NTT(持ち株会社)は2007年度の連結決算で,売上高が10兆6809億円と前年度に比べて減収となった一方,営業利益は1兆3046億円と前年度比で1976億円の増益だった。今回は,決算と同じ5月13日に発表した今後5年間の事業計画(新中期経営計画)の中から,次世代ネットワーク(NGN)を利用した映像関連事業について考えてみる。
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写真●2007年11月に幕張メッセで開催された放送機器展で行われたNTTグループの映像配信デモ [画像のクリックで拡大表示] |
NTTの新中期経営計画のキャッチフレーズは,「サービス創造グループを目指して」である。それを実現する柱として三浦惺社長は5月13日の会見で,「NGNや3Gシステムなどを活用したビジネス」,「ソリューションビジネス」,「エネルギー環境など新分野のビジネス」,「グローバルビジネス」の四つを挙げた。さらに三浦社長は,「2010年には,固定通信と移動通信がシームレスな環境になってくる。移動通信もスーパー3Gを中心に、フルIPネットワークを構築していく」と述べた。
サービス創造グループを目指しNGNを拡大
事業の柱の一つであるNGNは2008年3月末に商用サービスが始まり,2010年度までに現在のFTTH(ファイバー・ツー・ザ・ホーム)サービス「Bフレッツ」の提供エリアに広がるもようである。各家庭にある様々な家電機器や映像・音声端末,セキュリティー端末,監視カメラなどを,「IPv6」によって制御することを可能にする。これらの機器が使用されるサービスがどれだけ家庭に浸透するかという見通しが立てばNTTも,各世帯の情報支出の予測が可能となってくるだろう。
NGNの普及を後押しするサービスの一つとして地上デジタル放送のIP再送信が始まったと,筆者は理解している。5月9日の東京都に続き、5月23日には大阪府でも始まった。NHK(大阪放送局)と近畿広域圏の準キー局4社,テレビ大阪のチャンネルが同時再送信されている。NTT西日本が提供する「フレッツ光 ネクスト」を契約し,各電話局が再送信の信号を通せる条件を満たした世帯で利用できる。
アップグレードが不可欠の地上デジタルIP再送信
NGNを利用した映像配信サービスを利用するには,NTTぷららから受信機をレンタルしたうえで,月額1200円ほどの基本サービス(地上デジタル放送のほかに、独自のプロモーション番組やショッピング番組,海外の国営放送系チャンネルなどが含まれる)料金を支払う必要がある。サービスは始まったばかりであるため,番組内容や視聴料金の見直し,HDTV(ハイビジョン)対応受信機の確保には時間がかかるだろう。普及のためには,課金システムや受信機の品ぞろえなどのアップグレードも不可欠である。
将来的なサービスとしては,HDTVの番組を外出先で携帯電話機を使って録画予約し,帰宅後に視聴するといったものが考えられよう。2011年にはその録画番組を,ホームサーバーを介してFOMAなどの3G回線に接続されたPDAを使って自宅外で視聴するといった,フルIPネットワークを具現化したサービスイメージの訴求も大切である。
一方、低価格のホームカメラや災害情報の独自検索といった安全・安心に関するサービスにも,エンドユーザーは関心があるのではなかろうか。NGNを利用した映像配信サービスを普及させるためにNTTグループが有機的に取り組んでほしいと感じていたところ,「中期経営戦略推進室」が設置されるという報に接した。これにより,人材の集約も期待される。
■変更履歴 本文で「中期経営戦略推進室も設置されたとのことで」とありましたが,中期経営戦略推進室はまだ設置されておらず,設置することが決まった段階です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。[2008/06/03] |
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