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 MediaFLOの標準化や実用化を支援するFLOForumは,総務省の「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会」の第8回会合における一部の議論に対して,全面的な反論を展開し始めた。同懇談会は,2011年7月に予定される地上アナログ放送の終了に伴って空く周波数のうち,VHF帯の新たな用途と制度的な枠組みの検討を進めている。VHF帯ローバンドの18MHz幅と,同ハイバンドの14.5MHz幅が議論の対象である。このうちVHF帯ローバンドは地上デジタルラジオ放送やコミュニティー放送での利用が有力になっている。一方のVHF帯ハイバンドは携帯端末向けマルチメディア放送への利用の可能性が高く,MediaFLO陣営が周波数獲得を目指している周波数でもある。

 同フォーラムが反論しているのは,2008年2月18日に行われた第8回会合における周波数割り当てに関する議論である。事務局からマルチメディア放送に必要な周波数として,SFN構成を基本としながらも,「SFNでカバーできない地域を考慮し3チャネルあるいは4チャネルで全国をカバーする」というイメージが示された。加えて一部の委員からは,「全国をカバーするのに最低でも3チャンネル必要という前提に立つならば,MediaFLOなどの参入の余地がない」という趣旨の発言があった(日経ニューメディア2008年2月25日号に関連記事)。

 フォーラム側は,そもそも「SFNで全国をカバーできない」という仮定が,技術的に正しくないと強く主張する。SFNで全国をカバーする際の課題は,いわゆるSFN混信という現象が発生することである。OFDMには,ガードインターバルという許容遅延時間を示すパラメーターがある。SFN混信は,SFNでネットワークを構築したときに,ガードインターバルを越えて遠方の送信所から同じ周波数の信号が飛び込んでくるために発生する現象を指す。広い放送エリアを確保しようとする場合の手法の一つが,電波の出力を上げることである。しかし出力を大きくすると,エリア外の遠方にまで信号が届いてしまう。これを避ける簡単な方法が,同じ内容の番組送信するのに,必要に応じて異なる周波数を利用するというものである。ただし,全体で14.5MHz幅という制限があるため,仮に3チャンネルの周波数を組み合わせる形にすると,1チャンネルの周波数幅は5MHz弱となる。

 異なる周波数を利用すると,安価で比較的容易に全国をカバーできる。しかし,これはあくまで手段の一つであり,エリアを広げるには別の手段もある。出力を上げない代わりに,より多くの送信所を用意することである。こうした議論は,変調方式にOFDMを利用する放送技術に広く言えることで,ISDB-Tmmも同様である。SFNを実現できれば,14.5MHzをフルに利用でき,例えば6MHz幅ずつ2事業者に割り当てても,2.5MHz余る。フォーラムの主張とは異なるが,一つの事業者が14.5MHz幅を1チャンネル分として使い切るという選択肢も生まれる。

 ただし,SFNの課題は基地局数が増えるため,コストアップ要因になることである。逆の言い方をすれば,SFNによるカバーエリアは,ネットワークをどう構成するのか,そして整備にどれだけのコストをかけるか,にかかわる問題である。事業者にとっては,ネットワークにかかるコストが安価の方がよいのは当然だ。しかし,別の周波数を組み合わせるかは,本来SFN化にかかるコストアップの大きさに対する評価は必要だろう。

 懇談会の第8回会合においては,SFNだけで全国ネットワークを構築する場合のコストや,そもそも全国のどの範囲をエリアと考えるべきかという議論はほとんどなかった。「帯域が限られるなかでは,SFNで周波数を有効活用しようという事業者に,事業参入のチャンスを与えるべきではないか。貴重で利用できる周波数に限りがある以上,SFNが可能かどうかの技術についても徹底的に議論をつくすべき」(FLOForumの関係者)と主張する。

政府は技術中立性の立場を主張

 FLOForumは,こうした技術に関する議論ほかにも,懇談会の議論に対して様々な提案を行っている。「VHF帯をいわゆるテレビジョン放送以外に利用するという趣旨は,新たなプレーヤーによる新たなサービスなどの創出のはず」,「ビジネスを行うものが技術を選択する自由を持てるようにし,政府は技術中立性の立場をとることが望ましい」,「事業者間で競争する環境とするため,複数の事業者に割り当てることが望ましい」,「通信との連携は必須で,MediaFLOは通信との親和性が高い」などだ。こうした考えは,懇談会の関係者にも説明しているもようである。懇談会は,2008年5月をメドに報告書をとりまとめる予定である。終盤を迎えて,議論は一気にヒートアップしてきたようだ。