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秋山 進
ジュリアーニ・コンプライアンス・ジャパン
取締役・マネ―ジングディレクター

小林 亮介
調達推進基盤 代表取締役社長

 IT業界での偽装請負問題は、近年、急速に表面化してきました。

 2006年に大手ITベンダーがシステム運用の案件で労働局から是正指導を受け、インターネットや業界誌でも実名報道がなされました。このプロジェクトでは、このベンダーからプロマネが出ており、他は複数のシステム会社の技術者で構成されていました。ベンダーとそれぞれの会社との契約形態は準委任契約でしたが、実際には業務の範囲が不明確で、プロマネと他の技術者の間に直接の指揮命令が発生していたと認定されたようです。こういったケースは頻繁に起こりがちで、他にもいくつかの企業が類似した事例で是正指導を受けています。
そんなことから、現在では、いくつもの大手ベンダーが、パートナー企業向けの説明会を実施したり、ガイドラインを策定したりなどして、問題の是正に力を入れ始めているのです。

 では、かつては当たり前であった、こういう契約形態が、なぜ問題視されるようになったのでしょうか?

派遣法改正が、偽装請負を表面化させた

 ターニングポイントは人材派遣法の改正です。

 派遣法はさかのぼること約20年前の1985年に成立しました。成立当時は、派遣は正社員の代替手段ではないとの考え方から、高度で専門的な知識や経験を要する“13の業務だけ”が派遣として認められていたのです(*1)。また、その翌年には「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(労働省告示第37号)が公表され、現在に至るまで派遣と請負の区分の基準となっています。

 当時のIT業界では、上記の区分基準では判断が難しく業務に支障をきたすという懸念から、社団法人情報サービス産業協会(JISA)が業界運用基準を取りまとめて行政側に提出するといったような動きがありました。ただ、このころはIT業界の規模もまだ小さく、労災問題も現在ほど表面化していなかったので、大きな問題として取り上げられることはありませんでした

 その後、2004年に派遣法が改正されて、製造業務への派遣が解禁になりました。このころから偽装請負問題が表面化します。製造ライン等での請負契約に、直接の指揮命令が発生する職場が多く見られたため、労働局は関係する発注者やサプライヤー(請負会社、派遣会社)に派遣と請負の適正な理解を促す取り組みを開始しました。これが、毎年秋に実施されている契約適正化キャンペーンの始まりです。

 このキャンペーンで製造業を中心に調査したところ、違反率は80%を上回る高率でした。あわせてIT業界に対しても同様の調査を行うと、多数の違反が発見され、重点的に是正が必要な対象業界という認定がなされたわけです。

 おりしも技術者の圧倒的な不足から労働強化がなされ、労働災害も目に付くようになっていました。とくに実態は派遣でありながら、形式的には請負である偽装請負となると、労務管理がおろそかになる傾向があり、業界としても偽装請負問題は、取り組むべき緊急の課題という認識が広がったのです。

(*1)派遣適用対象業務
対象業務も徐々に見直しが進み、86年には16業務に、98年には26業務が対象となりました。