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 「NGN(次世代ネットワーク)はエリアも内容も最初はスモールスタート。現時点で画期的なサービスを実現しているわけではない」──。NTT持ち株会社の三浦惺社長は,NGNの商用サービスが始まった3月31日に開いた会見で,こう語った。NTTグループの今後数十年間を支える基幹網として準備してきたNGN。だが三浦社長の言葉が表すように,そのスタートは極めて静かなものだった。

東西14局で「スモールスタート」

 3月末のサービスは,NTT東西が目標に掲げてきた“2007年度内の開始”に何とか間に合わせたものだった。

 情報通信審議会がNGNを最終的に認可すると答申したのは,サービス開始わずか4日前の3月27日のこと。翌28日にNTT東西が約款集を総務省に届け出て,ようやく正式な料金発表に至った。

 そこで31日当日は,加入申し込みの受け付けもサービス提供も,同時にスタートという異例の事態になった。実際に回線がユーザー宅に開通するのは「早くて4月の第2週目」(NTT東日本)という状態で,2007年度中にNGNを使い始めたエンドユーザーは,実は皆無だった。ある販売代理店は「3月31日になっても,NTT東西から新サービスの情報提供はなかった」と困惑気味に当日の様子を語る。

 NGNによるFTTH(fiber to the home)サービス「フレッツ 光ネクスト」の提供エリアは,2008年半ばまで首都圏の12収容局と大阪の2収容局に限られる。新サービスを大々的に喧伝すれば,対象エリア外でBフレッツに加入を希望するはずのユーザーに買い控えの動きも広がりかねない。このため,NGNのプロモーション活動は最小限に抑えているのが実状だ。

 サービス内容も,基本的には既存サービスと同等である。高音質IP電話や県間も使えるようになった広域イーサネットなど,いくつかの新機能が盛り込まれたが,まだ魅力に欠けるとの声も多い。

予期せぬ地域IP網の限界でジレンマに陥る

 スモールスタートとなったのは,この3年の間にNTTが予想していなかった事象が起こったからだ。

写真1●NGNサービス開始当日に会見するNTT持ち株会社の三浦 惺社長
写真1●NGNサービス開始当日に会見するNTT持ち株会社の三浦 惺社長

 それは2006年からIP系サービスを提供する地域IP網にトラブルが頻発し始めたこと。ユーザー数の増加に合わせて増築を重ねた地域IP網が能力の限界に近づいた。これに対処するため,NGNの当初の役割は,収容能力に不安がある地域IP網に代わって,「同等のサービスを提供すること」に置き換わっていった。

 しかし,事を急げばNGNがトラブルに見舞われないとも限らない。NTTグループにとってNGNの信頼失墜は,致命傷になりかねない。

 このジレンマから,短期的には「小規模で立ち上げ,ネットワークを制御できることを見極めてから大規模に展開する」(三浦社長)という結論に至った。

 スモールスタートとはいえ,NTT東西は,「運用コストの観点から地域IP網はいずれNGNに統合する」としている。企業ユーザーにとってNGNへの移行は,いつかは考えなくてはならないテーマだ。

 次回以降は,第2回と第3回で2008年中に実現するサービス,第4回と第5回2009年以降に導入予定のサービスに分けて,導入のタイミングを見ていこう。