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 ケーブルテレビ(CATV)統括運営会社のジュピターテレコム(JCOM)のグループ会社であるジェイコム東京(JCOM東京)は2008年2月1日に,東京都中央区勝どきの大型集合住宅「THE TOKYO TOWERS」の全2794戸に対して,FTTH(ファイバー・ツー・ザ・ホーム)回線による電話,インターネット接続,CATVのトリプルプレイサービスの提供を開始した。今回のサービスには,注目すべきポイントが二つある。1点目はオール光化されたマンションにCATV事業者がFTTH回線を使って放送サービスを提供したことである。2点目は別のCATV事業者「東京ベイネットワーク」の営業エリア内にある物件に,サービスを提供したことだ。

 近年建設されるマンションは,施工主の意向でオール光化される物件が増えている。こうした物件では二重投資を避けるためにCATV用の同軸ケーブルを配線しないケースも多い。技術的にはFTTH回線を用いたCATVサービスの提供は可能だが,「FTTHに対応するには設備投資の負担が大きく,なかなか導入が進んでいない」(事業者向けFTTH配信システムを手がけるメーカー)のが現状だ。そのため同軸ケーブルがないオール光の場合は,対応を見送るケースが増えていた。

 今回JCOM東京がFTTH回線を使ったサービスの提供にあえて踏み切ったのは,提供先が大規模な新築マンションであり,「まとまった数の加入者が見込め採算が合うという判断があった」(JCOM)からだ。また,札幌,関東,関西,九州エリアでCATV事業を手がける日本最大のCATV統括運営会社(MSO)として,今後増加が見込まれるオール光マンションのユーザーがNTT東西地域会社のBフレッツサービスに流れるのを,これ以上見過ごせないという危機感も見え隠れする。次世代ネットワーク(NGN)による地上デジタル放送の再送信も含めた多チャンネルIPTV放送が始まろうとしている今,MSOとして打てる手は積極的に打とうということだろう。

 今回JCOM東京は,NTT東日本のダークファイバーを借りるとともに,事業者の登録を有線役務利用放送事業者に切り替えた。この登録切り替えには,「これまでよりもサービスエリアを拡大しやすくなる二次的な効果がある」(JCOM)という。有線テレビジョン放送の場合,サービスエリアの変更には総務大臣の許可が必要となるが,有線役務利用放送の場合は申請だけで変更が可能だ。つまり,今後ほかの地域でも優良物件があれば,柔軟に対応できる。

 今後こうした越境によるエリア拡大が劇的に増えるのかという点については,「追随する事業者があるとは思わない。今はエリア拡大よりも,CS放送やIPTVなど他の放送サービスとの競争をどう勝ち抜くかの方が重要」(ある大手MSO事業者)という事業者が多い。もともと「1地区1事業者」という行政指導の下で発達してきたCATVサービスは,そうした指導がなくなった今日でも同一エリアで複数の事業者が競合するといった事例がほとんどない。これは,既にCATV事業者がサービス展開している地域に後から別の事業者が参入しても, CATVに対するニーズの掘り起こしは終了しており,十分な加入者を獲得するのが難しいからだ。一方JCOMは「あくまで採算重視だが,良い案件があれば今後も積極的に取り組みたい」といい,CATV事業者のエリアという枠を越えた挑戦は,今後も徐々に増えることになりそうだ。