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 情報漏えい対策の強化が企業に求められる中,その一つの解となるシン・クライアントに対する企業の関心は高い。端末側に情報を持たせないシン・クライアントは,有効な対策となるからだ。

 ただ実際に運用中の企業は,まだ少数派。本誌が1月に実施した読者モニターへのアンケートでは,シン・クライアントを既に導入している企業は1割に満たなかった。導入予定の企業を加えても3割弱(図1)で,残り7割は「導入予定はない」と回答した。

図1●導入企業が語るシン・クライアントの真実
図1●導入企業が語るシン・クライアントの真実
シン・クライアントに関する様々な不安から導入に踏み切れない企業ユーザーの姿が浮かび上がった。実際に導入した企業によれば,このような不安の多くは払しょくされている。
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 とはいえ「導入予定はない」企業も,実はシン・クライアントに対する関心は高い。寄せられたコメントには,「どの方式を選べばよいのか迷う」,「導入コストがパソコンと比べて莫大」,「モバイルで使えないのでは」といった具体的な記述が多く,検討は進めたものの導入に踏み切れない様子がうかがえる。

 一方で,シン・クライアントを採用した企業を取材すると,導入に踏み切れない企業が抱く不安や悩みの大部分を,解決していることがよく分かる。既に運用中の企業と導入していない企業の間で,とらえ方の違いが大きいのがシン・クライアントを取り巻く現在の状況なのだ。

もはや悩むことはない,導入効果も明確に

 導入していない企業が真っ先に挙げるのが,シン・クライアントの方式選択についての悩み。だが多くの導入事例によって,方式ごとの効果が明確になり,もはや解決した問題と言える。例えば大和証券は,「全社規模でCPUリソースを有効活用したかったため,サーバー上で仮想的にユーザー個別の環境を作れる方式を選んだ」(システム企画部の山田芳也基盤整備課長上席次長)とその選択理由を説明する。

 「コストが高い」点を導入しない理由に挙げる企業も多い。だが,状況は変わりつつある。1台3万円の端末が登場し,初期導入コストをこれまでより抑えられるようになった。さらに運用管理費を含めてトータルで考えれば,高くないと判断できる材料がそろってきたのだ。

 例えば長野県茅野市役所は,「5年間運用を続ければ,パソコンよりもシン・クライアントのほうがトータル・コストが安くなるという結果を得た」(企画総務部地域情報推進課の田中裕之氏)という。2年にわたってシン・クライアントを使っているオーエムシーカードは,「シン・クライアントは,HDDを搭載していないので驚くほど故障が少ない」(中山和雄IT統括室統括室長兼情報システム部部長)と語る。故障の少なさは運用管理費の削減につながる。

4タイプの利用シーンが明らかに

 シン・クライアントを実現する仕組みは,画面転送型ブレードPC型仮想PC型ネットブート型の4タイプがある。以前はこの方式選びが企業にとっての悩みどころだった。だが先進ユーザーの導入事例から,利用シーンごとに最適な方式が見え,導入後に得られる効果も明らかになってきた。

 今回取材した,シン・クライアントを運用中の6ユーザーは,それぞれ導入の目的や規模,コストを考慮した結果,JTBグループと茅野市,オーエムシーカードは画面転送型を,大和証券とサイバーエージェントが仮想PC型,コマツはブレードPC型という選択をした。

 各社の意見をまとめると,画面転送型は主に一般事務やコールセンターなど定型化しやすい業務に向く。事例も多く,最も一般的な選択肢となっている。ブレードPC型と仮想PC型は,社員のアプリケーションの利用が多岐にわたるなど定型化が難しい業務に向く。3年ほど前に登場した方式で,画面転送型では対応できないケースに選択する場合が多い(図2)。ネットブート型に関しては「起動時にLANの帯域を消費する点が不安」,「モバイルでの利用が困難」という声が多く,利用シーンは教育用途やCADなど特殊なケースに限られるようになってきた。

図2●シン・クライアント各方式が得意とする利用シーン
図2●シン・クライアント各方式が得意とする利用シーン
画面転送型とブレードPC型,仮想PC型,ネットブート型の4タイプがある。導入事例が増えてきたため,それぞれのメリット・デメリットが明確になり,導入に向くシーンがはっきりしてきた。
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