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 ここで言うシナリオとは,プロジェクトが成功するための道筋(手順,プロセス)である。ベンダーのプロジェクト・マネージャ(PM)は,ユーザーの情報(体制,要件確定度など)やプロジェクトの制約条件(コスト,品質,納期など),メンバーの情報(スキル,技術など),開発システムの難易度など様々なパラメータを考慮しつつ,成功までのシナリオを描かなくてはならない。

 だが,シナリオがあいまいなまま,見切り発車してしまうPMがいる。シナリオがないプロジェクトは,全体の目標がはっきりしない。メンバーの行動がばらばらになり空中分解を起こし,失敗プロジェクトとなる。

 また,シナリオがないと将来何が起こるか想像できない。何が起こるか想像できないということは,リスクも想定できないということである。想定できないリスクに対しては予防対策も打っていないはずなので,プロジェクト遂行中に次から次へと想定外の問題が発生する。当然,発生時対策も検討していないため,もぐら叩きのように問題対策に追われてしまう。

 プロジェクト成功の鍵は,制約条件(コスト,品質,納期など)の下で,ユーザーの要望,期待などをどのように達成できるかを考え,PMが成功イメージを持つことである。シナリオ策定に当たっては,都合の良い未来(Happy Case)と起こってほしくない最悪の未来(Crisis Case)を想像し,その中間に現実的な未来(Best Case)を考えるとよい()。

図●シナリオの考え方
図●シナリオの考え方

 リスクを抽出するために,Best Caseの実現を阻害する要因を洗い出す。抽出されたリスクの対応策を立案し,プロジェクトを推進しながら成功シナリオの中に収めていく。これを“幅のマネジメント”と呼ぶ。

 PMは,ユーザーの要望や期待を考慮しながらプロジェクトを成功に導くためのシナリオを自ら策定する。注意しなければいけないのは,ユーザーを巻き込んだシナリオを描き,プロジェクトの運命共同体を作り上げることである。このシナリオによって,プロジェクトの方向性が明確になり,関係者と方向性の共有化が図れ,メンバーのベクトルが一つになり,成功へとつながる。

千種 実(ちくさ みのる)
日立システムアンドサービス
プロジェクト推進部 部長
1985年,日立中部ソフトウェア(現 日立システムアンドサービス)に入社。入社以来,一貫してプロジェクト管理に従事。PMOの立場でトラブル・プロジェクト支援を数多く経験した後,社内のプロジェクト管理制度の構築やプロジェクト管理システム(PMS)開発およびプロジェクト支援,プロジェクト・マネージャ教育講師に携わる。また,他社のプロジェクト管理に関するコンサルティングや研修講師,講演などを経験し,現在もPMOの立場からITプロジェクトを成功へ導くために幅広く,社内外で活動中。1962年,三重県出身。岡山理科大学理学部応用物理学科卒。