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 岡山県倉敷市は、2006年度より総務省の「新地方公会計制度実務研究会」に参画、「基準モデル」による財務書類作成を試行した。いよいよ新地方公会計制度も“本番”を迎え、現在は基準モデルで財務書類を作成しているところだ。倉敷市総合政策局企画財政部財政課 課長の竹内道宏氏は、4月19日に大阪で開催されたセミナー「行財政改革シンポジウム in 大阪」での講演で、財務会計システムの再構築の進ちょく状況や、基準モデルによる財務書類の活用方法などについて語った。

倉敷市の竹内氏
行財政改革シンポジウムで講演する倉敷市の竹内氏

 私どもが新地方公会計制度実務研究会の実証的検証として財務4表の作成を試行した時点では、提供を受けたソフト(自動変換ツール)は、予算科目と企業会計で言うところの勘定科目の対応について課題がありました。一つの予算科目が複数の勘定科目にまたがる場合に対応できていなかったのです。例えば「委託料」の場合、その委託料が工事の実施設計、つまり資産形成になるものなのか、清掃委託料のようなコストになるものなのか、「委託料」という科目だけでは一義的に特定できないということがありました。こうした部分は現在の予算科目に補助科目を設け、手作業で振り分けました。この点を改良すれば、システムの導入は非常に有効であるということが分かりました。

   この点については既に改良されているとも聞いていますが、どういった補助科目が必要なのか、あるいは、どういった補助科目を設定するのがいいのかといったことについては、やはり市側での検討作業が必要になるのではないかなと考えています。

 現在、倉敷市では2006年度決算分の財務4表を作成中ですが、「新地方公会計制度実務研究会」の報告書に紹介されている簡便作成法を用いて、手作業で取り組んでいます(実証的検証の作業期間は無償でシステムの提供を受けていましたが、既に提供ベンダーが持ち帰っています)。簡便作成法は、個々の調定や収納などの帳票をそれぞれ複式に変換するのではなく、年度末において決算情報を複式に変換するという方法です。

 実際に作業を行う中で感じたのは、特別会計については、すべてをシステム化するのは大変なのはないかということです。特別会計は、それぞれ会計ごとにかなり内容・性質が異なっているので、システム化に向けての作業はかなり多くなりそうです。また、システム的にも非常に大きなボリュームになるのではないでしょうか。

 こうしたことから、倉敷市では普通会計についてはシステム化を進めますが、それ以外の特別会計については、当面はシステム化せずに簡便作成法で財務書類を作成し、普通会計分と合算するという方がむしろ取り組みやすいのではないかと感じているところです。

財務会計・予算編成システムと行政評価システムの連携を目指す

 倉敷市の財務会計システムについては、現在、基準モデルに対応する形で再構築しているところです。これは、「内部情報システム」(電子決裁、文書管理、情報公開、庶務事務、人事給与、財務会計、予算編成、行政評価)の導入の一環として、2007年度から取り組み始めたものです。本格的開発作業は今年度からを予定しています。

 倉敷市では、非常に早い時期から財務会計・予算編成を導入していたため、現在も汎用機を使ったレガシーシステムとなっており、今回オープン系のシステムに全面移行します。これに伴い、財務会計・予算編成システムと行政評価システムの連携などを考えています。単に4表を作るだけではなく、活用を視野に入れたものにしたいということから、行政経営のためのシステム構築の一環として位置付けていく予定です。

 システムを導入して作成した基準モデルによる財務諸表の活用方法としては、まず予算編成と管理会計的な視点基づいた事業別財務諸表の作成に生かしたいと考えています。事業別は、施設別・活動別まで含めたものです。この2つを当面の大きなポイントに置いています。

 まず予算編成ですが、私ども地方公共団体の財務諸表は、予算の段階でコントロールしていかなければならないのではないかというのが私どもの考えです。こうした点を踏まえると、予算編成の段階から、予定貸借対照表といった予測財務諸表の作成が求められます。資産・負債の状況や、資産形成の世代間負担などについて、固定比率、社会資本の世代間負担率といった指標を考慮しながら予算を編成することが理想的な姿であると考えており、こうした方向に近付けていきたいと思っています。

 実際の予算編成は、非常にタイトなスケジュールでの作業となることから、予測財務諸表の作成はスピーディに行う必要があります。そうなると、やはりシステム整備は不可欠となりそうです。具体的には、予算科目を財務諸表4表の勘定科目に割り当てたものを、予算編成側に移行することによって実現可能ではなかろうかと考えています。

 また、これはシステム化とは別の話なのですが、私ども財政課は複式簿記による財務諸表を読み取る知識をさらにもっと身に付ける必要があります。システム整備と並行して、財政課職員の知識習得に向けた取り組みも、ぜひ進めていかなければならないと考えています。

 次に事業別財務諸表の作成についてですが、特に事務事業評価との連携を含めた費用対効果の検証、あるいは、民間との経費比較、使用料等の見直しにおいての活用に有効だと考えています。

 このうち、特に民間との経理比較について、私どもの取り組みの考え方をご紹介します。まず官民競争入札については、2007年度は公用車の維持管理について実施しました。PFIも、ごみ焼却設備について2004年度に実施したところであり、どちらかというと先駆的に取り組んでいる団体であろうかと思います。しかしながら、いずれの場合も、民間との経営比較を行うコスト計算については、外部のコンサルタント等の協力を得て実施しました。

 PFIのような大掛かりなものは、やはり今後とも民間の専門的な知識を要することになろうかと思います。とはいえ、細かい業務まで掘り下げて財務運営に取り組んでいくためには、やはり自前で事業別のコスト計算ができるようになっておくことが必要です。従って、事業別財務諸表の作成については、できるだけ早急に取り組んでいきたいと考えています。

 実際に事業別財務諸表を作成する場合には、特に資産台帳の資産ごとに事業コードを持たせる等の作業、あるいは、起債管理についても、公債台帳、公債費の元金償還、利息、それぞれ事業コードを持たせる必要があろうかと考えています。今考えているのは、すべての事業ではなく、当面効果が期待出来る事業についての適用です。私どもの団体で言えば、例えば図書館や美術館などの管理運営事業がそうです。これは指定管理者の導入を踏まえたものです。効果が期待できる事業に限定して導入していくことが、全事業に割り当てるよりもむしろ効果的であり、作業的にも非常に無理がないのではないかと考えています。これらについては、2009年度決算からの作成を予定しています。

 最後になりますが、公会計改革の取り組みは、業務量の増加を伴うものではありますが、私どもとしては「やらされる」といったようなマイナス思考ではなく、むしろ行政改革のチャンスとして、公会計で得られる成果を財政運営に活用できるような視点で取り組んでいきたいと考えています。(談)