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 自社にない欧米企業の業務ノウハウや最新パッケージの導入経験を獲得する。これが、グローバル・ベンダーに仕事を任せる3つめの理由である。

 大和証券SMBCは、コンピュータで株式を自動発注する「アルゴリズム取引」など、新しい注文形態に対応した新システムの構築を予定している。半年以上の検討期間を経て、パートナーに選んだのは、インドのTCSだ。村里耕二システム企画部長は、「欧米の投資銀行や証券会社のシステムを多数構築した実績を評価した」と説明する。

 TCSのバンガロール拠点で銀行・金融サービス部門責任者を務めるスディール・ワリア氏(写真1)は、「欧米など世界の投資銀行と証券会社10社強の仕事を、ここで担当している」と強調する。日本ではアルゴリズム取引が欧米ほど普及していないことから、大和SMBCが求める要件を備えたシステムを開発した経験のある日の丸ベンダーは、ほとんどない。

写真1●欧米での経験を武器に日本向けの案件に従事するTCSのインド人技術者
写真1●欧米での経験を武器に日本向けの案件に従事するTCSのインド人技術者
左はバンガロール拠点の銀行・金融サービス部門ヘッドのスディール・ワリア氏(最前列右)と、バンガロールの大和証券SMBC向けチーム。最前列左の女性がチームリーダーのウマ・リジワニ氏。右は、東芝などを担当するコルカタのチーム幹部。手前右から2人めが日本オフショア・デリバリセンターのヘッド、サンジーブ・バスー氏

 TCSは大和SMBC向けチームも金融部門の総本山であるバンガロールに設置。6000人の金融技術者から、保有する技術や業務知識に応じて30人の精鋭を選んだ。リーダーのウマ・リジワニ氏はベテランのマネジャだ。技術者歴が17年に及ぶ。大手投資銀行のプロジェクト・マネジャの経験を買われ起用された。

 30人の専任メンバーとは別に、TCSは証券業務そのものに詳しい専門チームも確保。必要に応じてプロジェクトにアサインする。大和SMBCの村里部長は、「インド人技術者の経験と頭脳に期待している」と話す。

最新ERPの導入ノウハウを獲得

 東芝は、最新パッケージの導入ノウハウを求めてグローバル・ベンダーにたどり着いた。90年代後半に、セミコンダクター社のSCMシステムの構築をインフォシスに委託したときがそうだ。米オラクルのERPパッケージ「Oracle EBS」と、i2テクノロジーズの需要予測ソフト「i2」を導入するプロジェクトである。

 今でこそOracle EBSの技術者は国内にもたくさんいるが、当時は「まだ少なかった」(峯村センター長)。そこで、欧米でデファクトとなった業務パッケージに精通したエンジニアを豊富に抱えるインフォシスに声を掛けた。

 当初は「インドのベンダーとの付き合い方が分からず苦労した」(同)。だが、オンサイトの要員を増やして一緒にプロジェクトを進めるうちに、パッケージ導入ノウハウを引き出し、プロジェクトを成功させることができた。

 東芝は、デジタルメディアネットワーク社とPC&ネットワーク社でも、Oracle EBSとi2を利用してSCMシステムを構築。保守などをTCSに委託している。コルカタにある日本オフショア・デリバリセンターのヘッド、サンジーブ・バスー氏は、「TCSは全社で5000人のOracle EBS技術者を抱える。SAPの技術者は3500人だ。どちらも多数の経験を通じて得た導入ノウハウを提供できる。急な要請にも対応が可能だ」とアピールする。

グローバルへの道を模索する国内ベンダー

 国内の大手ベンダーが海外事業の強化を急いでいる。製造業を中心にユーザー企業自身が海外ビジネスを拡大しており、IT投資が海外に流れ始めているからだ。ここでグローバル・ソーシングに対応できなければ、海外ベンダーに案件をさらわれてしまう。

 富士通、日立製作所、NEC、NTTデータの4 社はこの3年で、海外のソフト・サービス企業23社を買収した。この2月19日には、日本ユニシスがインドのインフォシス・テクノロジーズとの包括提携を発表した。9万人近い技術者を世界に抱えるインフォシスの動員力と欧米での経験を武器に、国内のグローバル企業からの受注拡大を目指す。

 問題は、グローバル化の流れに乗れない日の丸ベンダーである。これまでは顧客の意を汲んだ提案を出してさえいれば、一定の仕事はもらえたかもしれない。むしろ、顧客の要望に沿ったシステムを作り込むことで、顧客を囲い込むことすらできた。そう遠くない将来、特に大手ユーザーにはこの戦略が通用しなくなるのは間違いない。

 海外拠点のサポート、技術者の急な動員、扱ったことのないパッケージの導入を求められたときに、応えられなければ仕事を失う。グローバル・ソーシングが国内ベンダーの再編を促す可能性は高い。



<過去に掲載したグローバル・ソーシング関連特集>

グローバル・ソーシングに挑むユーザー企業17社の決断(全18回)

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