普及している東南アジア,中東,アフリカ,東欧,南米である。

 そうした地域で販売を伸ばすために,北欧2社以外の基地局ベンダーと協力したり,複数の国で幅広く携帯電話事業を手掛ける国際的な携帯電話事業者との協業を進めたりしてきた。

 最後に今後の市場の見通しとして,現在中心の第2世代携帯電話(2G)の需要は2009年までに落ちていくが,W-CDMAへの世代交代の需要が立ち上がってくると見ている。さらに,2009年ごろにはWiMAXやLTE(long term evolution)が新たに立ち上がってくる。このため,2008~2010年は今の販売規模を維持できるのではとした。