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安池 俊博
After J-SOX研究会 運営委員
日本オラクル
製品戦略統括本部 アプリケーションビジネス推進本部 担当マネジャー

 今回から4回にわたり、内部統制(J-SOX対応)の運用改善や効率化にかかわる話題を取り上げていく。第5回となる本稿では、運用改善や効率化の具体策を、「IT」「業務」「運用」という3つの観点から検討してみたい。

 2008年度はJ-SOXの適用開始初年度であることから、J-SOX対応に取り組む企業の多くでは、特別な体制と予算が容認されているようである。しかし、この状況がいつまでも許されるわけではない。

 次年度以降も継続的に対応していくためには、内部統制の運用効率化とコスト削減が大きな課題となる。その解決のカギは、「IT」「業務」「運用」の3分野にある。本稿ではそれぞれのカギについて考察し、課題への取り組み方法を提案する。

J-SOX継続コスト削減のカギ(その1) ―― IT

 ここで、内部統制への取り組みの全体像を図5-1に示した。左側がフレームワーク(枠組み)であり、それに対応して、中央に「具体的な取り組みの例(実施基準に記述されているもの)」を、右側に「ITでの対応の例」を記述している。具体的な取り組みの例、および、ITでの対応の例は、上・中・下の3段に分かれており、それぞれはコスト削減のカギとなる「IT」「業務」「運用」に対応したものだ。

図5-1●内部統制への取り組みの全体像
図5-1●内部統制への取り組みの全体像
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 まず、「IT」について説明しよう(図5-1の(1)の部分)。これは主としてIT全般統制(IT業務処理統制の正確性を保証するために整備・運用する統制のこと)を指す。ここでのキーワードは「標準化・共通化」と「集中化」である。

 業務とITが切り離せない現在、IT基盤にかかわる不備は、業務処理全体に波及する。このため、データの安全性確保やアクセスの管理、アプリケーションの変更管理など、J-SOXに関連するシステムだけでも、相当な管理工数を割かなくてはならない。システムが分散していれば、なおさらである。これらは業務処理の評価と比べると小さく見えるが、効率化を考える上では重要な部分である。

 この効率化のために必要なことは、まず統一のフレームワークを用いてITの運用を標準化・共通化することだ。これにより、IT基盤の管理プロセスが標準化され、運用コストとともに有効性評価の負荷も軽減することができる。

 効率化のために必要な2点目は、複数に分散しているシステムを集中化し、管理する対象を削減していくことである。J-SOXでよく話題に上るID管理も、システムが分散化していると、IDの重複や削除忘れなどが問題になる。1カ所ですべての管理を実現できれば、あるいは、それが無理だとしても管理対象のシステムを少数に抑えることができれば、リスクは自ずと減る。

J-SOX継続コスト削減のカギ(その2) ―― 業務

 次に、「業務」について説明する(図5-1の(2)の部分)。これは内部統制の評価対象となる個々の業務プロセスを指し、J-SOX対応のコスト削減と効率化の効果が最も期待できる部分である。ここでのキーワードは「自動化」と「標準化・共通化」だ。

 評価すべき業務プロセスや統制(業務プロセスに含まれるリスクへの対処策)の数が多ければ、必然的に評価作業量は多くなる。では、どのようにすれば、膨大な評価作業を効率化することができるだろうか。

 そのために必要なことは、まず業務プロセスや統制の自動化を進めることだ。例えば、取引データからの自動仕訳生成や、入力時のエディットチェックなど、システムによって自動化できるプロセスや統制は極力自動化する。自動化されたプロセスや統制は、その有効性が一度確認されれば、その後は変更がない限り、過年度の評価にそのまま使うことができる。

 統制を減らすために必要な2点目は、業務プロセスの標準化・共通化である。評価対象となるグループ企業が10社あるとすると、それぞれの購買プロセスがすべて異なっていたら、10通りの業務プロセスを個別に評価しなくてはならない。しかし、10社が同じ購買プロセスで業務を行なっている場合は、1通りのプロセスを評価するだけで済む。こうした業務の標準化・共通化は、グループ全体で取り組むことで非常に大きな効果をもたらす。

 自社の例で恐縮だが、オラクルは世界規模で、これらの自動化、標準化・共通化をすでに実現している。詳細は次回に委ねるが、世界に150近くある拠点の業務をほとんど標準化し、ERPパッケージによって自動化できる統制をすべて自動化することで、大幅なコスト削減とスピードアップという成果を上げている。

 もちろん、標準化・共通化、自動化の作業は一朝一夕で行なえるものではなく、オラクル社においても構想から5年の年月を要した。経営者の強力なリーダーシップのもとで、本腰を入れて臨まなければ成功しない。だが、その効果はJ-SOX運用における効率化とコスト削減効果にとどまらず、次回で紹介するような多くのメリットをもたらす。