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「有望な見込み客にどうアプローチするか」では、Webを活用した情報発信やリード発掘も重要である。特に日立情報システムズやNECシステムテクノロジー、インフュージョンはWebによるパッケージ販売を推進し、大きな効果を上げている。ニッチ分野に向けた商品のリード発掘に力を発揮するのも、Webの特性である。

 Webを活用した情報発信やリード発掘も、SMB市場で著しい成果を上げ始めている。顧客リーチを広げたりマーケティングを効率化できたりする利点のほか、「相手のニーズを把握しやすくなり商談を進めやすい」(アイルの串戸一浩取締役東京支社長)といった点が、従来のリード発掘法にないメリットだ。

 SMB市場でこの分野に最も注力している1社は日立情報システムズ。2006年春に、販売・生産管理パッケージ「TENSUITE」など15の商材を対象に、Webサイトでの情報提供を徹底して予想以上の成果を上げた。通常は企業情報や商品説明を載せるトップページを、実名入りの導入事例を多数紹介する構成に変えたのだ。

 結果、各商材への問い合わせ件数は以前の10倍に増加。加えて「既に問い合わせ客に対し、事例紹介や基本的な商品説明を済ませた状態になっている。営業担当は初回訪問から、本格的な商談に入ることができる」(国分一彦営業統括本部副本部長)と、営業期間の短縮につながった。しかも「見込み客からの成約率が3割に達する商材も出てきた」と日立情報システムズの岩下利幸営業統括本部副本部長は証言する。

報道発表を起点に検索エンジンを攻略

 ニッチ分野に向けた商品のリード発掘に力を発揮するのも、Webの特性である。

 「たった2日間で問い合わせが107件。うち17社が当社には垂涎の企業だった」。NECシステムテクノロジー(NEC ST)が9月に達成したWebマーケティングの成果は、仕掛け人である第一営業部の後藤浩次SIマネージャーの想像を超えていたという。

 対象は「輸配送管理システム」と呼ぶ物流計画や経路を最適化するソリューション。その略語である「TMS」と組み合わせて「輸配送管理システム」を検索サイトで検索すると、NEC STは10月中旬時点で「Google」では1位、「Yahoo!」では6位を獲得。「9月時点では、GoogleとYahoo!ともに1位になった」(後藤マネージャー)。

 興味深いのは、検索結果で上位を獲得したのは、NEC STが持つTMSのパッケージ「ULTRAFIX」のページではなく、「輸配送分野のアンケート調査結果を公表」という報道発表であること(図1)。これこそが100社超の問い合わせを集めた仕掛けである。

図1●NEC STはWeb上でニッチ分野の集客を効率化する試みに成功した
図1●NEC STはWeb上でニッチ分野の集客を効率化する試みに成功した
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 NEC STは、まず物流・配送業務の関係者を対象にしたアンケート調査で、システムや業務に対する意識をレポートにまとめた。「ユーザー、ベンダーともに物流にたずさわる関係者は必ず興味を持つ内容だ」(後藤マネージャー)。

 ただし、このレポートを自社サイトで公表するだけではユーザーの関心を呼べない。NEC STは広報部門の協力の下、発表と併せて物流の業界紙やIT関連ニュースのWebメディアへのPR活動も行った。Webなどでのニュースは業界関係者の目に触れ、掲示板などで取り上げられることで検索スコアがアップ。さらに多くの関係者の目に触れるという循環が生まれる。

 レポートはプロフィールや正しいメールアドレスを入力することで取得できる仕組みにした。これで発掘した17社には、「調査レポートの完全版を持参し、顧客の業務課題を聞く訪問営業から商談を始める」と語る後藤マネージャー。従来の手法ではまず発掘できなかったリードに満足げだ。

「見える化」でトップに

在庫スイート

 中小ソリューションプロバイダでも、ニッチ分野なら効果あるWebマーケティングが低コストで実践できる。社員数8人のソフトハウスであるインフュージョン(神奈川県横浜市)はそのことを教えてくれる。

 在庫管理パッケージ「在庫スイート」を引っさげての参入は4年前という後発。最初は「鳴かず飛ばず」(角三十五社長)だったが、3年前にサイトの改善に着手したことで、「在庫管理システム」のキーワードではYahoo!で6位、Googleで14位(ドメインの重複を含む)と健闘している。

 際立っているのは、商品説明を一見ありふれた「見える化」というコンセプトで統一したこと。「在庫」「見える化」で検索するとYahoo!で1位、Googleで2位に躍り出る。「業者に頼ったSEO(検索エンジン最適化)対策はしていない。ページのタイトルや自社サイト内のリンク構造を見直すといった、自力でできるものだけ」(角社長)。

あえての「郵送」で絞り込む

 中小ソフトハウスらしい工夫はむしろ、見込み客をつかまえた後の営業プロセスにある。販売価格が30万~150万円の在庫スイートは中小向けの低価格製品。営業に手間をかけられないし、そもそも同社で営業と呼べるスタッフは角社長しかいない。

 そこで成約率の高い見込み客を絞り込む手段として、ソフトの試用版に着目した。まず試用版をあえて郵送で送付。住所や連絡先を明記してもらう「ハードル」を設けた。さらにソフトの試用期間を、利用からでなく郵送から1カ月間に限った(図2)。

図2●インフュージョンの、Webから見込み客を絞り込むテレコール手法
図2●インフュージョンの、Webから見込み客を絞り込むテレコール手法
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 送付から1週間後と2週間後に、角社長は送り先にフォローの電話を入れる。「試用を開始していなければ、見込みが薄い客としてフォローをやめる」(角社長)。これで有望な見込み客を3~4割に絞り込める。さらに成約までは見込み客のもとに出向かず、すべて電話対応か、顧客がインフュージョンを訪問するというプロセスを貫いている。

 年間の試用版の送付件数150件に対し、成約率は約15%。Webへのアクセスは順調に増えており、角社長は直販パッケージ事業の離陸としては十分な手応えと語る。

資金を投じる前にできるWeb改善法

 Webマーケティングは、「資金を投じる前に、自力でできる基本を実践するだけでも十分な効果がある」と、ビービットの武井由紀子取締役は指摘する。

 例えば自社サイト内でのリンクの示し方を整理したり、ページのタイトルを工夫するだけで、検索サイトでのスコアやユーザーの情報の探しやすさは大きく改善する。

 事例紹介はリード開拓に大きな役割を果たすが、「年商や業態など、顧客企業のプロフィールを明記することが重要。共通点を持つユーザーは商品に親近感を覚える」(武井取締役)。

 逆に「競合を意識して一部の情報を伏せたり価格を伏せたりすることは、大きなマイナス」(武井取締役)。ユーザー企業は「Webにない情報は現実にもない」と思う傾向が強い。また価格情報がなければ、「当社には手が届かないだろう」と否定的に考えるユーザー企業が増えるという。