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写真●ITpro EXPO 2008で講演する日経NETWORKの阿蘇 和人記者
写真●ITpro EXPO 2008で講演する日経NETWORKの阿蘇 和人記者
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 「コンピュータ/ネットワーク機器の落雷対策は,非常に大切なわりには正しく理解されていない。被害が発生するメカニズムを理解して正しい守り方を知っておくべきだ」。ITpro EXPO 2008のメインシアターで2008年1月30日,日経NETWORKの阿蘇 和人記者(写真)は「BCPに欠かせないネットワークの落雷対策」と題して講演し,正しい知識で落雷から機器を守ることの大切さを語った。

 阿蘇記者はまず,落雷被害に対する4つの誤解を列挙した。「被害はめったにない」「ビルに避雷針がある+ケーブルを地下引き込みしているので大丈夫」「サージ・プロテクタをつけておけばよい」「対策は機器ごとに必要」は,いずれも誤解だという。被害については,日経NETWORKが毎年行っているネットワーク・トラブルの調査結果を例に挙げた。同調査によると,毎年,約500件のトラブル中,10~20件は落雷被害によるものだという。「雷被害は決して珍しいものではない」(阿蘇記者)。

 また,雷の電流は間接的にやってくることもあるため,避雷針があるから,ケーブルを外に引いていないから大丈夫とは言えないと阿蘇記者は指摘する。さらに,電気回路に瞬間的に大量に流れるサージ電流を防ぐサージ・プロテクタも,「使い方を間違えると有効に機能しない」(阿蘇記者)。ただ,必ずしも機器ごとに対策が必要というわけではないという。フロアやビルを丸ごと守る対策もあるのだとした。

アースから逆流してくることもある雷の電流

 続いて阿蘇記者は,雷サージによる被害を3つに分けて解説した。(1)ケーブルに直接落ちた雷の電流が流れる「直撃雷サージ」,(2)近くのサージ電流の誘導で電流が流れる「誘導雷サージ」,(3)接地(アース)を通して電流が逆流する「逆流雷サージ」---である。このうち注意が必要なのは,(2)の誘導雷サージと(3)の逆流雷サージだという。

 「実は誘導雷サージの被害は多い。例えば避雷針からのケーブルが壁づたいに張ってある場合,壁の向こう側のLANケーブルに誘導電流が流れることがある」(阿蘇記者)。誘導といえども1万ボルト単位の電圧が発生するため,その被害は甚大だ。また逆流雷サージもよく発生するという。電位は雷が落ちたポイントで非常に高くなり遠くでは低い。「例えば電力線の電柱の近くに雷が落ちると,そこに引いてあったアースから変圧器に上って,電力線を通じて家の中に電流が流れるといったことが起こる。電気は電位差が低い(電気が流れやすい)電線を通って流れるからだ」(同)。日本では,電力線,通信ケーブルなどは,それぞれ外でアースを取るケースが多いため,逆流雷サージが起こりやすいのだという。

図●ネットワーク対応のサージ・プロテクタの仕組み
図●ネットワーク対応のサージ・プロテクタの仕組み
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 このような種類に分類できる雷サージ電流は,特にネットワーク機器やそれにつながるパソコンに流れやすいのだという。「雷サージは入口と出口がそろっているところに流れ込みやすい。電源とLANなど,ケーブルが2本以上つながっているネットワーク機器などがそれに該当する」(阿蘇記者)。

 ネットワーク機器で特に注意しなければならないのは,「電源ケーブルからネットワーク・ケーブルなど,片方向に流れるコモン・モードの雷サージ電流」(同)。家電量販店で販売されているサージ・プロテクト機能付きのOA用電源タップなどでは,このコモン・モード雷サージは防げないことがあるのだという。

 ではどうすれば良いのか。阿蘇記者は,「ネットワーク機器にはネットワーク対応のサージ・プロテクタをきちんと使うこと」と述べる。ネットワーク対応のサージ・プロテクタとは,電源コンセントのアダプタやテーブル・タップに,通信ケーブル用の接続ポートが付いている製品のこと。阿蘇記者は実際の製品の分解写真をプロジェクタに写しだし,雷サージ電流を通信ケーブルと電力線の間でバイパスさせる仕組みなどを解説した()。

徐々に進み始めた「ビル丸ごと」の落雷対策

 最後に阿蘇記者は,NTTの局舎を例にしてビル全体における落雷対策に言及した。「NTTの局舎も,昔はビル全体の雷対策はなされておらず,結構,雷の被害を受けていた」(阿蘇記者)。そのときは,通信用,電源用,避雷用とアースがバラバラで,逆流雷サージ電流がビル内に侵入していたのだという。それが1996年以降,NTTはビルのフロアごと,さらにはビル全体でアースの一本化に取り組んでおり,「雷被害がゼロになったわけではないが,ビル内の通信機器などが雷被害によって壊れることはほとんどなくなった」(同)。

 アースを一本化するのは,ビル内を等電位化するためである。アースを一本化し,そのアース端子に機器をつなげば,ほかの機器のアースとの間で電圧が食い違うことがなくなり,機器に雷サージ電流が流れることがなくなるのだ。ただ,新築のビルでも等電位化は非常に少ないのが現状だと阿蘇記者は指摘する。「歴史的に電源,通信,建物のアースは別で,アースの連結も最近まで一般には認められていなかったからだ」(阿蘇記者)。規格自体でビルの等電位化が認められたのは,JIS規格で2003年,建築基準法では2005年だという。

 「皆さんもネットワーク機器が入っているビルがどのような雷対策を行っているかを,一度きちんと確認してほしい」。阿蘇記者は聴衆にこう呼びかけて,講演を締めくくった。