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企業の現場ユーザーに、初回のプレゼンから専門用語を振り回す失敗を犯したERPのコンサルタント。しかし失地回復を図った提案で、顧客の先入観を大きく変える機会を得た。

 「我々はITの専門家ではない。あんな説明で一体、誰が理解できますか」。

 電通国際情報サービス(ISID)ビジネスソリューション事業部事業部長補佐の林晃司は、先日のプレゼンテーションに顧客が大きな不満を訴えていることを、担当営業から聞かされた。

 苦言を呈したのは、キッコーマン経理部参与の森孝一。今回の商談でユーザー部門を代表するキーパーソンの一人だ。穏やかな紳士だっただけに、その森から厳しい言葉が出たことを知ると、林は暗たんたる気持ちに襲われた。

 思い当たる節はあった。林が部下を連れて、森らにERP(統合基幹業務システム)パッケージ「Oracle EBS(E-Business Suite)」の導入を提案したのは2004年2月上旬。主に経理部のスタッフを前にして、林らはEBSの優位性を伝えるべく、製品コンセプトや機能説明などに力を注いだ。しかし説明後は、話し手と聞き手がかみ合わない、なんとも白けた雰囲気が漂っていた。EBS独特の概念やITの専門用語を振り回した林らの説明に、経理部のスタッフは全くついていけなかったのだ。

 EBSのコンサルタントとして多くの場数を踏んできた林だが、こんな失敗は初めてだった。

「Oracleは想定より安い」

 なぜこんな失敗を犯したのか。森の言葉から、自分なりに理由はすぐ思い当たった。

 ISIDは今回の商談に後発で参加した。会計のサブシステムでキッコーマンとは取引があったが、森らはISIDがERPを手掛けていることを知らなかった。担当営業であるビジネスソリューション営業部営業2課の清水陽子が、顧客訪問でグループを挙げた会計刷新計画を察知したのが2004年の初め。さっそく林に話をつなぎ、ヒアリングもそこそこに、まずはEBSの提案を急いだ。そんな経緯で、顧客がどんな説明を求めているのかに配慮できなかったことが失敗の原因だった。

 加えてこの初回の提案が、これまでの経験と勝手が違っていたことも落とし穴になった。林の経験上、森のような現場の上に立つキーパーソンには、製品の機能や優位点をずばり説明した方がよい。既に競合製品をよく検討していて、専門知識も持っているからだ。

 実のところ森には、林の説明は理解できた。しかし森がこのプレゼンで期待したのは、ユーザーである経理部門が納得して使える製品かどうかを見極めることだった。

 失敗を引きずってはいられない。ばん回を期して林が次のプレゼンの機会を探ろうとしていた矢先、森からコンタクトがあった。「提案を続ける気持ちがあるなら、『スタッフを説得しよう』と思える提案を、まず私にしてください」。営業の清水の「EBSは手ごろな価格で導入できる」との言葉が引っ掛かり、森としては次の機会を与えてみたかった。

 顧客が何を求めているか、答えはもらった。2月中旬に臨んだ提案説明では、EBSを使うことで経理部の仕事がどう変わるか、日常業務での使い勝手はどうかなどに力を注いだ。もちろん競合製品との比較も、経理部の視点で提供できる機能を整理し直した。

 成果は十分だった。林の説明に森は納得し、EBSに対する先入観も大きく変わったのだ。実は森は、他社事例などから「高いうえに、導入に要する工数・手間もかかる」と考え、EBSを検討対象から外そうとしていた。大企業の場合で総額10億円に達する事例も耳にしていた。こうした背景から、今回の会計刷新計画では当面、現行のメインフレームを温存し、子会社の会計システムを国産のERPで統一する案を検討していたのだ。

 しかし林の説明では、テンプレートの活用などでEBSの導入費用は抑えられるという。「想像していた概算費用の数分の一だった」と森は振り返る。