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 コンピュータが世の中で一般的に使われるようになってほぼ半世紀,ITエンジニアに対する世の中の見る目も様変わりしてきた。以前はコンピュータは高価で難しく,一部の専門家しか扱うことができないものだと思われていた。コンピュータの技術者は優れた能力を持った高給取りというイメージだった。しかしPCの登場によって,コンピュータは安価で誰もが簡単に使いこなせるものになったし,ITエンジニアという仕事もごくありふれたものになってしまった。

 昔は花形だったプログラミングという仕事でさえ,力作業的な色合いが濃く,肉体労働的に見られてしまっている。その中で,プロジェクト・マネージャやコンサルタントという仕事は別格で,高度な仕事であり,そう簡単には身に付けることができないITスキルの上位に位置付けられている。確かに,プロジェクト・マネージャやコンサルタントは,社内でも高い職位で厚遇されてきた。

 しかし,IT業界にも大きな変化が起きてきている。テクノロジやソリューションは百花繚乱の状態となっており,その中でベンダーやシステムインテグレータは差異化に苦慮している。顧客も製品の仕様や機能には関心を払わなくなってきた。そうした中,プロジェクト・マネージャやコンサルタントが,高い料金の割には活躍してくれないと,期待を持てなくなっているのが現状だ。

顧客と接する時間で信頼を得る

 では,ユーザーはどんなエンジニアに来てほしいと思っているのだろう?答えは明確だ。「カスタマー・フォーカス」,つまり顧客視点で仕事ができるエンジニアを求めているのだ。製品やソリューションをよく知っているだけではなく,その顧客がどんな課題を抱えていて,どうすればその課題を取り除くことができるかを,顧客の立場で考え,実行できるエンジニアが望まれている。

 それは必ずしも,「プロマネ」や「コンサル」に求められていることではない。顧客の業務やシステム,課題に精通していて,それらを解決するためのアドバイスができるスキルを持っているエンジニアは,彼らだけではないのである。

 顧客視点で仕事をする上で最も重要な要素は,顧客からの信頼だ。そして信頼を得るためには,顧客に接する時間がより多いほど有利になってくる。プログラマやオペレータ,カスタマ・サポートを担当するエンジニアはその代表格だ。現場で地道に頑張っていた彼らにこそ,最もお客に信頼され,評価される技術者になる可能性が秘められている。顧客との交流の中で,顧客に関する幅広い知識を身に付け,顧客にとって役立つ存在になってほしい。

【顧客からの信頼を得るための行動習慣】

1.顧客のターミノロジー(用語)で語る
 IT技術者は難しい専門用語を駆使したがる人が多いが,それでは顧客の信頼を得ることはできない。顧客の協力を得ながらよりよい成果をあげることが目的なのだから,顧客の用語で語らなければならない。

2.顧客の現場を訪ねる
 顧客のことをよりよく知るためには現場を訪ねていくことが肝心だ。直接の対応者であるシステム部門ではなくて,システムのユーザーである,工場や営業店,管理部門の人たちがユーザーである。ユーザーのペイン(痛み)も現場にあり,現場の人たちが困っているのだから,チャンスを見つけては現場に出向いて行ってほしい。

3.社内のタレントを活用する
 エンジニアは,顧客に関する知識を身に付けると同時に,IT関連の知識やスキルにも精通していなければならない。しかし,自分がすべて知っている必要はない。「○○が知りたいのだが」という顧客の問い合わせに,社内外のエンジニアの協力を得て,答えることができれば十分なのだ。「彼に頼めば何でも分かるようにしてくれる」と顧客から評価されるようになろう。

池田 輝久(いけだ てるひさ)
エンパワー・ネットワーク プリンシパル
日本アイ・ビー・エム,日本タンデム・コンピューターズで営業として活躍した後,日本オラクル常務となり,パートナビジネスを担当。イーエムシージャパン副社長を経て,1999年11月11日にエンパワー・ネットワークを創業。ビジネス・スキルに関する教育を手がける。