PR

中堅・中小企業(SMB)市場で成果を上げるソリューションプロバイダが続々と登場し始めた。今までの営業プロセスを大幅に見直し、新たなアプローチ手法で取り組んでいるのが特徴だ。SMB の“巨大市場”を闇雲に攻めるのではなく、自社が狙う分野だけに焦点を絞り込むことで、営業効率のアップに成功した。
 本特集では、SMB 市場で足場を築いている先行企業などの取り組みから、実践できる顧客層の絞り方、顧客層に応じたアプローチ方法などを紹介。併せて、本誌がITpro Research と実施した中堅・中小ユーザーやIT ベンダーに聞いた緊急アンケート調査の結果を掲載する。さらに、ユーザー企業のシステム担当者などを交えた特別座談会も実施。「売る側」「使う側」のミスマッチが浮かび上がった。日経ソリューションビジネス2007年10月30日号の特集を公開する。 

 「手間ばかりかかって儲からない市場」といわれる中堅・中小企業(SMB)マーケット。だが、いまやそんな“思い込み”は覆されようとしている。SMB市場に参入し、成果を上げるソリューションプロバイダが続々と登場しているからだ。数百万社を抱える“巨大市場”を闇雲に攻めるのではなく、いずれも自社が狙う分野だけに焦点を絞り込んでいる点が大きな特徴。加えて営業プロセスを大幅に見直し、新たなアプローチ手法を打ち出している。

 「新規参入派」の1社が、昨年上場したキーウェアソリューションズ。大手メーカーの下請け案件が売上高の7割を占める中、「自ら元請けになって上流から運用までのバリューチェーンが築ける」(執行役員KeyCOMPASS事業本部の山田和男本部長)という狙いから、3年前にSMB市場に参入した。「近い将来に売上高の3割を占める主力事業に育てたい」と山田執行役員は意気込む。

 既にSMB市場で地位を確立している「既存業者派」のソリューションプロバイダも負けてはいない。日本事務器(NJC)は特定の「業界」をピンポイントで攻めることでトップシェアを取る手法を実践。「温浴施設」「旅館」「通販会社」「漁業協同組合」といった分野で成果を上げている。リコーテクノシステムズは、複合機のメンテナンスを担当する2000人以上の保守エンジニアを活用し、新たな案件発掘に力を入れている。

 ITベンダーも動き出した。例えばSAPジャパンは2007年から、SMB向けのERP(統合基幹業務システム)ソフトの拡販に、新しいマーケティング施策を導入している。特定業種への販売を強化することで、SMB市場開拓をさらに推進することが狙い。

 さらに本誌がITpro Researchと実施した中堅・中小ユーザーやITベンダーに聞いた緊急アンケート調査の結果でも、ソリューションプロバイダの実に76.7%が、SMB市場に「積極的」「まあ積極的」に取り組んでいると回答(図1)。今やSMB市場は、新旧勢力が入り乱れる激戦区だ。

図1●大手向け市場の成熟などがSMB市場への新規参入を促している
図1●大手向け市場の成熟などがSMB市場への新規参入を促している
[画像のクリックで拡大表示]

SMB市場で儲ける三つの視点

 では、なぜSMB市場は今まで儲からないとされてきたのか。「競争が激しい中で過度な販売目標を立てたり、そもそもSMB市場を十分に分析する前に、商品やサービスの開発に走ってしまう過ちを犯すソリューションプロバイダが多かった」と船井総合研究所 戦略コンサルティング部の長島淳治経営コンサルタントは指摘する。その結果、利益を上げられず苦しむというわけだ。

 現在、SMB市場で成果を上げているソリューションプロバイダは多くの失敗を乗り越えた末に、ようやく独自の営業手法をつかんだ。「巨大なSMB市場に臆せず、顧客をしっかりと絞り込めば、商品の特徴と顧客ニーズが合致して売りやすくなる。SMB市場は実は儲かる市場である」(船井総研の長島コンサルタント)。

 成功に至る方法論は各社各様。特に最近はWebマーケティングの台頭といった新しい手法もあり、正解は一つではない。取材の結果、成功している各社の取り組みには「顧客をどう絞りこむか」「有望な見込み客にどうアプローチするか」「サービスの形態をどう市場に合わせ込むか」といった三つの視点があることが分かった。

市場を知る第一歩、企業のIT投資額を量る

 ユーザー企業の攻略法を練る上で前提となるのは、顧客1社から見込めるIT投資額を知ること。セグメントにある対象企業数が分かれば、狙える市場規模も推計できる。

 目安となる統計データは、経済産業省による「情報処理実態調査」で公表されている。例えば製造業の場合は、年商の1.35%がIT投資額。また、ITサービス業界が狙える外部向け費用はIT投資額の62.2%だ。

 ただし「この統計をSMB市場に適用する場合は調整が必要」と船井総研の長島氏は指摘する。規模が小さくなると、年商に対するIT投資の割合は増える傾向だからだ。長島氏はこれまでの経験から、年商100億円以下の場合は「2.5」という係数を採用する。年商20億円の製造業の場合、見込める外部向けのIT投資額は約4200万円だ()。

●年商20億円の製造業ユーザーから見込めるIT投資額と内訳
●年商20億円の製造業ユーザーから見込めるIT投資額と内訳

 企業規模による同様の傾向は、民間の統計データにも現れている。アイ・ティ・アール(ITR)の「IT投資動向調査2006」によると、対年商のIT投資率は年商5000億円以上の大企業では1.3%にとどまるのに、10億円未満では5.2%に上る。

 ITサービス業界が狙える「取り分」が推計できたら、「その内訳をさらに分析し、自社の強みから狙うべき投資項目を検討する」(長島氏)。参考になるのは、日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査」。例えば開発に特化する企業なら、初期導入に投じられる年間2770万円が狙うべき投資額だ。

 既存顧客の場合は、ヒアリングしたIT投資額や取引データを蓄積することで見えてくる顧客像もある。例えば、NECネクサソリューションズの顧客分析では、年商100億~50億円の顧客のIT投資率が他の企業規模より高い傾向が現れた。「逆に読めば、顧客は大きなIT投資を強いられている。コスト削減のニーズが高いという仮説を立て、検証しているところ」(ソリューション推進部の宮越一郎グループマネージャー)。この分析結果は、NECネクサが年商100億円をメドに顧客層を分けた根拠の一つにもなっているという。