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 「当社の開発センターは“ソフト工場”を目指している」。中国・山東省にある青島でオフショア開発を展開する軟脳離岸資源(青島)有限公司の張徳評総経理は、開発工程にカンバン方式を導入した理由をこう説明する。

 軟脳離岸資源はソフトブレーンなどが出資するソフトブレーン・オフショアの中国法人。2005年12月に設立され、社員数は約100人だ。同社の技術者は出社すると、まずはプロジェクトリーダーから1日の作業書を受け取り順次、作業をこなす。

 毎日の作業の細かい指示だけでなく、「高」から「低」といったタスクの優先順位も示している。1日にどこまで作業が進んだのかについて作業記録が残るので、タスクごとの品質評価も分かる。これらは人事評価にもつながる。

 技術者にとっては1日の仕事が明確になり、勤務時間通りに帰宅できることが多くなるという。残業する場合は、総経理の承認が必要になる。

 一方、高い能力を求められるリーダーは、部下ごとの作業書を当日の9時30分までに作成する。時間単位で進捗を管理し、開発スケジュールに加えてコストの予算対実績の管理も可能だ。

 「ある仕事が遅れるようなら、すぐに別の技術者にも割り振る、といった調整ができるようになった。製造ラインと同じように、QCD(品質、コスト、納期)やセキュリティという考え方も重視している」(張氏)。

 初年度は赤字だった軟脳離岸資源だが、こうした施策が功奏したことで、2年目には早くも黒字化できたという。

 開発プロセスの標準化には、品質管理が容易になるという利点もある。社内の品質管理部門がテストや不具合など五つの項目でチェック。問題が発生すると担当のリーダーに原因究明を求め、解決を早急に図る。「リーダーがカンバン方式に沿った手順でプロジェクトを進めているかどうか」なども含め、品質は常にチェック。「品質に問題があれば、その日に解決する」(張氏)ほどで、品質管理部門は張氏にプロジェクト1件ごとの進捗状況をメールで送っている。

 日本側であらかじめ設計され、軟脳離岸資源には開発だけを委託するといったコーディング中心の色彩が強いことも、カンバン方式を取り入れやすかった要因のようだ。

 カンバン方式を推進したことで、07年11月には米カーネギーメロン大学ソフトウエア工学研究所が考案したプロセス改善の度合いを示す、CMMI(能力成熟度モデル統合)のレベル3を取得した。同社が本社を置く青島ソフトパークが、ソフト産業育成の一環からCMMI取得を推奨するなど資金を含めて助成した。

 「ソフト学習の基地」という役割を担っている青島ソフトパークは、山東省にある近隣大学と提携し、IT系学生がソフトパーク内で実践的な講義を受けられ仕組みも作り上げている。軟脳離岸資源も07年11月に青島大学と合意し、IT訓練専門学校を開設した。

 ここでは基礎知識、実践、日本語教育の三つのSE教育コースを用意し、3カ月のインターンシップと入社3カ月の教育で、即戦力化できる力を養う。日本語のレベルは会話ではなく仕様書の理解度で、同社は給与の10%を日本語の能力で決めるそうだ。

 大連や上海、北京などの大都市に比べて青島の人件費は2~3割安いものの、その差は次第に小さくなる可能性が高い。コストを含めて中国の国内競争に打ち勝つには、品質と生産性を高めることが必須になる。このためにはカンバン方式が有効に働く。軟脳離岸資源がカンバン方式に注目したのは、今後の市場獲得を見据えたからだろう。

 日本のソフト産業が導入に躊躇するソフト開発の工業化を、いち早く取り入れた軟脳離岸資源。ソフトブレーンの関連会社であるものの、同社の試みは日本企業にも参考になる点があるはずだ。