PR

数カ月前に決まったポインタ

 試行錯誤を繰り返し,狙ったサイズに製品を押し込んでいく。

 ポイントは二つある。一つは回路の集積化だ。現在は「チップセット」と呼ばれるCPU周辺の回路群は米Intelなどから購入するのが一般的だったが,当時は各社が開発していた。このチップセットは,様々なICを組み合わせて実現していた。

 Libretto 20の開発では,自社の半導体技術を利用して,従来複数のICに分かれていたチップセットを,一つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)にまとめた。Libretto 20専用にASICを開発し,実装する。CPU開発と同レベルの技術を盛り込んだ。

 前述したように,コネクタ類はすでに必要最低限だ。キーボードも,現在の携帯電話並みのキーピッチ。VGAのモニター,バッテリ…まだ狙ったサイズに収まらない。

 最後に決まったのは,「リブポイント」と呼ばれるポインティング・デバイスだ。マウスの役割を果たす。Librettoシリーズではモニターの右側に設けられていて,右手親指で操作する(写真5)。

写真5●モニター右側の突起がポインタ。押して傾けて操作する。モニター右上のボタンは電源
写真5●モニター右側の突起がポインタ。押して傾けて操作する。モニター右上のボタンは電源

 なお,マウスのクリックボタンに相当するボタンは,リブポイントの裏側,上ぶたの表面に設けられている(写真6)。

写真6●クリックボタンに相当するボタンは,上ぶたの表面にある
写真6●クリックボタンに相当するボタンは,上ぶたの表面にある

 この位置に決まったのは,初期モデル出荷の数カ月前だった。それまでは,キーボード中央に「アキュポイント」として実装しようとしていた。何度作り直してもうまくいかなかった。試行錯誤の中,モニターの横で空いていた「ここにつけたらどうだ」というアイデアが出た。

 試してみたら悪くない。立ったまま両手で持って使うときは,むしろ使いやすく感じる。狙った製品のサイズも実現できる。「これでどうにかなると思った」(佐藤氏)。1996年4月の発売まで残り3~4カ月。試作器を作り,量産バージョンへつなげていく。

「どうせ売れないから」

 製品開発に携わる彼らの熱意が高まる一方で,社内の企画会議や営業チームに開発中の製品を見せても,反応は冷たいままだったという。佐藤氏が聞いたのは,「こんなものは売れないよ」と言われたという。「何千台分の部品しか買うな,どうせ売れないから」。2年かけて生み,育ててきた商品の船出に,追い風は吹いていなかった。