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 多くの自治体が改革に取り組む。なかでも選挙によるトップの交代や不祥事を機に始まった改革には勢いがある。だが改革には失敗も多い。特に持久戦で抵抗勢力に敗れることが多い。筆者は官民さまざまな組織の改革に軍師として関わってきた。そこから得た教訓は「改革の本質は権力闘争であり、内実は革命である」ということである。

 改革では前例を打破し、既得権益を剥がし、仕事や事業のパラダイムを変える。この作業には数年を要する。だが最初の離陸過程での“仕込み”がその成否を決める。“仕込み”とは第1に守旧派の権力基盤の破壊、第2に課題の発掘と情報公開、第3に外からの評価の獲得である。

制度改革で守旧派の権力基盤を破壊する

 当初は改革者は弱小で守旧派は強大である。改革者は権力を得たらすぐに守旧派の権力基盤の破壊を図る。自治体改革の場合は、制度改革をやる。例えば(1)情報公開条例の内容強化、(2)補助金審査プロセスの公開、(3)各種団体との交渉のオープン化、(4)行政オンブズマンと公益通報制度、(5)議員の口利き禁止条例の制定、(6)首長の多選禁止条例の制定、(7)各種支援制度のサンセット化(終了期限を定めておくこと)などである。

 これらの制度は行政の透明性を高め権力の腐敗を防ぐ。誰にも反論できない制度なので導入しやすい。制度化しておけば守旧派が再び権力を得ても逆戻りさせにくい。例えば情報公開制度〔上の(1)~(3)〕が強化されると、守旧派、つまり既得権益勢力は新たな権益が得られない。こうしておいてさらに過去の不正を炙り出す。特に(4)の行政オンブズマンと公益通報制度が強力だ。職員や市民が行政の窓口を通さず直接に外部の専門家に違法または不適正な事例を通報する。誰が通報したか特定できない制度にしておけば威力を発揮する。筆者が今春まで市政改革推進会議の委員長として関与した大阪市役所の改革でもこの制度をいち早く導入した。

《参考》公益通報制度について(大阪市)

課題の発掘と全面情報公開

 不正や権益の抑止で勢いを得たら次は日常業務の改革である。行政機関の仕事は複雑多岐にわたる。個々に問題を指摘するときりがない。また予算編成や条例改正には時間がかかる。システマチックに課題を発掘して問題提起するとよい。具体的には各事業の体系的な分析と評価を行いその報告書を公表する。例えば大阪市役所ではバス、水道、消防、病院など主要67事業の「経営分析」を行った。各事業について現状(予算、組織など)、費用対効果、他都市や民間との比較、過去からの推移などを整理した。経営課題も報告書に文章で書き込んだ。膨大な分析資料のすべてを情報公開し、横浜市の2倍の過剰人員、市民満足度も低い」といった記述が明らかにされた。ここまでやっておけば仮に守旧派が勢力を盛り返しても過去への回帰は許されなくなる。

《参考》事業分析:主要67事業ユニット(大阪市)

 なお以上の課題発掘は行政改革の担当部門や部門の枠を超えたタスクフォースが行う。だが課題解決は縦割りの各部局に取り組んでもらう。すでに課題は広く情報公開された。それを放置すると部局長の減点対象になると通告する。そして期限を設定し、「何が重点課題か」「いつまでにどう解決するか」を提案してもらう。出てきた提案は幹部会や外部の委員が集まる席で批評する。踏み込んだ提案は誉め、腰が引けたものは批判する。やがて部局長の間に競争意識が芽生え、高い目標設定が出てくる。

外部からの評価の獲得

 改革を持続させるためには早い段階から域外、全国からの評価を得る必要がある。一般に地元の有力者はマスコミも含めて改革に冷淡である。どちらかといえば彼らは既得権益勢力だからである。一般市民には知識が足りない。最初は盛り上がっても地元はすぐに半信半疑になる。だが全国紙やテレビが誉め、視察団がどんどんくると空気が変わる。

 また自治体は横並び、前例踏襲主義である。どこかで新しいやり方が世論の支持を得ると全国に広がる。三重県発の事務事業評価、武蔵野市発のコミュニティバスが典型だ。自治体改革は内容が斬新であればあるほど全国を相手とする情報戦にもなる。中身は他の自治体に波及し、国の制度にも影響を与える。さらに先進自治体同士は競争をする。それが新たな刺激を生む。改革の勢いを維持するには全国の注目と支持が必要だ。

 以上、改革を持続させる条件を述べたが本質はシンプルだ。革命と同じく最初に前政権の悪事を暴き、権威を失墜させる。「情報公開」と「公益通報制度」で外堀を埋め彼らの自然崩壊を待つ。同時に政府軍(各部局)に忠誠を誓わせ人事権を行使しながら徐々に実権を掌握する。やがて新機軸を打ち出し、外部(全国)の評価を獲得して権威を確立する。かくして改革は巡航飛行に入るのである。

上山氏写真

上山信一(うえやま・しんいち)

慶應義塾大学総合政策学部教授。運輸省、マッキンゼー(共同経営者)、ジョージタウン大学研究教授を経て現職。専門は行政経営。『だから、改革は成功する』『新・行財政構造改革工程表』『ミュージアムが都市を再生する』ほか編著書多数。