PR
日本のメーカーブースも数多く出展された(小澤誠マウビック社長提供)
写真1●日本のメーカーブースも数多く出展された(小澤誠マウビック社長提供)
[画像のクリックで拡大表示]

 2008年4月14~17日に米国ラスベガス市の「ラスベガス・ヒルトンコンベンションセンター」(LVCC)で,全米放送事業者協会(NAB)の年次大会である「NAB2008」が開催された(カンファレンスは4月11~17日)。今回のメインテーマは,「Where Content Comes to Life」である(写真1)。テレビ番組が地上波放送だけでなく,インターネットやモバイルを通じてやってくるといった意味であろう。「どこから」というテーマの対極には,「いつから」という文字が隠れているようだ。

 2009年2月には全米のかなりの州や都市の行政単位レベルで,地上アナログ放送を完全に終了させるという米国のテレビ業界ビッグイベントがある。全米の地方局のほとんどがHDTV(ハイビジョン)放送を行っている状況で,制作現場のワークフローにおいては,主に報道現場でHDV(HDTV対応ビデオカメラ)を導入して,コストを抑えながら素材のHDTV化を図るケースが増えてきている。


松下電器やソニーが「P2システム」などを展示

NAB2008の会場内部の様子(NABのプレス写真から)
写真2●NAB2008の会場内部の様子(NABのプレス写真から)
[画像のクリックで拡大表示]

 こうした状況を受けてNAB2008(写真2)では,日本の放送機器メーカーである松下電器産業が「P2システム」(大容量メモリーカードに記録するタイプのカメラ・収録システム)を展示した。ソニーも,Disk系の「XD CAM」を展示した。松下電器は,本格的な「AVC HD」の番組収録・制作システムも披露した。米国の通信ネットワーク(専用線など)上を25Mb/s程度の転送レートで,フルスペックのHDTV画質の「H.264」素材を現場から本社に伝送して編集するソリューションである。データはIP化されてファイルごとに配信される。

 米国のテレビ放送事業者は,日本の民放キー局と同規模の大規模事業者から,ケーブルテレビ(CATV)事業者と大差のない小規模事業者まで様々だ。システム構成は,日本とかなり違う場合も多い。デシタル制作はすべてノンリニアで行われる場合も多く,編集現場からIP化される「ITに頼る放送制作環境」が急速に増えつつある。松下電器もソニーもハイエンドからミドルエンドまでのシステム提案を行い続ける必要があるのは,今年も変わらない姿だ。

 なお,松下電器が展示を行ったセントラルホールではNHKが,月探査衛星「かぐや」に搭載したHDTVカメラで撮影した月面の映像をデモした。スーパーハイビジョン(SHV)の映像素材をパソコンからストリーム再生して、「4K」(フルHDTVの4倍を超える超高精細度映像)の品質にダウンコンバートしたうえで、56インチの液晶ディスプレイに映し出すデモも行った。映像は128Mb/sの転送レートであり,既に公開したデモ映像を使用したと思われる。ちなみに,4Kや2Kでの制作環境をデモする放送機器メーカーも増えてきている。

 NABのDavid K. Rehr会長はオープニングの基調講演で,「YouTubeのような革新的サービスに放送事業者自身が取り組んでいかねばならない」といった趣旨の発言を行い,業界をあげて放送の完全デジタル化の達成を目指す姿勢を示した。1000万近い世帯で地上デジタル放送波が届かない可能性についても言及したが,関係者の話を総合すれば,「全米のCATVや通信事業者が動員されて,ほとんどの州で完全デジタル化が達成されるであろう」という観測が強くなってきている。