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半田 淳治氏 日本テレビ放送網 メディア戦略局IT推進センター IT推進部次長
写真●半田 淳治氏 日本テレビ放送網 メディア戦略局IT推進センター IT推進部次長
(写真:宮原 一郎)
 

 ここ数年、日本のITベンダーを見ると「顧客の要求に応える『SI力』が衰えたな」と感じることが多くなった。意外にも、力の衰えは大手ベンダーほど目立つ。

 我々の求めるSI力とは、顧客の要求を読み解く「読解力」と、要求の不足を補う「想像力」、そして要求を実現する「技術力」の三つのことだ。いずれについても、ITベンダーの力の衰えを感じるようなことを経験した。

 例えば「読解力」。これは、顧客が要求することの半分くらいしか文書化できていなくても、我々とのコミュニケーションを密にしてあいまいな点を補い、きっちりと要件をまとめるというものだ。

 私が入社した1980年代、日本テレビは、大半の業務システムを内製化していた。今やシステム部門でプログラミング経験を持つのは私くらいしかいない。その結果として我々は、要件を漏れなく定義するスキルが以前より落ちている。

 一昔前は、発注先になるITベンダーのSEと打ち合わせれば、要件のあいまいさを補うことができたので、大きな支障はなかった。ITベンダーの読解力に期待できたからこそ、開発を外注化し、スタッフはシステムの企画や要件の取りまとめに専念できた。

 ところが最近は違う。特に開発の「オフショア化」で風向きが変わったように思う。オフショア先と我々をつなぐ「ブリッジSE」が、往々にして要求を「読解」できないのか、通訳の役割を果たしてくれないのだ。開発費を抑えられる一方で、細かなトラブルも増えた。

 以前、こんなことがあった。中国でのオフショア開発を提案してきたあるITべンダーが、我々の要求と食い違った仕様のシステムを納品してきた。手直しさせても品質が上がらず、最終的には我々が最初から作り直す羽目になったのだ。

 読解力と同様、「想像力」の衰えも気になる。我々の要求に欠けている部分を、常識的な判断で補う力を身に付けてほしい。

 一例を挙げる。新システムのユーザーインタフェースについて、「以前に選択したメニュー画面をデフォルトにすべき」など、利用者の操作性を高めるような提案のできるITベンダーが減っている。確かに要求定義書には書かなかったが、良い意味でおせっかいしてもらいたい。

 「技術力」の低下も悩ましい。基幹系業務システムの刷新案件で、当社ではこんな経験をした。

 新システムの運用段階で、頻繁に発生するバッチ処理に数時間もかかることが分かった。ITベンダーに改善を求めたところ、安易に「ハードウエアを追加しましょう」と言ってきた。

 仕方なく、言う通りにした。それなのに、処理時間を半分くらいしか短縮できなかったのだ。

 そこで私が自分なりの経験に基づき、システムを見直したところ、処理速度を6分の1以下に短縮できた。たまたま私のやり方が通用したから良かったものの、そのITベンダーの技術力には疑問を禁じえない。

 こうした苦い経験もあって、ITベンダーにシステム化業務を丸投げすることは危険だと考えている。それでシステム化の推進力を高めるため、2006年9月に全額出資のシステム子会社「日テレITプロデュース」を設立した。

 現在、要件定義から設計までを手掛けることのできる担当者を増やしているところだ。我々がシステム化のスキルを高めないと、ITベンダーに足元を見られてしまう。