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中央が、持ち歩く資料の束と擦り切れが目立つ17年目のバインダー。 取り扱い製品以外の情報も広く集める。
 「こだわりを貫こうと、時に意地になる」と自分の性格を分析する。阪本らしさが発揮されたのが、日本オフィス・システム(NOS)がヘルプデスクなどのハードに付随するサービスを、1999年に有償化した時だ。上得意の顧客からは「今後は値段だけでベンダーを選ぶぞ」と通告された。有償化にがんと首を振らない顧客もいた。

 そこで坂本は静かな闘志を燃やした。「“土下座営業”はしたくない。意地でも顧客の考え方を変えてやろう」と、サービスを有償化する論理を組み立て、提案書にまとめたのだ。骨子は「マルチベンダー化でSEコストが増えている」「当社がスキルの高い有償サービスを提供すれば、結果的にTCO(総所有コスト)は下がる」といったもの。今では常識的な考えだが、当時はこうした理論武装ができた営業はほぼいなかった。仕事振りが評価され、阪本は社内表彰を受賞した。阪本の説明で考え方を変えた顧客とは「今でも太いパイプでつながっている」と振り返る。

 現在、阪本は既存顧客を担当。細くなったパイプを太くする役割を担う。長期的関係を見据え、「会社都合のごり押し営業はしないことを心掛けている」という。毎日持ち歩く鞄に、合計10cmはあろうかという資料の束を入れて持ち歩く。「顧客の質問にその場で答えられるよう資料を集めたら、この厚さになった」と阪本は笑う。

 資料を束ねるのは、前職で新入社員時に配布された17年前の革製バインダーだ。今も使い続ける理由は、「駆け出しのころ、上司から『約束なしで担当役員を訪ねても、会ってもらえる人間が本物の営業』と聞かされた。この言葉を忘れないためだ」と言う。「自分の場合、そういう顧客は5割にも満たない。6割以上になるよう努力を続けている」。それが阪本の目指す営業像だ。

=文中敬称略

阪本 隆司氏
日本オフィス・システム
東日本事業部 第一営業部チームリーダー
 1990年に桃山学院大学社会学部社会学科卒業後、日本オリベッティ(現ジェトロニクス)入社。オフコンやPCの営業に携わる。94年に退職して南米を放浪後、メキシコで中南米の文学を学ぶ。96年に日本オフィス・システム入社。10年の大阪勤務を経て、2007年に東日本事業部に異動。趣味は読書。特にミステリーが好き。