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 もう少し長期的な視点に立てば,オープン型と従来型という垣根はなくなっていくと見る向きが多い。「取り巻く環境が,従来型の端末がオープンに近付くことを迫る」(ACCESSの鎌田富久副社長兼CTO)からだ。考えられる環境の変化は二つある。

 一つはオープン端末の攻勢による既存端末の相対的な魅力低下だ。今後開発者はオープン端末に対して,こぞって魅力的なアプリケーションを提供してくると予想される。新しいアプリケーションによって端末の魅力に磨きがかかり,一方の既存端末は陳腐化していく。

 そうしたアプリケーションの代表例がWebブラウザだ。現在,携帯電話に搭載されているWebブラウザはパソコンのものに比べて制限されている。例えば,新しい動画再生のコーデックが登場してきてもすぐに対応できない。オープンな端末なら,サードパーティがコーデックを配布して新しいサービスに即座に対応できる可能性が高まる。

 この状況になったとき,既存の端末で新しいアプリケーションが使えなければ,ユーザーからの不満は高まっていくだろう。オープンな端末に乗り替えるユーザーも出てくる。つまり,既存の端末にユーザーをとどめるために,オープン化をせざるを得なくなくなるわけだ。

保有長期化でアプリ更新が必須に

 もう一つは携帯電話の新販売モデル導入による更改期間の長期化による影響だ。NTTドコモとKDDIは2007年冬商戦から,月額料金に含んでいた端末の料金をユーザーに明示することを決めた。この結果,見かけ上の端末価格が上がった。例えば,NTTドコモの905iシリーズでは,端末に6万円程度の値付けがされている。端末価格が上がれば,当然,消費者は買い替えを控えるようになる。

 これまで携帯電話事業者は新サービスを始めるとき,それを利用するためのアプリケーションを最新型モデルに搭載してきた。しかし,買い替えのサイクルが長くなれば,端末の買い替えが進まなくなり,必然的に新サービスの普及に時間がかかってしまう。これを回避するためには「新サービスに使うアプリケーションを配布できるようにするしかない」(ACCESSの鎌田副社長)というわけだ。

オープン化に立ちはだかる二つの壁

 とはいえ,既存の携帯電話端末をすぐにオープン化するのは,安定稼働とセキュリティという二つの技術的な壁を超えなければならない。

 安定稼働の面では,アプリケーションを野放図にインストールされてしまうと,携帯電話のコア・システムに影響が及び,最悪の場合,最も重要な機能である電話も使えない事態を招く。「携帯電話はこれまでオープンを想定した作りにしてこなかったので,自由な状態にすると,アプリケーションの競合が発生してしまう」(ACCESSの鎌田副社長)。準備が整わないうちに開放すれば,混乱するのは目に見えている。

 セキュリティへの懸念は,ウイルスのまん延である。「携帯電話の中にパソコン以上に個人情報が満載されていることを考えれば,今後は主要な攻撃対象になるのは必至」(ラック コンピュータセキュリティ研究所の岩井博樹所長)。

 パソコンの状況を見る限り,ウイルス作者は金になる情報を盗むことを第1の目的としている。電子メールや電話番号などはもちろん,おサイフケータイやクレジットカードなど金銭的な情報が携帯電話に入っていることを考えれば,事態はパソコンよりも深刻になる。

 携帯電話事業者は,この時代を見越した技術開発を水面下で始めている。NTTドコモの三木常務理事は「一つの端末で,通信端末や決済端末としての基本機能を確実に動作させながら,自由なアプリケーションが動作する仕組みの研究を進めている」と語る。オープン化する時代には,そうした問題がすべて解決された携帯電話が登場してくるだろう(図1)。

図1●理想の携帯電話環境
図1●理想の携帯電話環境
アプリケーションのインストール,機能強化,ハードウエアの着脱などが簡単にできるうえ,不正なプログラムのインストールは排除される。

システム担当者は選択眼を養え

 携帯電話の機能をアプリケーションで自由にカスタマイズできる時代の到来は,企業ユーザーにとってはチャンスとなる。携帯電話を企業のシステムにつながる端末として,積極的に活用できるようになるからだ。

 企業のシステム担当者には,今後登場するさまざまな携帯電話のプラットフォームに対して選択眼が求められるようになってくる。携帯電話を活用するシステムを作っても,そのベースとなる技術が早々に廃れてしまっては,システムの継承で問題が生じてしまうからだ。

 今後激しい変化が起こる携帯電話の世界で,どのようなハードウエアやソフトウエアが主流となっていくのか,情報を収集し,間違いのない技術を採用していく必要がある。