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 NHKの2008年度予算案(事業計画案と資金計画案を含む)が2008年3月31日に,参議院の総務委員会と本会議で承認されて成立した。同予算案は,2008年1月16日に国会に提出されていた。しかし翌日の1月17日に,報道局の職員による株式のインサイダー取引事件が発覚した。報道機関の信頼性を根幹から揺るがす今回の事件に対して,民主党などの野党だけでなく与党の自民党や公明党からも反発が相次いだ。その結果,3月末までの承認が危ぶまれ,最悪の場合,4月から3カ月の暫定予算を組まざるを得ないという観測も流れていた。

 こうした状況を一変させた背景には,民主党の方針変更があった。道路特定財源問題や年金記録漏れ問題,空席になっている日本銀行総裁の人事などを巡って,民主党は今国会で与党との対決姿勢を強めている。「戦いを有利に進めるには,案件を絞り込むべきだ。NHKの予算案は,対決材料にしない方がよい」と判断したようだ。

 これを機に,国会におけるNHK予算の審議が動き始めた。3月25日には衆議院の総務委員会と本会議で承認され,参議院に送られた。前日の3月24日には,民主党と自民党の参議院国会対策委員長が,NHKの予算案が3月25日に衆議院を通過すれば,参議院で3月末までに処理することで合意していた。これにより,3月中に承認されるのが確実な状況になった。

 ただし,衆参両院の総務委員会における審議では,インサイダー取引事件への対応など,NHKに対する厳しい意見が相次いだ。例えば,衆議院の総務委員会で民主党の原口一博・理事は,「(NHKが立ち上げた)第三者委員会による原因究明の結論が出る前に,我々はこの予算案を承認しなければならない」と不満を述べた。さらに,「NHKの複数の放送局長が地元の子会社・関連会社の役員を兼務しているのは,取引の透明性や公平性の面から問題がある」と指摘した。また同委員会では,「インサイダー取引事件の影響で受信料収入が減少した場合には,全社的なコストダウンによって対応する」と述べた福地茂雄NHK会長に対して,質問した委員が「この予算案には,経費を削れる余地があるということか。不用意な発言は慎んだほうがよい」と,たしなめる一幕もあった。

 最終的に衆参両院の総務委員会は,10項目の付帯決議を行うことでNHKの予算案を承認した。その中身は,コンプライアンス法令順守の徹底や経営委員会の権限強化,受信料の公平負担に向けた取り組み,子会社・関連会社との取引の透明化といった,公共放送としての信頼性の向上を求める内容が中心になった。