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「土足厳禁」の研究機関も多いので、いつも靴べらを持ち歩いている |
田原の顧客は、ほとんどが官公庁系だ。大型商談が多く、ビジネスサイクルは比較的長い。田原は数年先の動きをにらみ、綿密な営業シナリオを錬る。シナリオAが難しくなったときに備え、シナリオBやシナリオCまで用意する。
今までに一番、印象深かった商談について聞くと、即座に独立行政法人・海洋研究開発機構に納入したシステムを挙げた。メインメモリーが3テラバイトに及ぶという大規模な超並列型のLinuxシステムである。海洋研究開発機構が世界クラスの研究・開発を進めるには、絶対に必要なものであり、田原にとってはどうしても受注したいシステムだった。
この案件は2006年のものだが、実は2004年から前哨戦ともいえる中規模システムの商談があり、このときから田原は全力で疾走した。システムのコストパフォーマンスを向上させるため、国内はもちろん米SGIとも折衝し、優秀なエンジニアを確保。システムのチューニングを毎週末、出勤して検証し、海洋研究開発機構の担当者に自社システムの優位性を熱心にアピール。4社競合という熾烈な状況を戦って「日本SGIが落札」と聞いたとき、田原は全身に鳥肌が立つのを感じたと言う。
田原が特に気を配るのは、顧客とのコミュニケーション。中でも電子メールや見積書の文面は営業にとって「作品」とまで言い切るほどだ。
服装にも常に注意しており、旬のファッショントレンドをしっかりチェック。顧客と互いのファッションについて会話が広がることも多いという。取材した日の田原のネクタイは、「ドレスダウン・プレーン・ノット」と呼ばれる結び方。若い顧客を意識した装いだった。
=文中敬称略
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