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 ウサギとカメが競走した。序盤でカメを大きく引き離したウサギは,慢心して昼寝をしてしまった。その間,カメは地道に歩き続けて先にゴールイン。めでたしめでたし。

 ご存じ,イソップ童話の一つ「ウサギとカメ」です。たとえ歩みは遅くても,地道に努力し続ける者は報われる,というお話です。しかし,この教訓にはちょっと異議があります。カメのように休息をとらずに頑張り続けては,いずれ限界が来るはず。仮に,再試合やゴールの延長をすることになったらどうでしょう。カメはくたびれて動けず,昼寝で十分に休息をとったウサギの圧勝です。

「要領の悪さ」で世界に冠たる日本人

 こんなふうにカメよりもウサギを肯定した解釈をすると,違和感を覚える人が多いと思います。なにせ,日本人の国民性と言えば「勤勉さ」です。ながらく勤勉さが日本人の美徳とされてきました。

 一方で,こんな調査結果があるのをご存じでしょうか。日本の労働生産性は,OECD加盟30カ国中第19位(社会生産性本部の2004年度の調査)。主要先進7カ国では最下位です。つまり日本人は勤勉な半面,「要領が悪い」という見方もできるのです。

 勤勉さこそが職場における美徳とされた時代は,もはや過去のことでしょう。成果主義に基づく人事評価が広がっています。ITの職場では,その傾向が顕著です。この成果主義に対応するには,これまでの労働文化から脱却する集中力と要領が必要です。

 そして要領よく働き,十分な睡眠時間を確保することが,次の日の生産性を高めるのです。逆に,勤勉であっても要領が悪ければ,十分な睡眠時間を確保できず,次の日の生産性が下がり,さらに睡眠時間が減るという悪循環に陥ります。

要領よく働くための原則を意識しよう

 私が考える「要領よく働くための原則」をお伝えしましょう。

1.仕事について常に問題意識を持つこと

2.視野を広く持つこと

3.好奇心を持ち,活動的であること

 1の「仕事について常に問題意識を持つこと」によって,要領をよくする対象の業務が定まります。そして2の「視野を広く持つこと」が,要領をよくする方策を考えるうえで重要になり,3の「好奇心を持ち,活動的であること」が,方策を実行に移す原動力になります。

 勤勉さが大事なことは言うまでもありませんが,度が過ぎると体を壊すことにつながります。医師という立場から,ITエンジニアのみなさんには要領よく仕事をして十分な睡眠を取ってもらいたい,と心から願っています。

 次回は,夜の寝付きの悪さへの対策についてお話しします。

田村 康二(たむら こうじ)
立川メディカルセンター(新潟県・長岡市)常勤顧問 田村 康二氏 医師,医学博士。立川メディカルセンター(新潟県・長岡市)常勤顧問。内科,循環器病,時間医学などが専門で,著書に「生体リズム健康法」(文藝春秋社),「健康安心ノート」(和泉書房)などがある