PR

 前回の本稿では,地上アナログテレビ放送停波後をにらんだモバイル・マルチメディア放送の提供に向けて,一つの有力方式である「MediaFLO」の技術的な現状を報告した。今回は引き続き,クアルコムジャパンが開催した「MediaFLO Conference 2008」から,MediaFLO陣営が目指すサービスのイメージを説明する。

MediaFLOを使ったサービス/コンテンツの広がり
写真1●MediaFLOを使ったサービス/コンテンツの広がり
[画像のクリックで拡大表示]
 携帯端末向けマルチメディア放送は,放送波を利用して,同時性・同報性・広域性を担保するものである。MediaFLO陣営では,その前提の上で,テレビやラジオなどのライブコンテンツに加えてニュース,天気予報,番組情報などのデータ放送を提供する。さらに携帯電話にあらかじめ搭載されている通信機能を利用してVOD的な映像データのダウンロードサービスやプル型のコンテンツ・サービスを提供するハイブリッド型のサービスを検討している(写真1)。

サービスはキャリアフリーで提供
---メディアフロージャパン企画

 KDDI系列であるメディアフロージャパン企画社長の増田和彦氏は,MediaFLOを使った新しいサービスについて,「放送インフラと携帯電話の機能や通信インフラを併せ持つサービス。クロスメディアによる新たなビジネスを作りあげることがMediaFLOを日本で導入する大きな意義」と説明する。

 想定するMediaFLOサービスの利用者は,ずばり“携帯電話ユーザー”だという。「ワンセグの視聴スタイルには,自宅で視聴するスタイルがある。MediaFLOによるモバイル・マルチメディア放送も同様に,単純に“視聴者”という視点ではなく,“携帯電話ユーザー”に対してどれだけ魅力的なサービスを提供できるかがカギ」(増田氏)になる。

 ネットワークの作り方も,携帯電話ユーザーを意識したネットワーク構成も考慮する必要がある。現在,総務省情報通信審議会「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会」で議論されている,放送エリアの「全国/地域」の区分について,増田氏はこの視点から「携帯電話ユーザーが対象となれば,全国に自由に移動が可能。特定地域だけのサービスよりも,全国を対象とした広域サービスの方が使い勝手がよい」と説明した。

 メディアフロージャパン企画の株主と出資比率はKDDIが80%,クアルコムジャパンが20%である。しかし,増田氏は「KDDI向けにだけサービスを提供するのではなく,NTTドコモやソフトバンクモバイル,イー・モバイル,ウィルコムなど,KDDI以外の事業者にもサービスを提供することが基本的な考え方」と,説明した。

サービス提供時期より2年前の事業者確定を要望
写真2●サービス提供時期より2年前の事業者確定を要望
[画像のクリックで拡大表示]
 また,サービス開始までのタイム・テーブルについて,総務省の検討している導入スケジュールに異論を唱えた。総務省では2010年から免許手続きを行う予定としている。一方,メディアフロージャパン企画が要望している免許時期は2009年の夏ごろ。2011年7月の地上アナログ放送停波後にサービスを開始する場合「約2年間かけてネットワークの構築を行っていくことになるため」(増田氏)である(写真2)。

 こうした中,メディアフロージャパン企画は沖縄県の「ユビキタス特区」で,MediaFLOトライアルの実施準備を進めている。増田氏は「2011年からの提供に備えたMediaFLOサービスの在り方について,一般のユーザーも含めて実フィールドで検証していく」と,その意義を説明した。

グローバル展開を視野に低コストなサービス提供へ
---モバイルメディア企画

 一方,ソフトバンクグループのモバイルメディア企画 取締役の石原弘氏も,ターゲットとなる端末はメディアフロージャパン企画と同様に携帯電話だと考えているという。携帯電話ユーザーに対して,どのように放送サービスを提供するのがベストかが検討課題である。

 ソフトバンクがMediaFLOを採用した理由の一つとして石原氏は,「国内市場だけでなく海外市場も視野に入れたサービスやビジネスモデルの構築ができ,グローバル展開に期待していること」を挙げた。さらにグローバル展開による低コストの機器調達などに加え,「統計多重方式により周波数を有効に使えるため,ビット当りの伝送コストを最小にできる。これらの理由から,ユーザーへより安価なサービス提供が可能となり,サービスの普及促進につながる」(石原氏)と説明した。

 モバイルメディア企画が考えているMediaFLOのビジネスモデルは,ハードとソフトが分離している携帯電話のコンテンツ配信モデルを基本にしている。これは,放送と通信で縦割りになっている現行の法体系から,放送と通信を1つの法体系にまとめようと総務省が議論している「情報通信法(仮称)」の考え方に沿ったものでもある。

モバイルメディア企画が描くビジネスモデル
写真3●モバイルメディア企画が描くビジネスモデル
[画像のクリックで拡大表示]
 モバイルメディア企画ではコンテンツ配信プラットフォームを用意し,自前でサービスを行う部分と他社に貸し出す部分との2種類を提供する。例えば,携帯電話におけるMVNO(仮想移動体通信事業者)のように,MediaFLOの周波数帯域を一部リースするようなビジネスモデルや,携帯電話の料金代行のような課金プラットフォームの貸し出しも考慮している(写真3)。

 こうしたモデルにより,MediaFLOを使って自動車の車載端末向けに地図の更新サービスを提供するなど,様々プレーヤが参加できるメリットが生じる。「参加できるプレーヤが最大となるビジネスモデルを構築する」というモバイルメディア企画のビジネス・コンセプトを具体化する方策といえる。

 また,モバイルメディア企画は複数の放送方式を1台の携帯電話でサポートすることも検討している。放送方式にかかわらず,「簡単なユーザー・インタフェースを使い,見たいコンテンツを簡単に見られることが重要」(石原氏)と,モバイル・マルチメディア放送における「ユーザー・エクスペリエンス」の重要性を示した。さらに,複数の放送方式をサポートした携帯電話により,放送サービスの国際ローミング・サービスも検討しているという。