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 NHKの次期経営計画の輪郭が見えてきた。執行部が2008年5月27日の経営委員会に,次期経営計画の素案を提示したからだ。執行部は今回の素案において,中期経営計画の主な推進項目を示した。素案の推進項目には,受信料の公平負担に向けた対策が盛り込まれている。具体的には,「様々な施策を通じて支払い率を高めて公平負担を徹底する」ことや,「営業職員・地域スタッフの役割・体制の抜本改革を実施する」といった方向性を示した。一方で受信料の引き下げについては,「収入の低い高齢者に対しては割り引きや免除などを検討する」という記述を盛り込むにとどめた。受信料の引き下げは,次期経営計画の焦点の一つになっている。この問題に関心を持つ人の目には物足りないように映る。

 素案に受信料の引き下げに関する具体的な記述が盛り込まれなかったことには,いくつかの理由がある。次期経営計画については,経営委員会が2008年3月に「重要検討事項」を示している。中期経営計画を作成するうえで検討すべきと考える事項をまとめたものだ。経営委員会は受信料の引き下げについて,「最初に数字ありきで考えていない。受信料の公平負担や抜本的な構造改革などを検討した後で余る部分が出てくれば,引き下げに充当することを検討すべき」とした。一方,受信料の公平負担を実現するための対策に関しては,「未払い者と未契約者への対策や支払い率向上の目標を明らかにしてほしい」,「受信料収入の拡大につながるような収納体制の在り方について検討をしてもらいたい」といった点を執行部に要望していた。

 このように経営委員会は,受信料の公平負担に向けた体制の整備や構造改革の内容を固めて,それらの実現にどの程度の費用が必要かを明確にしたうえで,受信料引き下げの検討を進めることを執行部に求めている。現在,執行部は次期経営計画の素案を作成した段階であり,受信料の公平負担などを実現するための対策の具体的な中身を決めていない。このためNHKは現段階で,受信料の引き下げを実現する方法や具体的な引き下げ額を示さなかったのである。

 NHKは今回の素案で,「無駄のない,より強じんな公共メディアへ転換する」などの推進項目を挙げており,それぞれを実現するための対策を明らかにしている。今後,執行部が対策の具体的な中身を詰めていけば,必要な費用の試算が可能になり,収支計画を作成できるようになる。これにより,今後NHKが確保する利益のうちどの程度を受信料引き下げの原資にできるかが明確になる。

 このように考えるとNHKが今回示した素案は,受信料引き下げの具体的な中身を決めるプロセスの第1歩といえる。NHKは次期経営計画の1次案を,2008年7月末に作成する予定だ。最終案は2008年9月末に取りまとめるとしている。