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 Web制作業者にとって,各種アワードというのはどのような意味があるのでしょうか。世界的に権威のある賞であるならば,知名度向上に直結するセールス的,マーケティング的な価値が大きいでしょう。しかし,それほどメジャーなものでなくても,非常に有益なアワードというものが存在します。受賞作は,トレンドの風速計であり,技術的スキルのバランス・バロメータでもあり,活きたサンプル教科書,或いはそれらへの入り口です。私にとって,今回のアックゼロヨン・アワード(正式名称:日本ウェブ協会主催アックゼロヨン・アワード2007)は,間違いなく,いろいろな意味で,その一つになりました。

アックゼロヨン(Ac+C'04)とは?

 「アックゼロヨン」とは,アクセシビリティとクリエイティビティの両立をテーマとしていることを表していて,「JIS X8341-3」というアクセシビリティに関する規格が制定された2004年からスタートしている活動です。それらの要素を組合わせた造語「Ac+C'04(アックゼロヨン)」が名前となっています。

 今回のアックゼロヨン・アワード2007は,応募作品総数187点を対象に,一次審査(入賞作品=ファイナリストの選出)と最終審査の二段階に分けて入賞作を選出しています。部門としては,6つ(コーポレートコミュニケーション部門,セールスプロモーション部門,エレクトロニックコマース部門,アカデミック・エデュケーション部門,公共・地域振興・その他のコミュニケーション部門)と,スポンサー賞,および大臣賞。一次審査と最終審査とは異なる審査員が行い,一次審査での評価は,6つの評価軸とそれぞれのポイントが公開されている点も特色の一つです。

6つの評価軸と,最終審査テーマ

▽評価の6軸
デザイン表現
ビジュアル・デザインやインタラクション・デザインの評価。機能や意味を考えたエレメント・デザインになっているか。
アイデア
サイトやコンテンツの面白さ,斬新さ。発想または着想の評価。
情報構造
情報構造のアーキテクチャ,情報設計の評価。コンテンツが最適化されているか。
技術
サイト実装やシステム構築にあたっての技術の難易度。用いている技術が優れているか,あるいは適切であるか。
ユーザビリティ
操作性,回遊性などの評価。使いやすい,利用しやすいかどうか。
アクセシビリティ
JIS X 8341-3やWCAG1.0などのアクセシビリティ・ガイドラインと照らし合わせて,アクセス性が確保されているか。

 最終審査のテーマは,「優れたコミュニケーションを提供しているか」。サイトとしてのレベルをある程度以上でふるいにかけつつ,このテーマの達成度が,部門別に評価されます。この「コミュニケーション」というのが曲者です。単なる情報発信ではありません,文字通りの双方向性を問題にしています。サイト構築者が出したい情報を並べているだけでは,「優れたコミュニケーション」にはなり得ません。誰に対して語り合おうとしているのかも,明確にしておく必要があります。そして,コミュニケーションの種類も,部門ごとに異なります。コーポレートサイトの目指すコミュニケーションと,ECサイトが目指すコミュニケーションは自ずと異なります。それぞれのケースでの「優れた」ものを選ぶという,審査員にとってかなりヘビーなことが行われています。

 審査員が変わるのは,一次審査で行うレベルチェックとは異なる感受性というか,センサーが大切であるということを示唆していると受け取っても良いのかもしれません。対象ユーザーをその入り口まで引き込めても,その一歩先へ惹き付ける「何か」が存在し,それを別の評価軸で見ようとしているように感じます。前者(入り口までの導入)は技術などの学習可能な部分で多くをまかなえるでしょうが,後者(入り口から後)は才能的なもの,本能的なものが必要なのかもしれません。それはクリエイティビティや,センスと呼ばれるものかもしれません。

開発実装スキル(総合チーム力)とディレクション

 そう考えると,このアワードの評価軸は,サイト構築のポテンシャルを如実に評価できるもののように見えてきます。HTMLやCSSのTipsをいかに知っていようと,正しいディレクションがなければ,優れたコミュニケーションは実現できません。逆に,どんなに高尚な夢を語り目指しても(ディレクションは正しくても),実装する力がなければ,やはりサイトを作ることができないので,コミュニケーションは成立しません。組織としての力は,このような形で評価されるのでしょう。

 私自身はRIACなどでユーザビリティの大切さを語る側に属していますが,個人的な部分では,「優れたクリエイティビティは,ユーザビリティを凌駕する」と思っています。個人的に好きなサイトの多くは万人受けするとは思っていませんし,自分の妻や子ですら,それらを使いこなせるとも思っていません。間違いなく,使い方がわからずに立ち往生するでしょう。でも,私はその作者の意図とコミュニケーションができたりします。もちろん逆もあるでしょう,私には理解も使い方も理解できないモノに,子供たちがはまるという状況です。使いやすさに勝る魅力は存在します。ただ使いやすいことが,優れたコミュニケーションにはならない往々にして場合があります。コミュニケーションとは,そうしたちょっと複雑な部分を含んでいます。

 このアワードが興味深いのは,評価方法だけではありません。入賞サイトを見ると,かなりの企業を少しは知っていると思える点です。大企業も中堅企業も混じっていますが,知る人ぞ知るアーティスティックなサイトが並んでいる訳ではないのです。そして,それらのサイトが同じ6軸で評価されていて,点数が公開されています。これは,Webサイト構築における「品質」が数値化されて並べられているということを意味します。もちろん,絶対的な評価ではなく,この評価軸,この審査員におけるものです。でも,感覚的な指示によって開発で苦労されている方にとって,これは紛れもなく一つの「モノサシ」になります。