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北本祐子
フリーエディター&ライター。1975年,大阪生まれ,立命館大学産業社会部卒業。リクルート,日経BP,ソフトバンククリエイティブ,ITmediaなどを経て,2007年よりフリーに。IT(情報技術)系のビジネスインタビューから,インテリア,ファッション,映画レビューなど,様々なテーマで取材・執筆を手掛ける。

 ノートPC,デジタル・カメラ,携帯音楽プレーヤー――。

 登場した当時,だれもが驚き,技術の進歩に感嘆し,生活が変わると確信した製品があった。だれもが感じる確信は,時が過ぎるにつれて現実に変わる。製品が届けた革新は,当たり前に変わる。その製品がモノのあり方を根底から変えたことは,じょじょに忘れ去られる。

 本連載は,これらの世界を変えた製品を,再び見つめてみるものである。開発に直接携わった関係者を訪ねて,その製品が生まれた背景,実現した技術などを聞く。当時の事実を現在の視点から眺めることで,世の中を変えた技術と,技術者の本質を見ていきたい。

 この視点で見ると,電球,自動車など,現在の世界は革新的な製品に満ちあふれている。本連載では,我々の記憶がいくらか残っている,1990年から2000年ごろの日本の製品に注目していきたい。

持ち運べるWindows PC

 会議室で,喫茶店で,空港で。ノートPCを見ない日はない。デスクトップのPCと同じWindowsが動作するマシンを持ち歩いている。この光景を当たり前にした製品を探した。すると,明らかにこの世界を狙って世に出た製品があった。Libretto 20である(写真1)。

写真1●東芝「Libretto 20」。1996年4月,17万8000円(税別)で発売された
写真1●東芝「Libretto 20」。1996年4月,17万8000円(税別)で発売された

 Libretto 20は「オフィスのPC環境を外に持ち出す」というコンセプトのもと,世界最小・最軽量のWindowsマシンとしてデザインされた。サイズはVHSカセットとほぼ同等。重さは標準バッテリ込みで840グラムである。当時最新のパソコン向けOSだったWindows 95が,この大きさ,重さの中で,きちんと動作する。

 CPUはインテルDX4相当,75MHzで,メモリーは8Mバイトで20Mバイトまで増設可能。ハードディスクは270Mバイト。ディスプレイはVGA表示の6.1インチ。現在では想像できない低スペックではあるが,Windows 95がきちんと動いた。

 1996年4月17日,本製品は発表された。オフィス・ソフトのMS-Works Ver4.0や,経路探索ソフトの駅すぱあと'96,英和辞典などのアプリケーションをプリインストールしたCTAモデルが19万8000円(税別)。OSのみのモデルが17万8000円(税別)である。

 本製品の開発者は,現在も東芝に勤務していた。東京都青梅市にある東芝 青梅事業所を訪ねた(写真2)。

写真2●東芝青梅事業所。JR青梅線小作駅から徒歩数分のところにある
写真2●東芝青梅事業所。JR青梅線小作駅から徒歩数分のところにある