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 前回は階層化ストレージの一つの要件として,「1.ストレージのコスト削減と大容量化の両立」について説明した。後編では「2.係争や訴訟対応などを目的としたデータの超長期保存」「3.処理性能を犠牲にしないストレージの大容量化」という二つの要件を満たす階層化ストレージについて説明する。

要件2.データの超長期保存要件への対応

 係争や訴訟で必要となるような場合をはじめ,ある種のデータは10年以上の長期間にわたりデータを保存しておくことが必要なこともある。アーカイブ用ストレージをさらに階層化し,このようなデータはテープに書き出してアーカイブ用のディスクから削除するほうがよいだろう。

 こうすることでアーカイブ用ディスクが無限に増えていくことに歯止めをかけることができる。ディスクが低コスト化しているとはいえビット単価では一般的にテープの方が安く,また,昨今注目が集まっている“グリーンIT”という観点でもビット単位の消費電力が少ないテープが有利である。もちろん消費電力が少ないということは発熱が少ないということでもあり,冷却コストの削減という点からもランニング・コストの削減に貢献する。

 加えて,データをテープに移動しアーカイブ用のディスクから削除することで,アーカイブ・データのバックアップ負荷も下げることができる。アーカイブされたデータは業務サーバー上からは削除されているので,アーカイブ・データのバックアップは必須である。このバックアップ処理がアーカイブのデータ量増加に伴い負担になりバックアップのコスト増を引き起こしてしまう。

 業務サーバー上のデータをテープにバックアップし,その後データを業務サーバー上から削除してこのテープを長期保管することもできる。だが,この場合にはテープ上のデータにアクセスするにはファイル名やフォルダ,日付,作成者といった属性情報のみでデータを検索してリストアしなければならない。一方,アーカイブ・データをテープに移動する場合,アーカイブ・システムにより検索用のインデックスが作成されているので,属性情報に加えてファイルの内容によっても検索できるのがメリットである。

 テープに移動したデータへのアクセスを行う場合には,アーカイブ用のディスク上,あるいは別の作業用領域にデータをリストアするというステップが追加される。アーカイブ用のディスク上に残っているデータのアクセスが数秒から分の単位であるとすると,テープに移動したアーカイブ・データへのアクセスは数分から十数分くらいとなる。この点を考慮したポリシー設計が必要である。

要件3.処理性能を犠牲にしないストレージの大容量化

 これまで述べてきたアーカイブは業務サーバーとは別のアーカイブ・システム上にデータを移動することで,データの圧縮やシングル・インスタンス化,重複データ排除などを行い,より大容量のデータをより低コストで保存する方法であった。その方法とは逆に,業務サーバー上のファイル・システムで複数階層のストレージを構成するということも実現可能になってきている。

 アーカイブ・システムの導入により業務サーバー上のデータを削減するメリットは大きいが,アーカイブされたデータへアクセスする際には処理時間が若干長くなることは避けられない。そういった問題を最小にしつつ,かつ,低コスト・ストレージを使ってもデータ容量の増加とコスト削減を両立する必要がある場合には,3番目の方法を採用することになる。

 3番目の方法とは,業務サーバー上でファイル・システムの階層化を行うことだ。この場合,複数の階層をユーザーに見せて管理する方法と,ユーザーに意識させずにポリシーを策定して,自動的に複数階層間でデータを移動する方法がある。

 複数階層をユーザーに見せて管理する場合,フォルダ階層をどのように構成するかに悩むことになる(ただでさえファイル・システム上のフォルダ構成は悩みの尽きないところだ)。

 一方,階層をユーザーに意識させずポリシーに基づいて自動的に複数ストレージ間でデータを移動させる場合,従来通りのフォルダ構成や利用形態のまま階層化ストレージを構成することが可能である。半面,ユーザーからはデータが低速ストレージに移動したかどうかを判断しづらい。

 また,一般的に高性能ストレージは可用性も高く,低速なストレージは低価格な分,可用性も低く設計されていることも多い。両方のストレージ装置を使用し一つのファイル・システムとする場合,可用性の低いストレージ側の障害により業務サーバー全体が停止することがないような仕組み・構成とすることが重要である。

その他:メモリーによる外部ストレージの実装

 これまでの話ではストレージ装置と言えば,ハードディスクを利用したRAIDシステムを指すことが暗黙の了解であった。ハードディスクは記憶容量の劇的な増加に比べ,アクセス速度の向上が少なく,システム全体の性能を下げる要因にもなってきている。一方で半導体製造技術の進化により大容量のメモリー・デバイスが低価格化し,それを利用したストレージ・システムが実装できるようになってきている。

 一つの例はDRAM(あるいはSRAM)を記憶デバイスとして利用するタイプである。DRAMやSRAMは電源断によりデータが消えてしまうため,停電対策としてUPSとハードディスクを備えたものもある。通常動作時はメモリーによる高速アクセスを行い,外部電源断を検出すると自動的にデータをハードディスクに退避しシャットダウンするというものである。

 もうひとつはフラッシュメモリを使用するものである。フラッシュメモリは電源断でデータが消えない(不揮発性)という特性があるが書き換え回数に上限があるというデメリットもあった。このデメリットがコントローラの改善等により緩和されてきていることでデータ・ストレージとしての利用も可能になってきている。

 いずれの実装方法にしても従来のハードディスクをベースにしたストレージ・システムでは実現できない高速なアクセスが可能なので,高性能ストレージの領域は徐々にメモリー・デバイスに置き換わっていくと思われる。このような装置を使用することでストレージの階層数を増やすことができるようになるが,冒頭にあげたさまざまな要因を総合し,どのような技術・構成が望ましいかを検討するのがストレージ・アーキテクチャ上重要なのは変わらないことである。


成田 雅和(なりた まさかず)
シマンテック グローバルコンサルティングサービス ジャパン ソリューションサービス部 マネージャ
国内系製品開発メーカーにて,コンピュータ開発支援装置などの製品開発を担当する傍ら,海外関連事業にも携わる。その後、国内系SI会社において,関連会社であるデータセンター事業者が提供するデータセンターおよびストレージサービス,オンライン証券システム,デジタルコンテンツ販売システムなど,100以上のシステムの設計,構築,サービスインを担当。また,自社のISMS取得やプライバシーマーク取得プロジェクトにも参画。その後,2005年にベリタスソフトウェアに入社し,合併に伴うシマンテックへの移籍後,金融,製造,製薬業界のバックアップのソリューションの刷新,災害復旧(ディザスタリカバリ)やアーカイブシステムの構築を担当。現在は,コンサルティングサービスのソリューションサービス部のマネージャとして,シマンテック製品の導入に関するコンサルティングを担当している。