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 2008年3月31日,いよいよNTT東西地域会社のNGN商用サービスがスタートした。

 NGNの光ブロードバンド接続サービスの名称は「フレッツ光ネクスト」に決まり,フレッツ系サービスの後継という位置付けを色濃く反映したものとなった。企業ユーザーなどからは,「サービス内容に目新しさがない」という批判は少なくない。それでも,新たに構築したNGN網は,今後長きにわたり多くの通信サービスを支える屋台骨になる。将来の企業ネットワークを考えれば,利用を避けては通れない。

 スタート時点では,加入電話を代替するIP電話のほか,インターネット・アクセス,映像配信,VPNといったサービスが提供される。NGNは,これらのサービスを統合的な一つのインフラで実現する。このインフラには,「強固なセキュリティ」や「セッション単位のQoS(quality of service)」といった,従来のネットワークにはなかった新しい機能が盛り込まれている。こうした機能を利用することで,今まで見られなかった新しいタイプのアプリケーション・サービスが登場するはずだ。

 だが,単に“セキュリティ”や“QoS”と言っても,従来のネットワークと何が違うのかは見えてこない。そうした機能によるNGNのサービスを理解するには,どのような構成要素で成り立っていて,どう働くのかを知る必要がある。

 そこで今回の特集では,これまであまり取り上げられなかったNGNのインフラに技術的な側面から焦点を当てる。以降の内容は,いくつかのテーマごとにまとめてある。初めにインフラの全体像,ベースとなる標準アーキテクチャと主な機能,それらを実現する具体的な製品例を取り上げる。続いて,NGN商用サービスのキーとなる技術について解説する。今回取り上げるのは,特に重要な「回線認証」と「帯域確保型通信」──の二つだ。

 NTT東西のNGN商用サービスは,大きく分けると次の3タイプに分けられる。(1)現行のフレッツ系と同等のサービス,(2)NGNならではの広帯域・高品質通信サービス,(3)新しいタイプのアプリケーション・サービスである。

 これらのサービスはNGNの様々な技術によって実現される。中でも重要なのが,(1)回線認証,(2)帯域確保型通信,(3)ISP接続,(4)IPマルチキャスト──の4種類だ(図1)。

図1●NGNのサービスを支える基本技術
図1●NGNのサービスを支える基本技術
NGN東西地域会社のNGN商用サービスは,これら4技術で実現されている。
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 例えば,回線認証はNGNのセキュリティの要となる技術で,(1)~(3)のすべてに必要となる。さらに,パスワードなどのユーザー認証と組み合わせることで,新しいサービスを作り出すことも可能だ。帯域確保型通信は,IP電話や映像配信の通信品質を保つために欠かせない。

 そして,ISP接続はNGNをインターネットへのアクセス回線として使う技術で,ユーザーをISP(インターネット接続事業者)につなぐ。IPマルチキャストは,IP再送信などの放送型映像配信の中心となる技術である。

 NGNそのものは,IPベースの巨大なルーターEネットワークだが,(1)~(4)の技術を採用して新たなサービスを提供する点で,従来の通信サービスとは一線を画す。

ルーターとサーバーで構築したIP網

 NGN網の構成要素は,ルーター・ネットワークを構成する2種類のルーターと,サービスや制御を受け持つサーバー群である(図2)。

図2●NGN商用サービスを実現するネットワークの構成
図2●NGN商用サービスを実現するネットワークの構成
公表された資料や標準規格,取材で得た情報などに基づいて本誌が推定した。基本的な構成は,2007年に実施されたNGNフィールドトライアルのネットワークと大きくは変わらない。
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 2種類のルーターとは,NGN網のバックボーンを構成する「コア・ルーター」と,NGNのエッジ部に置く「IPエッジ」である。

 コア・ルーターは,大量のIPパケットをさばけるように,高速・大容量という特徴を持つ。ISPのバックボーンや従来のフレッツ網の中核をなすルーターと同じだ。

 一方のIPエッジは,ISPやフレッツ網にはない,NGN独自の機能を持ったルーターである。NGN網のエッジ部に設置して,IPパケットの転送とその制御の両方の役割を担う。回線認証によるアクセス制御や通信ごとの動的な帯域管理など,NGNのサービスを実現する。

 伝送技術は,従来のフレッツやISPで使われている一般的な規格をそのまま踏襲している。アクセス部分はFTTHが前提である。NGN網内では,SONET/SDHDWDMといった高速光伝送技術が使われる。

 サーバー群は,約10種類のサーバーで構成される。最も重要なサーバーは「CSCFサーバー」である。このサーバーは,一般にIP電話でも使う呼制御プロトコルを利用した「SIPサーバー」の一種である。

 NGNでCSCFサーバーが重要なのは,NGN外部の端末との制御通信に,統一的にSIPを使うことになっているためである。外部との通信向けには,「UNI」,「NNI」,「SNI」という3種類のインタフェースが規定されている。それらを通した帯域確保のためのプロトコルは,SIPに統一している。その背景には,「普及していて,標準化が進んでいて,帯域確保のための機能を備えたプロトコルは,SIP以外に選択肢はなかった」(NTT技術企画部門 次世代ネットワーク推進室の雄川一彦ネットワーク戦略担当部長)ということがある。