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●小型化と低価格化にこだわりシミュレーションを何度も繰り返す
●日米の時差に苦しみながらも、電話会議で情報共有を徹底
●NECとEMCの得意技を融合して、使い勝手を向上

 NECの「iStorage E1」とEMCジャパンの「CLARiX AX4」の中身は全く同じもの。両社の共同開発製品だからだ。

 最大の特徴は、「安さと使い勝手の良さだ」とNECの鈴木主税第一コンピュータ事業本部システムストレージ事業部長代理は言い切る。価格は最小構成で80万円台である。ストレージの扱いに慣れていないユーザー企業のシステム担当者でも保守できるような、使い勝手の良い製品にすることを目指した()。

図● NECと米EMCが共同開発したストレージ装置の特徴
図● NECと米EMCが共同開発したストレージ装置の特徴

 さらにNECとEMCは新製品を、異なるベンダーのストレージ間でデータをやり取りできる国際標準仕様である「SBB」(Storage Bridge Bay)に準拠させることも狙った。

小型化とコストのはざまで奮闘

 共同開発の役割は、両社の得意分野に応じて決めた。大きく分けるとNECはハード、EMCはソフトの開発を担当した。

 安価な製品を開発するには、「低価格で調達できる既存部品を流用するのが得策だ」(EMCジャパンの古谷幹則執行役員NECアライアンス担当)。そこでEMCの既存ストレージ製品「CXシリーズ」をベースとすることに決めた。

 CXシリーズは、プロセサやメモリーなど安価に手に入るさまざまな種類の部品を集めて作られていたからだ。CXシリーズを基に、SBBという新たな仕様に準拠させる。この作業に開発担当者は苦労したという。

 SBB準拠を実現するには、規格に合わせたきょう体サイズに従わなければならない。このためには、ストレージ装置の中核ともいえるコントローラーの基板サイズを、CXシリーズの半分以下にする必要があった。

鈴木主税● NECの第一コンピュータ事業本部システムストレージ事業部長代理
鈴木主税● NECの第一コンピュータ事業本部システムストレージ事業部長代理

 小型化するには、コントローラーを構成する部品点数を抑えなければならない。NECを中心とするハードウエア開発チームは、この作業に苦労したという。CXシリーズで実装していた部品のうち、「コンデンサーや抵抗器などさほど重要でないと思える部品を省いてしまうと、処理性能が出ない」との問題にぶつかった。

 基板を多層化すれば処理能力の低下を防げるものの、今度は製造コストが高くなる。安価にするという“宿題”を片付けられなくなってしまう。

 処理性能を向上させるため、NECの開発担当者は、部品の配置や部品同士を接続する配線のパターンを何通りも模索した。「処理性能の高まる配線パターンを見つけることができたと思ったら、部品の配置がまずいため、今度は発熱量が膨大になるといった問題にぶつかった」。NECの鈴木事業部長代理は振り返る。

 処理性能と放熱対策といった二つの課題をクリアする最適な配線パターンを決める。このために配線パターンをシミュレーションする市販ソフトを駆使した。

試作機を4~5回作り直す羽目に

古谷幹則● EMCジャパンの執行役員NECアライアンス担当
古谷幹則● EMCジャパンの執行役員NECアライアンス担当

 NECの開発担当者は、シミュレーション結果を報告するため、頻繁にEMCの開発チームと電話会議で議論した。日米で約12時間の時差があるため、電話会議のスタート時間は、朝8時か夜22時と決めていた。NECの開発担当者は会議後に一仕事すると、午前4時過ぎの朝帰りになることも少なくなかったという。

 それでもNECは、EMCとの電話会議を重視した。「しつこいぐらいに情報共有を徹底しておかないと、手戻りが発生してしまう」(NECの鈴木事業部長代理)との危機感があったからである。

 週2~3回の電話会議では、物理的な距離を縮めることは難しかった。「試作機は1回しか作らない」。当初はこう予定していたが結局、NECの技術者は試作機を作っては米国へ出張し、EMCの開発チームとハードウエアの仕様を固めていった。最終的に試作機を4~5回ほど作り直し、製品仕様を期限ギリギリまで詰めた。

 特に使い勝手に関する部分では、試作機を作ってみて初めて気付くことも多かったという。例えば、電源ユニットを交換する際に手を引っ掛けるレバーの形状だ。当初の設計のままでは、欧米人の大きな手では、レバーをつかめないことが分かった。

 部品点数は減らせたものの、80万円という価格にするには、もう一段のコスト削減が必要だった。そこで生産コストを抑えるため、海外拠点で生産することに決める。その後、予定通り2008年1月の出荷にこぎつけた。