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松岡 正人松岡 正人(まつおか まさと)
マイクロソフト株式会社モバイル&エンベデッドデバイス本部
エグゼクティブプロダクトマネージャ


 「組み込み機器」とは、ソフトウェアを用いて制御される機器の総称です。身近なところでは、洗濯機や冷蔵庫などの白物家電からデジタルカメラや携帯電話のような小型でバッテリ駆動型の機器まで、きわめて多種多様な組み込み機器があります(図1)。もちろん、自動車にも多くの組み込み機器が搭載されており、車種によっては100 個以上使用されていることもあります。

図1●様々な組み込み機器
図1●様々な組み込み機器

 これらを分類するには、CPU別、用途別、機能別などいくつかの考え方がありますが、ここでは、「ネットワークに接続されているかどうか」を基準に考えてみたいと思います。ネットワークにも様々ありますが、たとえばLANやWANによってネットワーク上のリソースに接続し、何がしかのサービスを提供する「ネットワーク接続型」の組み込み機器がある一方で、ネットワークには接続せず単体で完結するものもあります。現在、巷に溢れている組み込み機器の多くは前者であり、その数は急増しています。これらは何か他の機器あるいはサーバーなどと接続することによって、サービスを提供しています。

 たとえばCATVの受信装置が良い例です。「セットトップボックス(STB)」と称されるこの手の機器は、CATVのネットワーク網の末端や家庭のリビングルームなどに設置され、テレビやVTR、あるいはHDDレコーダなどの録画装置と接続されているので、CATVの契約者は番組を視聴し、必要に応じて録画や再生ができます。これらの番組の情報はCATV局からデータとして端末に送信され、端末から操作して番組を選択してサービスを受けるわけです。現在、世界中でテレビ放送のデジタル化、双方向化が進められ、日本では2011年に地上波放送のデジタル化を目指していますが、その受信機も考え方は同じです。

 携帯電話は、代表的なネットワーク接続型の組み込み機器です。現在は3Gあるいは3.5Gと呼ばれる世代の端末が使われています。当初は地域ごとにそれぞれ異なる特徴のあった通信方式も徐々に収斂しつつありますが、提供されるサービスやユーザーの使い方には依然として地域差があり、端末に求められる機能も地域性を反映しています。たとえば、日本ではGPS機能を搭載したナビゲーション携帯が一般的ですが、海外ではこれらのサービスはとても特殊な部類に入ります。これを組み込み機器として考えると、ハードウェアの仕様は地域による大きな差はなく、差異化はアプリケーションやサービスによって行われていると言えるでしょう。

 GPSを利用した組み込み機器といえば、カーナビゲーションシステムもあります。これは、人工衛星からのGPS 情報やFM 波を利用したVICS(道路交通情報通信システム)のような交通情報を受信して、道路の渋滞状況や車両の現在位置を運転者に知らせるシステムです。このとき、目的地に到達する最適なルートの計算やそこに至るまでの道案内は、端末側で音声や画像、動画などによって行います。

 SF小説や映画の世界ではもっとインテリジェントになり、音声による指示だけで車両を制御して自動運転しているような場面が見られます。今までは絵空事と思われていたこれらの機能が、現在では危機回避の観点から様々な自動制御に使われ始めています。たとえば、ミリ波レーダーを使って前方の車両との距離を測定し、画像認識によって規制速度を検出することや、GPSから走行位置を正確に把握して一定の条件下で自動走行することなどは、既に実現しています。今後も、交通事故の削減や環境への配慮を目的として、組み込み機器には様々な技術革新が行われることでしょう。

 一方、ネットワークにつながっていない組み込み機器の代表は、白物家電です。たとえば、冷蔵庫や洗濯機、電子炊飯器でネットワーク接続型の製品は皆無ではありませんが、前述のセットトップボックスや携帯電話などのように接続を前提には作られていません。