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カーナビやタイヤなどのカー用品を販売するオートバックスセブンは、新規事業として力を注ぐ中古車の買い取り事業で、店舗の業務を支援する新システムを導入した。査定の技術や手順をすべてデータ化。買い取り後の運送手配や名義変更などの後処理まで、本社で一括して管理する。車販売事業の拡大が狙いだ。

 「当社の販売店舗から新システムの研修申し込みが殺到している。2007年9月から研修の回数を2倍にし、直営店の研修を後回しにしてフランチャイズ店を優先している」―。オートバックスセブンの榧宏介C@RS事業推進部長は嬉しい誤算に、思わず顔をほころばす。新システムの研修は1店舗当たり2人程度の参加予定だったが、ふたを開けてみると、1店舗当たり5~6人と予想を上回った。

 同社は2007年7月、中古車買い取りシステム「スゴ買い」の本格導入を開始した。このシステムは、同社の車販売事業を拡大するための次の一手として投入したものだ。査定システムと、買い取り後の事務処理システムで構成し、十数億円の開発費をかけた。査定者の技術や手順をシステム化し、中古自動車の買い取り時に誰でも同じ品質で査定できる。全国均一の中古車買い取りの仕組みを確立し、販売店舗が買い取り事業に参加しやすい環境を整備した。さらに、買い取り後の事務処理を本社で一括して管理することで、各店舗でばらばらだった後処理を一元化。コスト削減の効果も狙う。2008年度中には、フランチャイズ店を含む472店舗への導入を予定している。

 オートバックスセブンは2002年から、新規事業として新車や中古車の車両販売「カーズC@RS」を開始した。この事業は、同社が「カー用品供給からトータルカーライフ事業支援へ」とビジネス・モデルを切り替えるための大きな柱の1つだ。事業開始後、中古自動車販売を手掛ける企業と業務提携したりして、順調に車の販売台数や売り上げを伸ばしていた。

 その一方で、課題も出始めていた。販売台数が伸びるものの、中古車買い取り事業に参加する店舗が伸び悩んだのだ。さらに、中古車買い取り業務のノウハウが個々の店舗で異なる問題も出てきた。今後さらに車販売事業を伸ばしていくためには、次なる一手が必要な時期に差し掛かっていた(図1)。

図1●オートバックスセブンの自動車販売事業の実績と計画
図1●オートバックスセブンの自動車販売事業の実績と計画
自動車販売のうち約9割が中古車販売事業。2007年3月期は、当初1万7700台の計画だったが、中古車販売事業を手掛ける店舗数などが伸び悩み1万5403台にとどまった。2008年3月期は「スゴ買い」のシステム導入をきっかけに中古車販売事業の拡大を狙う

査定員の育成が大きな課題

 車販売事業の拡大が同社の課題となっていた2005年、中古車買い取り販売事業には理想と現実の差が生じていた(図2)。

図2●オートバックスセブンが考える中古車事業の理想と現実
図2●オートバックスセブンが考える中古車事業の理想と現実
均一の査定力を持つ人材の育成が難しく、各店舗は中古車事業への参加に尻込み。事業成長の妨げとなっていた
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 中でも、査定員を育てるということには、オートバックスセブンは大きな悩みを抱えていた。「本来であれば、中古車買い取りの査定技術は2~3年かけて習得してもらいたいところだが、10日の研修で済ませ、後は現場で習得していたのが現状」と榧部長は当時の悩みを打ち明ける。会社としては少しでも早く現場で活躍してもらいたい。何年もかけて査定技術を教えるのでは、効率が悪すぎたのだ。

 さらに、査定員を確保するということにも悩みがあった。同社が査定員として育てても、ノウハウを習得するとすぐに独立してしまうことが頻繁に起こった。神戸のある店舗では、査定ノウハウを習得した査定員が、ある日突然担当していたお客を連れて独立してしまったという。しかも、その査定員は、「うちの店で働かないか」とオートバックスセブンで共に働いていたほかの店員も引き抜いていってしまった。これでは、「何のために育てたのか分からない」(榧部長)。

 たとえ査定員が育ったとしても、査定員個々の能力の差は埋められないという課題もあった。最終的に車の状況を判断するのは人である。そのため、その判断基準にはどうしてもばらつきが出てしまう。同じ車であっても、査定する店舗によって買い取り価格に差が出てしまい、お客の信用を失うということにもなりかねない。

 中には巧妙に修理され、事故車であることが見抜けないような車もある。誤って事故車を販売してしまえば、お客からのクレームは免れない。さらに、「客単価が1万円もいかないようなカー用品の販売と違って、車販売は客単価が50万~100万円だ。それだけに、買い取った車が事故車だと分かると販売価値が下がり、1台で10万~20万円の損害になることもある」(榧部長)という問題もあった。このようなリスクがあるのでは、販売店舗が尻込みしてしまい、中古車買い取り事業を伸ばすことはできない。

査定職人に密着しノウハウを収集

写真1●査定時に使用する「スゴ買い」のシステムを搭載したノート・パソコン
写真1●査定時に使用する「スゴ買い」のシステムを搭載したノート・パソコン
実際に車の前で査定できるように、持ち運べるノート型を選択した
 
写真2●「膜厚計」を使い塗装をチェック
写真2●「膜厚計」を使い塗装をチェック
塗装の塗り直しから傷の有無などを見極める査定職人の“目”は、膜厚計を使ってデジタル化した。見た目には分からない再塗装もチェックできる

 この状況を打破するために、榧部長が打ち出した策が「査定ノウハウのシステム化」だった。誰でも同一で確実な査定をできるシステムを構築することで、販売店が抱える事故車購入などの不安要素を取り除く。車を撮影する巨大なレントゲンを設置して事故車を見抜くというシステムも検討したが、「運用コスト的に見合わずに諦めた」(榧部長)など、試行錯誤を重ねた。最終的にたどり着いたのは、査定員の技術や手順といったノウハウをすべてロジック化しデータベースに蓄積。そのノウハウをすべての店舗で共有するといった仕組みだった。

 システムを構築するにあたり、まず始めたのは、査定員のノウハウをデータ化することだった。中古車オークション会場には、1日に何万台もの車を査定する専門家がいる。その中でも「査定の匠」と言われている人たちに協力を仰ぎ、実際の査定現場に密着。査定プロセスを細かく分析していった。

 事故のパターンによっては組み合わせが無数になる査定ポイントを、匠が査定する手順を追うことで整理した。例えば、車のAの場所に異常があったら、Bの場所をチェックし、次にCの場所もチェックする。Bの場所に異常がなかったら、Dの場所をチェックするといった具合に、匠のロジックに沿って判断ルールの分岐点を作り査定ポイントをデータベース化した。システムの構築には約2年かかった。

 端末は、実際に査定しながらシステムを利用できるようにノート・パソコンを採用した(写真1)。画面には、査定するポイントが示されるので、その順番通りにチェックすればよい。車の部品や場所などを示す専門用語が分からなくても作業が進められるように、図解入りで査定ポイントを示す工夫を加えた。

 車の塗装し直しやボディーのへこみなどの検査には、査定職人の目の代わりとなる膜厚計を採用した(写真2)。膜厚計は車の塗装膜の厚さを測定する機器で、測定結果を数値化。そのデータを本社に設置した車の塗装データベースとマッチングさせ、再塗装の有無やへこみなどを判定する仕組みだ。


後処理は本社一括管理で実施

 中古車の買い取り業務の中で、査定とともに負担になっていたのが、後処理の業務だった。査定した結果を基に査定額を決定したり、買い取った車を中古車のオークション会場や他の店舗へ運送する手配をしたり、名義変更の届出をしたりと、処理することは多くある。店舗によっては処理に不慣れで、数日かかってしまう。また、運送業者の選択はすべて店舗任せだったことから、運送コストもばらばらで、「安いと思って依頼していても、実際はコスト高ということもあった」(榧部長)。

 そこで、新システムでは、後処理をすべて本社が一括して管理する形式にした(図3)。査定額は中古車市場の相場などを考慮し、本社でデータベース化。どの店舗でも同一の査定額を決定できる。また、本社で運送会社を管理することで、最も安い運送会社を指定し運送コストを削減した。

図3●「スゴ買い」システムの概要
図3●「スゴ買い」システムの概要
査定技術をデジタル化しただけでなく、査定後の運送手配、名義変更などの陸運局への届出、オークション出品の手配などを一括して本社が担当。店舗側の負担を軽減し、査定商談の効率化を狙った
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 後処理の手続きは、査定時に使うノート・パソコンを、販売店の業務端末に接続し、査定結果データを本社に送信する時に同時に行うようにした(写真3)。査定額は30分程度で店舗の業務端末に返信。さらに、店舗側で買い取りの商談が成立すれば、本社側で受信した情報を基に、運送会社の手配や名義変更の手配などを進める。店舗側は後処理の必要がなくなるので、「査定などの買い取り業務に専念でき、商談効率が上がる」(榧部長)というメリットもある。

写真3●業務端末に接続して本社にデータを送信
写真3●業務端末に接続して本社にデータを送信
査定終了後はノート・パソコンに保存したデータを業務端末に接続するだけ。本社では査定情報を受信すると、査定額を決定し業務端末にデータを返信する

 同社は今後、車販売事業の他の業務でもシステム化を進める方針だ。例えば、お客の趣味や家族構成から、嗜好に合った車を提案し販売につなげる。「2010年くらいまでにはシステム化したい」と榧部長の鼻息は荒い。

革新のポイント