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横井 正紀
野村総合研究所 情報・通信コンサルティング部
上級コンサルタント グループマネージャー

 中国へのアウトソーシングは日本だけのものではない。諸外国も中国へのアウトソーシングを真剣に考え始めており、その動きが加速化してきた。特に中国の南の地域ではその様相が顕著である。

 このような動きが顕著になってきた背景の一つは、中国の人材力の向上だ。優秀なエンジニアが育ち実力を付けてきたことを、諸外国の企業が認めている。その結果、インドで処理することができない業務が中国本土に移されてきているケースが増加している。EDSは、武漢に活動拠点を広げた理由の一つとしてそれを挙げている。

 もう一つの背景は、新華僑によるビジネスチャンスの創造が活発化してきたことにある。トウ小平時代に始まった諸外国への留学によって、新しい技術や考え方を吸収した中国の人が世界各地に点在しているとともに、中国にも大量に戻ってきている。この人脈ネットワークを活用して、新しいビジネスチャンスをつかみ、中国本土に限らないダイナミックなリレーションから事業化を加速している。

 日本と中国という限られた枠組みの中での分業モデルを越え、地域やその企業の特徴に応じてタスクを適材適所に配賦することによって生まれるビジネススタイルは、既に単純なアウトソーシングという概念ではなく、グローバルソーシングの領域に達してきているのではないかと思われる(図8)。

図8●中国アウトソーシングのダイナミズム
図8●中国アウトソーシングのダイナミズム
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モチベーションを維持するには

 WTO(世界貿易機関)への加盟によって、中国への外資の流入や外資企業の参入が加速してきている。今後、中国政府はオープン戦略とクローズ戦略のバランスをうまく保ちながら、政策の舵取りをしていくものと考えられる。

 その中にあって、これまでオフショア取引額で1位を保っていた日本は、その地位を2008年に欧米に譲ると見られている。つまり、欧米から中国への仕事の流入が日本からのそれを上回るのである。その動きは前述のように、長江デルタ付近をはじめ中国南部の地域で既に始まっている。

 北部の地域では日本語に対するモチベーションはまだ高く、「日本びいき」の都市も少なくない。今回紹介した大連などはその典型である。中国と欧米との関係が強化されている現実を見ると、日本語教育に積極的で、かつ優秀なSEを抱えている企業や都市に対して、日本あるいは日本企業は、将来をにらんで政策的に取り組む必要があるかもしれない。そして、そのような取り組みを続けることによって、日本企業と中国企業の双方が、アウトソーシングを通じて互いにメリットを享受できる関係を構築することが、今まさに求められていると思う。

 それを怠り、日本の下請け的関係だけを強調してしまうと、日本企業は大きなしっぺ返しを食らうだろう。中国のオフショアはコストカットを目的に始まったが、将来に求められるのは価値の共有ということになる。アウトソーシングを介した中国と日本の関係は、そのような視点から「第二の局面」に入ってきているのだ。