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秋山 進
ジュリアーニ・コンプライアンス・ジャパン
取締役・マネ―ジングディレクター

小林 亮介
調達推進基盤 代表取締役社長
 


4.適正化の実行と検証

 これまで、契約の調査、結果分析や是正方針の検討、購買戦略の見直しなどを行ってきました。
 最終回の今回は、具体的な適正化の方法について述べていきたいと思います。

問題契約切り替えの方法

 それでは、問題契約の具体的な是正の方法を考えてみましょう。
問題契約の対応方法は、基本的には以下の選択肢のどれかになります。

<現在稼働中の技術者を継続させる場合>
(1)派遣契約に切り替える
(2)違反状況の改善を行って、適正な請負・準委任に変更する
(3)社員として、直接雇用する

<他の技術者と入れ替える場合>
(4)新たな派遣契約を締結する
(5)適正な請負・準委任で新たに発注する
(6)外部の活用を見直して、社員と置き換える

 近年は、慢性的な技術者の不足により、新たな人的リソースを確保することはなかなか難しいと思われます。そこで、まずは現在稼働中の技術者を継続させることを前提に進めるのが良いと思います。
 しかしその妨げになるのが、アンケートで質問した“外注企業が別の下請け企業に再委託しているか?”という階層構造を持った商流の存在です。

 委託先がさらに再委託している場合は、実際に働いている技術者は委託先の社員ではありません。したがってこのままの商流では二重派遣になってしまうので、派遣契約に切り替える(!))という手段を取ることができません。この場合は、商流を見直して再委託先の企業と直接契約を行うか、契約を解除して技術者の入れ替えを行うことしかなくなってしまいます。

 実際に、ひとつ飛ばして再委託先と契約するということは、契約先の企業にとっては抵抗の大きいものです。関係を悪くしては、今後の調達戦略に悪影響を及ぼす可能性もあります。そこで、直接契約する代わりの条件として、優先的に新しい案件を紹介するなどの配慮をしながら進めていくことが求められます。

適正化ガイドラインの作成と浸透

 次に、契約の適正化の方向についてガイドラインをまとめ、現場の社員に配布していきましょう。その際には、現場社員の理解度を上げるために、下記の項目はおさえておくとよいでしょう。

(1)会社としての適正化についての基本方針
(2)いつまでに何をどう変えるかの段階的スケジュール
(3)派遣と請負に関する説明
(4)契約締結時に必要となる項目や書類
(5)会社が推奨する受発注契約形態の説明

 社員は法律に詳しいわけではありませんから、法律用語をかみ砕いて説明しましょう。
実際の現場での状況に合わせて、例えば指揮命令とはどこまでが良くてどこからがだめなのかなど、具体的な事例で説明すれば、理解も進み、建設的な問い合わせがもたらされるようになります。

 また、ガイドラインの配布とあわせて、営業担当者向け、プロジェクトマネージャー向けに社内教育も実施するとより効果的です。それなりに工数がかかりますが、忍耐力をもって継続的な取り組みをしていかなくてはなりません。

外注(パートナー)企業への説明の実施

 外注(パートナー)企業にも、適正化の方針を理解してもらう必要があります。
最近では、偽装請負の問題で、先行きの不安を抱いている中小規模のシステム開発企業が数多く存在しますので、その不安を取り除く意味でも、今後の適正化の方針について明確に説明できるようにしておきましょう。

 今後はこんなサービスの提供を受けたい、こんな契約は今後発注しない、等、を具体的に説明すると先方の理解も進みます。その結果、こちらの方針を納得していただいた企業とは、これまで以上に良い関係が構築できるようです。

 さて、これまで8回にわたってIT業界の偽装請負を適正化していく方法について、お話してきました。
 偽装請負に対する是正指導も、数年前までは製造業が中心でしたが、これらの業界ではかなり偽装請負の理解や是正も進みました。いよいよ今年から来年にかけてIT業界が是正指導の中心になることが想定されます。

 早めに万全な計画を作り、改善を進めていけば、問題を引き起こすこともないと思われます。本コラムが適正化を進める企業に少しでもお役に立てることを願っております。

注)当コラムの内容は、執筆者個人の見解であり、所属する団体等の意見を代表するものではありません。


秋山 進 (あきやま すすむ)
ジュリアーニ・コンプライアンス・ジャパン
取締役・マネ―ジングディレクター
リクルートにおいて、事業・商品開発、戦略策定などに従事したのち、エンターテイメント、人材関連のトップ企業においてCEO(最高経営責任者)補佐を、日米合弁企業の経営企画担当執行役員として経営戦略の立案と実施を行う。その後、独立コンサルタントとして、企業理念・企業行動指針・個人行動規範などの作成やコンプライアンス教育に従事。産業再生機構の元で再建中であったカネボウ化粧品のCCO(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)代行として、コンプライアンス&リスク管理の体制構築・運用を手がける。著書に「社長!それは「法律」問題です」「これって違法ですか?」(ともに中島茂弁護士との共著:日本経済新聞社)など多数。京都大学経済学部卒業

小林 亮介(こばやし りょうすけ)
株式会社調達推進基盤 代表取締役社長
PMI( Project Management Institute)認定PMP(プロジェクト・マネジメント・プロフェッショナル)
金融、ITベンチャーを経て、株式会社パソナテック入社。 人材派遣・紹介に続く、主軸事業となるアウトソーシングビジネス(上流高付加価値サービス)の 新規事業企画および実行に従事し、責任者として事業を統括。 その後、人事・外注戦略立案および契約適正化等を行うコンサルティング部門を設立、部門長。 市場ニーズからサービス開発を行い、IT戦略立案、受託開発から各種専門コンサルティングの メソドロジーを策定し、セールスからサービスデリバリ、プロジェクトマネジメントを担当。 2007年に、派遣と請負に関する適正な区分を推進し、IT業界の受発注における構造改革を ミッションとする株式会社調達推進基盤を設立、代表取締役となる