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 欧州には環境先進国が多いというイメージがある。自然エネルギーの利用を推進しているデンマーク,公共交通の整備で名高いドイツの環境都市フライブルクなどの取り組みが,メディアでよく取り上げられるからかもしれない。確かに,政府や自治体が主導する環境政策では,欧州の国々に優れた取り組みが多そうだ。しかし,企業の環境対策に限って言えば,日本の方が欧米よりも進んでいるようだ。

 米系のコンサルティング会社であるベリングポイントは2月末,「グリーンサプライチェーングローバル調査」の結果を公表した。日米欧の主要企業約5000社を対象に2007年に調査を実施,601社から回答を得たという。

 その結果,日米欧の環境対策への取り組み姿勢の違いが明らかになった。「事業戦略の立案時に環境問題を考慮しているか」という質問に対し,「考慮している」と回答した企業は,日欧米のいずれも8割~9割と多かった。それにもかかわらず,「実際に環境対策を実施している」という回答は,日本が93%だったのに対し,欧米企業は,英国が39%,フランスが23%,米国に至っては19%に過ぎなかった(図1)。「環境対策を考えるが,実行しない」という言行不一致が,多くの欧米企業の実態なのだ。

図1●欧米企業の環境対策は言行不一致
ベリングポイントが2007年に実施した「グリーンサプライチェーングローバル調査」では,日欧米の主要企業601社から環境対策への取り組み状況について回答を得た。左の青い棒グラフが「事業戦略の立案時に環境問題を考慮している」と回答した企業の比率。右の赤い棒グラフが「実際に環境対策を実施している」と回答した企業の比率。日本企業は「立案」も「実施」も93%だったが,欧米企業は「立案」は8割前後と高いものの,「実施」は2割~4割と低い
 

 ただし今回の調査では,回答企業のプロフィールを若干考慮する必要がある。日本では売上高10億ドル以上の大企業が85%を占めたのに対し,欧米では5億ドル以下の中堅・中小企業が約半数を占めた。規模が小さい企業の方が,大企業よりも環境対策が遅れている傾向は日本にもある。

 だが,大企業であれば熱心なのかと言えば,必ずしもそうでもない。売上高10億ドル以上の大企業で,「実際に環境対策を実施している」と回答した比率(日米欧全体)は47%。日本の93%がいかに突出しているかがわかる。

 「日本企業の多くは10年ほど前から環境対策の専門部署を設置し,組織的に取り組んできた。日本の環境対策が世界のトップレベルにあることはまちがいない」とベリングポイントの濱昭夫シニアマネージャーは評する。

 有害物質の使用を制限するRoHS指令など,EU発の環境規制は多い。欧米市場に製品を送りだしている日本の製造業は,規制が敷かれるたびにその対応を余儀なくされている。欧州企業の環境対策が遅れているという,今回の調査結果を見るに付け,どうも割に合わない気がするのは筆者だけだろうか。

欧米では「物流」の環境対策が先行

 今回のベリングポイントの調査では,「製品設計」「調達」「製造」「物流」「回収・リサイクル」というサプライチェーンの各プロセスごとに,環境対策の取り組み状況を聞いている(図2)。

図2●欧米では「物流」の環境対策が先行
ベリングポイントの調査では,「製品設計」「調達」「製造」「物流」「回収・リサイクル」というサプライチェーンの各プロセスごとに,環境対策の取り組み状況を聞いた。国境を越えてモノを輸送することが多いEUでは,物流の効率化が以前から課題だった。これに対して日本は,まず「製造」部門の取り組みが先行し,「設計」や「調達」,「物流」へと拡がってきた

 日米欧全体で見ると,環境対策が最も進んでいるのは「物流」(81%)であることがわかる。従来,EUでは国境を越えてモノを輸送する場合,国ごとに伝票を作成する必要があるなど手間がかかり,物流の効率化が大きな課題になっていた。

 「欧州や北米の流通経路は長く,トラック輸送が主体。ここにきて燃料価格の高騰が要因となり,物流会社の再編・統合に拍車がかかっている」という濱氏は,最近のEUの動きに注目する。「京都議定書の約束期間が始まることもあって,大手企業が中心となって取引先に環境取り組みを厳しく求めるようになっている」。

 欧米企業の環境対策が「物流」部門で先行しているのに対し,日本企業はまず「製造」部門の取り組みが先行し,「設計」や「調達」,「物流」へと拡がってきた。意外に遅れているのが「回収・リサイクル」の対策だ。「欧米は消費者主導の傾向が強いので,企業イメージの向上のために,使用済み製品の回収やリサイクルに積極的だ。これに対し日本は,ものづくり主導の傾向が強く,リサイクルよりも省資源設計を重視する」(濱氏)。

 「物流」の環境対策は,日本企業について言えば「製造」の環境対策よりも出遅れていた。しかし,ここ数年,積極的な取り組みが見られるようになっている。次にその事例を紹介する。