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運用コストと最も相関が高い業務指標は,「情報共有度」と「SLAレベル」だった。いずれも運用の可視化と関係が深い。また,内部統制の強化により保守と運用の境界を明確化する企業では,運用コストが増加するケースも増えている。将来を見据え,運用コストの最適化が求められている。

黒須 豊
スクウェイブ 代表取締役社長

 今回は,情報システムの運用に関するITコスト(以下,運用コスト)をどのようにコントロールすればよいかを分析する。具体的にはこれまでと同様に,運用コストと相関の高い運用業務を洗い出して考察する。あえてキーワードを挙げるなら,それは運用業務の「可視化(見える化)」だ。運用コストとの間に高い相関がみられた。

 さて,運用コストを分析するに当たって,オープン系のシステムを運用する場合とメインフレームを運用する場合に分けている点に注意してもらいたい。実はオープン系サーバーとメインフレームでは,運用コストの算出方法が異なっている。オープン系サーバーでは「監視対象サーバーの1CPU当たりの運用人件費」を基準としているが,メインフレームについては,「監視対象メインフレームのMIPS値当たりの運用人件費」を基準としているのだ。ちなみに,MIPSとは「100万命令/秒」の処理性能を表す単位である。

 どちらも運用人件費をベースにしており,データセンターの経費などを含めていない点は同じである。異なるのは,「CPUの個数ごとに算出しているか,CPUのMIPS値ごとに算出しているか」である。同一の評価軸で算出できればよいのだが,そうもいかない。

 なぜなら,メインフレームの規模をCPUの合計数で捉えると正確性を欠く。一方,異なるプロセサを搭載したUNIXサーバーやPCサーバーが混在する中,オープン系サーバーのMIPS値をわざわざ算出することは難しい。

 このような理由で,オープン系とメインフレームでは異なる運用コストの基準を採用している。ただし,運用領域の業務内訳である業務指標は,両者共通としている。運用領域における業務指標は,「情報共有度」「ドキュメント整備率」「問題管理レベル」「SLAレベル」の4つである(図1)。

図1●運用領域における業務指標
図1●運用領域における業務指標
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 これまでITコストとの相関係数が特に高いものを取り上げてきたが,運用領域でも3つの業務指標に特徴のある傾向が表れている。「情報共有度」「ドキュメント整備率」と「SLAレベル」である。オープン系とメインフレームの両方,またはどちらかの相関係数が高い。この3つがコスト・ドライバーになっていると考えてよいだろう。

「情報共有度」と「SLAレベル」の強化がITコストの増加に

 まず,オープン系,メインフレームのどちらについても相関係数が高かった「情報共有度」「SLAレベル」を取り上げよう。

 「情報共有度」は,運用業務の“肝”といってよい業務指標だ。ソフトウエア/ハードウエアの構成,バージョンを把握・調整するリリース管理作業などを指す。プログラムを改修し,それをリリースするためには,コードを修正するチームと,リリースを管理するチームの間で,適切に情報をやり取りする必要がある。ときには,運用チームと業務部門との間においても,情報共有が大きな意味を持つ。

 「SLAレベル」は,SLA(サービスレベル・アグリーメント)の導入やその運用のレベルを見る業務指標だ。SLAの導入は,情報システムに関する業務の可視化を前提とする場合が多い。つまり,SLAレベルと情報共有度は,両方とも「運用の見える化」という同じ効果をもたらすものと考えられる。両者の相関が似かよった結果になっているのも,それが理由と思われる。

 では,業務指標と運用コストの相関結果を具体的に分析してみよう。「情報共有度」と運用コストの相関係数は,オープン系サーバーの運用で「0.62」,メインフレームで「0.44」という結果だった(図2)。メインフレームの相関係数はやや小さい数値だが,どちらにもプラスの相関傾向が見てとれる。つまり,情報共有度を高めて業務の可視化を進めると,それなりの運用コストが必要になる可能性が高い。

図2●運用領域におけるITコストと業務レベルの相関
図2●運用領域におけるITコストと業務レベルの相関
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 SLAレベルについては,オープン系が「0.68」,メインフレームが「0.49」。こちらもメインフレームの相関係数がやや弱いが,やはりプラスの相関が見てとれる。サービスレベルを明確化し,SLAに基づいてシステムを運用している企業ほど,運用コストは高い傾向があるということである。