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田中 弘幸氏 明治乳業 情報システム部部長
写真●田中 弘幸氏 明治乳業 情報システム部部長
(写真:花井 智子)
 

 取引関係が長くなると、どうも“斬新な提案”が出てこなくなるようだ。当社はある大手メーカー系のITベンダー1社に、主に工場向けシステムの開発や運用・保守を任せている。このITベンダーの営業部門の事業部長とは、新人時代から約30年の付き合いがある。昔は困ったことがあると、一目散に当社に駆けつけてくれたものだ。

 事業部長と私は、気心が知れた関係。今では互いに都合の良いことも悪い話も腹を割って話せる。このことが問題解決のスピードを高めていることは多い。例えばITベンダーの営業担当者が、当社の突き付けた“宿題”に手間取っている時などがそうだ。

 私はすぐに担当者の上司である事業部長に直接連絡して、課題をすぐに解決してもらっている。システム構築プロジェクトを立ち上げる際も、優秀なエンジニアを集めて開発体制を組んでもらうなど優遇されていると感じる。

 ここまではいいのだが、最近は物足りなさも感じている。提案内容に“迫力”がないのだ。なかなか、こちらが感心するような業務改善策やシステム再構築案などが出てこない。既存の業務プロセスや従来システムの在り方に固執しているのでは、と思えてくることすらある。

 このITベンダーは当社の案件を数多くこなしてきただけに、営業担当者もエンジニアも当社の業務やシステムについて知識が豊富なはずだ。当社の業務やシステムに関する知識、過去のプロジェクトで培った経験、ノウハウを生かせば、他のITベンダーを圧倒するような提案ができてしかるべきだろう。

 以前、受注システムを再構築しようとした際もそうだった。新システムのRFP(提案依頼書)を、このITベンダーに渡した。従来の受注システムはこのITベンダーが構築したもので、どのベンダーよりも詳しい。課題も熟知していたはずだ。

 ところがこのITベンダーは、「従来の受注パターンを変えずに、このような手順で処理しましょう」と言ってきた。提案内容が、従来システムの焼き直しだったことに、がっかりしたことを覚えている。

 もっと深いレベルで従来システムの問題点を分析したり、改善に向けた機能の追加・変更点を具体的に提示したりしてほしかった。「もう電話やファクシミリなどによるデータのやり取りは撤廃しましょう。Webを使った新しい受注方式に1本化したほうが効率も向上します」。このように従来のやり方に固執しないアイデアを出してもらえれば、印象は違ったと思う。

 これとは対照的に、さほど付き合いのなかった独立系ITベンダーの提案内容は良かった。このITベンダーは、他のユーザー企業で手掛けたシステムの成功事例を引き合いに出しながら、新システムのあるべき姿を提示してきた。

 このITベンダーは従来システムに関して詳しいわけではなかった。ハンディを乗り越えようとして、熱心に業務やシステムについて質問してきたのだ。我々はこのITベンダーに任せようと思った。ところが、残念なことに金銭面で折り合いが付かず、発注できなかった。

 こうしたこともあって、このITベンダーにはほぼ毎回、新規開発案件があると声を掛けている。実際に何度か仕事を任せたこともある。

 長く付き合っていると、当社の業務やシステム、人間関係に慣れすぎて、すきが生じるのだろう。我々が何を望んでいるのかを、常に意識して取り組んでほしい。(談)