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横井 正紀
野村総合研究所 情報・通信コンサルティング部
上級コンサルタント グループマネージャー

 中国には軟件園(ソフトウエアパーク)という基地が政府の肝入りで構築されている。これは、中国政府のいわゆる大国政策の一つである「国家たいまつ計画ソフトウエア産業基地」であり、大連、天津、成都、西安、武漢、南京、無錫、蘇州、広州、杭州など、当初は11の都市でこの基地化への取り組みが始まった。これらの基地では国内外の企業を集積させ、税制優遇措置を絡めながら産業育成を行うのが基本方針である。

 その代表は、日本から空路で約3時間のところにある大連。今年、世界経済フォーラム主催の「ニューチャンピオンズ会議(通称:夏のダボス会議)」が中国では初めて行われた都市である。

 この大連市の西南端の星海湾に、大連ソフトウエアパーク(DLSP)という大規模なソフトウエアの生産集積拠点がある。既に完成している第一期の広さは3平方キロメートル。皇居二つ分の広さに相当する。もはや小さな街という様相であり、企業のオフィスのほか、幼稚園や大学などの教育機関、住宅や商店などもある。集積している企業数は390社を超え、その4割が外資系企業だ。米IBMや独SAPなどの米国系企業をはじめ、ソニーや松下電器産業、オムロン、アルパインなどの日系企業も拠点を構える。既に、第一期の場所だけでは足りず、約8.6平方キロメートルにおよぶ規模でDLSPの第2期工事にも着手している。

 大連市はこの拠点を、中国のソフトウエアと情報サービスに関するアウトソーシングセンターと位置付け、日本との関係を特に重視している。日本企業からの受託を積極的に行なうことができるように、人材教育にも非常に熱心だ。開発言語や技術的なスキルの教育に加え、日本語教育も力を入れている。そのため大連市は、日本語が使える人材が中国でも最多といわれており、事実、街中でも日本語を使える若者は多い。

 また、日本との関係を強化していくために、昨年から大連市情報産業局は日本のプライバシーマークと同じ制度を導入し、中国系企業の認定を始めている。セキュリティに厳しい日本企業の信頼をより高め、さらには大連のICT産業の品質の高さを標榜していくことが重要と認識とした施策である。

 このような積極的な大連の取組みに対しては、中国でもアウトソーシング基地の成功モデルという評価が高く、それが「アウトソーシング基地の大連モデル」と呼ばれる理由になっている。企業の信用重視と品質保証を新たな競争力とする大連は、着実に中国を代表するソフトウエア開発拠点の地位を築いてきている(図3)。

図3●代表的な都市の言語能力・コスト比較
図3●代表的な都市の言語能力・コスト比較
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オフショア開発とオフショア運用

 中国アウトソーシングの中でオフショアというと開発のイメージが強いが、運用に関してもオフショアが進んでいる。いわゆる監視などの分野である。

 中国の情報通信市場は2004年で約4兆5000億円。オフショア開発規模は3000億円を超える。日本向けに限れば約1500億円の規模だ。2008年に向かっては、開発市場とともにオフショア運用市場が成長し、08年にはオフショア運用がオフショア開発の1/2程度まで成長すると推測している(図4)。市場は08年で7000億円規模になると思われる。

図4●中国のアウトソーシングの傾向の変化。運用市場の割合が高まっている
図4●中国のアウトソーシングの傾向の変化。運用市場の割合が高まっている
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 既に、中国国内から日本企業のサーバー監視をする企業も登場しており、障害対応の一次レベルまでを対応している。企業のシステム管理、データセンター連携、アプリケーションマネジメントなどの点でも、オフショア運用スタイルが増加する可能性は十分にある。