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 ワーキング・グループ(WG)3は,当初,標準規格のフレームワークを中心に考えることを担当する役割を担う予定だった。だが,実際の活動はそこから大きく動いた。「プロジェクトマネジメント規格を他のISO規格とどのように位置づけるか」「プロジェクトマネジメントを組織戦略とどのように関係づけるか」「プロジェクトマネジメントの目的をどこにおいて標準として記述するか」などの課題解決を担うことになったのである。

 WG3作業参加国は13カ国(総勢23人)である。日本からは3人が参加している。全員で討議した内容は,下記の通りである。

プロジェクトに付き物の三つの制限

 プロジェクトマネジメントは,与えられた条件の中で,バランスを取って最大限の効果を出す活動と考えられる。このテーマを標準の中で記述するために,当初「タイム,成果物,リソース」のバランスが必要だというところから議論が始まったが,皆でより良い言葉を探した結果「タイム,スペッシフィケーション,コスト」に変更された。

プログラムマネジメントの議論は持ち越し

 参加しているプロジェクトマネジメントの専門家の多く(中には標準規格の専門家も出席している)は,単に標準を記述するだけではなく,組織戦略,事業機会の拡大,事業の選択(ポートフォリオ),複数のプロジェクトのプログラム管理までを含めて,標準の範囲を規定したかった。戦略,ポートフォリオ,プログラム,定常業務などの議論が出て,一時はその方向で詳細記述に入りかかった。

 ところが,結果的には,組織の戦略,戦略の選択,プロジェクトマネジメントなど作業範囲を単純・簡潔に明示し,利益につなげるまでの穏やかで簡潔な記述に落ち着いた。メンバーの中でも意見が分かれ,さらに明確な記述をすべしとの意見が多数を占めたのだが,ステアリング・メンバーの要求でしぶしぶ簡略化を選んだ感じだった。このあたりは,ISOのほかの規格との整合問題,規格の階層問題を考慮して,まずはこの規格を合意できるレベルに簡潔に仕上げ,できれば将来,次のプログラムマネジメントなどのシリーズ規格へつなげる布石とも取れる。

ポートフォリオマネジメントの記述は削除

 当初は,ポートフォリオマネジメント,プログラムマネジメントの定義,それらのツール記述を少し詳細に記述すべしという意見が大勢で,委員の中で作業を進めていた。ところが,WG2,WG3の共通会議やステアリング・メンバーの要請があり,記述そのものを削除すべしとの話になった。一時期は書きかけたが,最終的には削除した。

ガバナンスに言及

 プロジェクトマネジメント関係の世界では”ガバナンス”が一つの流行言葉となっている。その言葉をプロジェクト進行の主要な節目(プロジェクトの選択,オーソライズなど)で,誰が権限を持つかについて,議論し,表にまとめた。これらは,安易なプロジェクトマネジメント手法が行き過ぎたコスト削減を狙ってきたことに対する歯止めをかけようというものである。

 過度なスポンサー要求に現場が迎合することに対するチェックポイントを,誰の責任で進めていくか標準の中で明確に記述する。それにより,合理的な判断と権限関係を明示し,無駄な手戻りを起こさせないようにすることを狙っている。

コンピテンシは議論を重ねる

 日本チームが提案したコンピテンシについても,標準にどのように記載すべきか議論が重ねられている。会合の時間内では,最終結論が出ず,持ち越して作業を進めていくことになった。基本的には,プロジェクトに必要な個人,チームのコンピテンシを日本とフランスが検討し,IPMA(国際プロジェクトマネジメント協会)がサポートし,サブWGのなかで素案をまとめるという形で作業を行っている。

全体のとりまとめは80歳代の英国紳士

 国により,標準化に対する熱意が大きく異なる。それが端的に表れるのが,参加者の数や発言の熱意である。明確に感じることは,米国のようにプロジェクト・マネージャの仕事が個人のコンサル型で成立しているところでは,とりまとめの方を含めたいそう高齢な(おそらく80歳代でPMP認定1桁台の)方が議論の取りまとめに参加したり,WG1の代表のように50歳代の後半の女性が,詳細な単語定義を精密に取りまとめていたりする。このような風景のを見ると,年配の方のパワーを感じる。考えてみれば,全体のとりまとめは,英国紳士の80歳代の方だった。

 この方は初回から「早く決めたい」と初回から話していた。「死ぬまでにプロマネの標準をまとめたい!」と言っているようで,何とか協調したい気持ちにさせてくれる。これが今回の原動力かもしれない。