PR

 「六つの仕掛け」は実際の開発作業を支える考え方と仕組みである。今回は,「ドキュメントを標準化する」「自動生成する」「作業実績を管理する」という三つの仕掛けを説明する。

仕掛け4:ドキュメントを標準化する

 富士通アプリケーションズは,設立当初は詳細設計から受託して製造工程を実施していた。基本設計書を受領してから開発を行うのだが,これがまったくバラバラな書式,記述レベルとなっていた。これでは生産性の改善はもとより,そもそもの品質の確保すらおぼつかない。このため製造側から設計側に設計書の書き方,記述レベルのお願いを始めたのがきっかけになっている。

 製造側として欲しい設計書のフォーマット,レベルに関して実際の例を作成して検討を重ねてきたが,現在では設計書のレベルの診断システムとして完成している。基本設計書には「顧客の視点」「SEとしての視点」「製造側としての視点」があると考えている。それぞれが満足できる設計書が作成できれば,プロジェクトとしてのリスクは非常に少なくなる。これらを事前に診断して設計書としての完成度を評価することで不足部分を事前に明確にし,先送りを防ぐことが可能となっていく。

 今後は,内容は十分でかついかにドキュメントの絶対量を減らすかに挑戦していきたい。作らない,書かないは生産性を向上させるための重要なファクターである。

仕掛け5:自動生成する

 現在のJava開発では,多くの企業が自動生成を活用しているだろう。富士通アプリケーションズの自動生成は2004年から開始したソース・プログラムの分析から始まる。この分析ではプログラム全体の60%は方式依存(フレームワークなど)と,Java,EJBの作法の部分となる。さらに業務部分の20%は単純転記などであり,実際のロジック部は多くて20%と結論づけられた。

 富士通アプリケーションズの自動生成への考えは,自動化を目的とせずに,決まりきった部分や単調な部分,言い換えると単純作業から自動化を開始している。現状ではほとんどのプロジェクトで何らかの自動生成を行っており,かなりの生成率となるフレームワークも存在している。

 一方,設計書に着目すると,基本設計書から詳細設計書に落とす過程では30%強が転記の作業となっていることが明らかになった。このためフォーマットの規約が徹底されたプロジェクトでは,この設計書間の転記に関しても自動化を行っている。

 自動生成の開発またはカスタマイズは,開発規模によってはコストとの見合いになる。今後はいくつかのアイディアを基にこのコスト問題を改善すべく作業中である。

仕掛け6:作業実績を管理する

 最後の仕掛けは,富士通アプリケーションズにおける生産管理システムである。この仕掛けの目的は「見える化」を実現するかにあり,いかに「問題の早期発見」を行うかである()。プロセス,基準時間などに対して仕事票を使用して作業実績を把握し,基準時間との差異からどこに課題があるかを把握する。そして「カイゼン」とリスク管理を行う。仕事票から毎晩実績管理システムが稼働して翌朝には各リーダーにプロジェクトの進捗リストが配信される。

図●現場の異常を早く発見する
図●現場の異常を早く発見する
[画像のクリックで拡大表示]

 いくつかのプロセスをまとめた工程の各プロセスの完了が把握できるため,工程の進捗をかなり正確に把握できる。同時に基準時間にたいしての工数の消化率も把握でき,結果として問題点が自動的に抽出可能となる。従来の作業者の申告による進捗把握と比べ大幅な精度の向上が見られる。

 基準時間もある仮説の上で設定しているわけで,この実績から仮説の検証を行い新しい仮説を立て,チャレンジ,検証してさらに次の仮説を立てる。このような繰り返しが工業化の生産性,品質向上,そして納期短縮の「カイゼン」のサイクルとなる。

 ソフトウエア開発の工業化に対する当社の取り組みはまだ始まったばかりである。しかし日本の製造業の持つ物づくりの強み,現場力をソフトウエア開発に生かさない手は無い。物づくりのプロとしての技術を持つこと当然として,さらに確固たる製造技術を持つことが必要である。標準化も規約もプロセスもみなそろってきている。後はそれらを「規律正しく・愚直に,守る,守らせる」ことが一番困難なテーマである。それに耐えうる人材を育成することを目指している。

渡辺 純
富士通アプリケーションズ 代表取締役社長
1974年,富士通入社。SEとして主に食品製造業の顧客企業を担当。1996年よりERPパッケージGLOVIAを統括。2002年よりJavaアプリケーション開発専業会社である富士通東京アプリケーションズの社長に就任。2004年より現職。アプリケーション開発における見積問題をはじめ,製造プロセス,開発マネージメント全体にわたる,技術,方法論の開発・導入に取り組む。また,ソフトウエア開発におけるトヨタ生産方式の積極的導入を図る。