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岩城:インターネットが他のメディアと決定的に異なるのは、ユーザーとのきめ細かい双方向コミュニケーションができる点ですが、企業がホームページ(現在は企業サイトと言っていますが、敢えて昔風に・・)を持ち始めたころに、その点に着目し、そのための装置として会員制を採用した企業が多かったと思います。

 そこで、今回は現在100万人を越える会員を数え、ユーザーとの濃密な関係を築いている資生堂の中村さんにパートナーをお願いしました。

中村さん、こんにちは。中村さんは資生堂のWebサイトの会員制組織であるネット会員の運営をされていますが、その業務について差し支えない範囲でご説明いただけますか。

中村:岩城さん、こんにちは。私どもの仕事は、資生堂ウェブサイトの総括的な立場ということで、戦略や運営全般にかかわっています。

 商品に関するコンテンツはそれぞれ施策担当部門が別にありまして、そちらが制作、運営を行う体制になっているのですが、ご紹介いただいたように資生堂ネット会員組織に関しては、その運営を行うとともに、それら会員の方に楽しんでいただけるコンテンツの企画は私どものほうで行っております。

 また全国で開催される美容セミナーのネット会員の方々へのご案内も行っており、ネットとリアルと双方でお客さまに満足いただける仕組みづくりに取り組んでおります。

岩城:そうですか。かなり守備範囲が幅広い感じでお忙しそうですね。資生堂のウェブ会員制度にはどのような特徴があるか教えていただけますか。

中村:まず、冒頭に岩城さんにご説明いただきましたように現在100万人を超える会員登録をいただいているのですが、基本的に私どもは会員のみなさまを一方的に情報発信の対象として見ているわけではなく、資生堂ウェブサイトで得た情報をもとに、より美しくなっていただき満足度を高めていただき、その結果資生堂に対して貴重なご意見をいただくことができる相互関係を作って行きたいとの思いが強くあります。

 その具体的な例として、インターネットモニター制度があります。これは毎年、ネット会員の中から約1万名の方を選ばせていただき、さまざまな資生堂ウェブサイトの活動に参加していただくというもので、ここから貴重なご意見をいただける仕組みができています。
http://www.shiseido.co.jp/i-monitor/html/

岩城:なるほど、単なる情報提供のための会員制ではなく、資生堂の活動に参加していただくための仕組みでもあるわけですね。会員数が100万人を超えたそうですが、ケータイやコマースなどのサービスなど以外では、企業の会員制としてはたいへん大きい組織ではないかと思います。

 会員が増えているということはユーザーにとってメリットがあるからに他なりませんが、それはどういうメリットだとお考えですか。

中村:正直言いまして、プレゼント施策に応募したいので会員になるという方も多くいらっしゃるとは思います。もちろんそれも重要な動機であり、我々の望むところではありますが、もっと資生堂の商品について知りたい、資生堂について知りたいという気持ち。またお客さま自身が美しくなるための情報がほしいというお気持ちの表れではないかと思います。

 また「資生堂に伝えたい」という我々にとって最もありがたいお気持ちを持った方も多くいらっしゃるということは、インターネットモニター会員になってくださるということからも分かるかと思います。このようなお客さまとの関係深化を図りたいという私どもの考えにご理解をいただけているのではないかと思っております。

岩城:ただ企業が作る商品を買うだけに留まらず、より積極的に企業活動に影響を及ぼしたいユーザーが多いということなのでしょうか。

 ところで、資生堂に限ったことではありませんが、どの企業もマスメディアに始まり、いろいろな手段によって顧客とのコミュニケーションを図ります。その中で企業サイトの会員制というのは他の方法に比べて企業としてどのようなメリットがあると考えていますか。

中村 均氏
中村 均氏

中村:先ほど申しましたインターネットモニター会員に代表されると思いますが、一言で言えば、ユーザーのことが分かるということだと思います。近年ではマスメディアだけでなく、ウェブサイトも多くの方に情報を伝える強大な力を持っていますが、そういう使い方だけではその個々のお客さまのご意見を聞くことはできません。また、その方がどういう方で、おっしゃるご意見の背景としてどのようなものがあるのかといったことも分かりません。

 企業にとって有益なご意見をいただけたとしても、会員というつながりが無ければ、その背景を知ることはできません。これからの企業活動、特に弊社のようなお客さまの生活に密接な商品を扱う企業にとって、お客さま一人ひとりとコミュニケーションをとることがますます重要になってきていると思います。

岩城:顔が見えるコミュニケーションということですね。企業サイトの会員制の最大の特徴は、企業のファンづくりができるということではないか、と思いますが、資生堂のオンライン会員制が御社のファンづくりなどに役に立っているという実感はありますか。また、それはどのようなことで感じられますか。

中村:はい、いろいろな場面で感じることはありますが、特に厳しいご意見をいただくとき、本当に喜んでいただいていると実感できるお声をいただいたとき、両極端ではありますが、ともに資生堂に対する想いがこめられているということが感じられ、ファンでいてくださるとの思いを強く感じます。

 これは、私どもが販売施策や広報に関わる部門に所属しているのではなく、お客さまから直接クレームやご相談をお受けするコールセンター機能を持つ「お客さまセンター」という部門にいることでより強く実感できています。

岩城:お客さまのご意見を企業活動に反映した事例があれば、差し支えない範囲で教えていただけますか。

中村:商品の発売後に、お客さまからお申し出いただいた商品に対するご意見、評価についても、一つひとつを真摯に受け止め、商品改良のためのヒントとして情報を収集、蓄積しています。

 これらの情報を関連部門に提供し、共有化を図ることでお客さまに真にご満足いただける安全で優れた商品づくりへと活用しています。
http://www.shiseido.co.jp/customer/info/koe.htm

岩城:会員制というのは囲い込みには有効だが、一方で新しい顧客獲得などにはいまひとつ機能しにくいような印象も受けます。しかし、資生堂の会員制は成長を続けています。その秘訣は何でしょうか。

中村:ネットとリアルの連携が功を奏しているのではないかと思います。ウェブサイトとともに私どもが運営するものとして「ビューティーアップセミナー」という美容セミナーがございます。これは、お客さまに正しい化粧品の使用方法をお伝えすることや新商品のご紹介などを目的に年間4,000回以上全国の事業所で行われているもので、その中でもっともお客さまの参加が多いのが、全国で一斉に開催されるネット会員を対象に参加者を募集するセミナーです。

 資生堂ウェブサイトで商品情報を得て、さらにその使用方法やお化粧の基礎知識を実際に体験していただける。そしてお店に足を運んでいただければさらにお客さまお一人おひとりに合せたアドバイスが得られる。このビジネスモデル全体で会員制度も成長ができているのだと考えています。
http://www.shiseido.co.jp/bs/

岩城:なるほど、リアルとの組み合わせが奏効しているわけですね。最近はWeb2.0にユーザーが慣れてきて、ブログやSNSなどで、個人が発信したり、ユーザー同士が情報交換するなど、アクティブに活動する傾向が強くなってきています。

 そのような環境の中では、企業からの一方的なコミュニケーションだけでは物足りなく感じるようなユーザーもいるのではないかと推測しますが、会員相互のコミュニケーションを促進し、何か新しいシナジーを生み出すような試みは行っていますか。

中村:インターネットモニター会員の方々に、製品開発や施策企画部門の担当者が直接アンケートを行うしくみや、ネット上でアバターによるグループインタービューを行うなどの仕組みはすでに活用しています。これらは、お客さまにとっても、ご自身の意見を資生堂の商品開発に生かす場であるということを認識され、評価していただいています。

 またそのほかにもいろいろ計画をしているところです。07年度の我々の部門(お客さまセンター)の活動のコンセプトのひとつに「お客さまとの関係深化」ということを謳っています。単にセッション数の向上や、世の中のランキングに左右されるのではなく、資生堂ウェブサイトがお客さまと資生堂を如何につなぐ媒体になるのか(もちろん双方向ということです)ということは毎日模索しています。

岩城:企業の自社サイトをフルに活用して顧客とのコミュニケーションを行っている資生堂ですが、手間が掛かる自社サイトの運営に社員の方々が意識を持って強くコミットされている印象を受けます。

 また、伝統的に新しいメディアに積極的に取り組む姿勢をお持ちの企業ですので、今後の取り組みに注目したいと思います。

 中村さん、ありがとうございました。

中村:ありがとうございました。

中村 均 Hitoshi Nakamura
(株)資生堂 お客さまセンター Web企画推進グループリーダー

パイオニア(株)デザイン室を経て、90年に(株)資生堂入社。宣伝部でデザインシステム開発、EC実験を担当の後お客さまセンターに異動。コールセンターや店頭に寄せられるお客さまの声を収集、解析するシステム「ボイスネットC」の開発、運用全般を担当。07年4月よりWeb企画推進グループで、お客さまとのダイレクトコミュニケーションを推進。