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 祖父はミズーリ州セントルイスでアンハイザー・ブッシュの小売業者だったし、父も1980年代に引退するまで40年あまりも小売りを生業としていた。だから、私が同社に入社したのは運命の定めというしかないだろう。

 広報やスポーツマーケティング、人事、小売り担当、卸担当と、24年間さまざまな分野にかかわってきたが、今年4月、創業5代目であり社長兼CEO(最高経営責任者)のオーガスト・ブッシュ4世によってCIO(最高情報責任者)に任命された。「IT(情報技術)関連以外の経歴が長かったので、ビール王国のビジネスをよく理解している人間だ」と、ITチームも私を信頼してくれている。私たちのビジネスはビールという言葉に尽きるが、ブッシュ氏も私も、ITがビールビジネスを牽引していく役割を担っていると信じている。

ジョゼフ・P・カステラーノ 氏
ジョゼフ・P・カステラーノ 氏
アンハイザー・ブッシュは米国最大のビール会社。2006年の米国内シェアは48.4%でトップ。世界では11.5%で2位。代表的銘柄は「バドワイザー」で、日本ではキリンビールがバドワイザーのライセンス生産と輸入を手掛けている。2006年の売上高は過去最大の180憶ドル、純利益は20憶ドル。本社はミズーリ州セントルイス

 ビールは品質がすべてだから、蒸留過程を短縮することはできない。しかし、賞味期限の110日以内であっても、光や熱は品質を劣化させ、出荷してからの寿命は短い。そこで、出荷から流通のロジスティクスを賢くこなすことが肝心だ。また、より多くの売り上げにつなげるには、米小売り最大手ウォルマート・ストアーズから街角のバーに至るまで、消費者ニーズに最大限応えられる銘柄と数量を、うまく組み合わせて卸していかなければならない。

 2006年から米国内のセールスマーケティングチームで始めた新しいCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネージメント)システムに期待をかけている。米オラクルから購入した「シーベル」というソフトウエアを使ったもので、小売りレベルの売り上げと価格の関係を分析し、素早いセールスプランを練り、それを全米に約50万件ある小売りレベルで徹底することを目指している。

 卸レベルでは「モビリティ」と呼ばれるソフトウエアを導入し、セールスプランを日々ダウンロードしてもらうようにする。コストを当社と卸で折半しているので、今のところ700ある卸業者のうち6割が導入したところだが、早く100%を達成したい。システムの構築段階だから、新たな発見もあり、エキサイティングだ。今後6~12カ月のうちに、違いが見えてくるだろう。

緊張感とスピード感がビジネスに差をつける

 当社はビール、輸入ビール、アルコール製品だけで50以上の製品がある。当社にとってのチャレンジとは、複雑な商品群の中から全消費者にいかに満足のいく銘柄をいきわたらせるかという点に尽きる。そのためには、この商品群を流通させるプランと管理が必要だ。

 新システムの導入によって、今後は「今週はバドワイザーを20箱」といった小売店からの注文を漫然と待ち受けるだけでなく、さらに「その隣に季節限定品を10箱置いてみたらどうです」という話をできる。正確なデータと分析に裏付けされたプランに基づく銘柄と数量だから、卸も小売店も満足がいく結果を得られる。

 ビールの宣伝には膨大な費用がかかっているし、卸も小売店もそれなりの設備投資をしている。それに報いることが必要で、それを助けてくれるのが今回の新システムのようなITだ。

 当社の文化として、社員がよく使う言葉に「緊張感」がある。ビールを早く作ることはできないが、情報を素早く共有して分析する点については緊張感が常に必要だと経営陣が説いてきた。それを支援してくれるのがテクノロジーだ。現在5000人の社員のうち3500人に(携帯情報端末の)ブラックベリーを配布した。そのうち全員に配ることになるだろう。たとえ会社の席にいなくても、ブラックベリーを使えば電子メールやデータベースへアクセスできるので素早い対応が可能になり、席に縛り付けられることがなくなる。現場に行くこともできれば出張もしやすくなり、素早く結論を出すのが簡単になる。

 競争の激しい業種ではどこでもそうだが、スピード感がビジネスを成長させる鍵となる。CIOとして克服すべき問題は、第1にこのスピード感、第2にテクノロジーを使って製品そして仕事の品質を確実にすること、そして第3がコスト感覚だ。

 社員、卸、小売業者に提供している技術、そしてアプリケーションなどが、常に高品質で、タイミングよく稼働していて、しかも、最小限のコストでそれを実現するのが望ましい。

ジョゼフ・P・カステラーノ氏 米アンハイザー・ブッシュ副社長兼CIO
1983年にアンハイザー・ブッシュに入社し、スポーツマーケティングを手掛ける。その後、アルコールについての消費者教育部門上級副社長、卸部門副社長、小売りマーケティング副社長、人事副社長を経て現職。17人の経営戦略委員会メンバーを兼任。